iBookが以前のクラムシェルタイプのものから現在の形になって、すでに4年ほど経過している。Macのラインアップのなかでコンシューマ向けのノートブックとして位置づけられるiBookは、この間に着実に低価格化と高性能化を果たしてきた。今回のアップグレードでは、これまでPowerBookにしか標準で搭載されていなかったいくつかの機能──たとえば、AirMac Extreme(Wi-Fi)とBluetooth 2.0+EDRが標準サポートになったり、トラックパッドのスクロール機能(2本指でなぞることで上下/左右にウインドを移動可能)が搭載されたり、さらにはHDDの緊急モーションセンサーが追加されたりと、一段と成熟度が増し、お買い得感が高まった印象を受ける。また、14インチモデルではプロセッサが1.33GHzから1.42GHzへと若干高速化したほか、メモリもオンボードで512MB(最大で1.5GB搭載可能)となり、Mac OS X 10.4「Tiger」を動かすのに必要十分な構成となっている(グラフィックプロセッサが、ATI Mobility Radeon 9550に強化されたことで、これまで対応していなかったTigerのCore ImageやQuartz Extremeなどにも対応できるようになっている)。さらに標準で60GBのHDDとDVDへの書き込みが可能なSuperDriveが標準で付いてくるのだから、これにTigerに付属するiLife(iTunes、iPhoto、iMovie HD、iDVD、GarageBand)やSafariブラウザやApple Mailを合わせれば、ホームユースのほとんどの用途をカバーできてしまう。非常にコストパフォーマンスの高いオールインワンマシンと言えるだろう。
また、この大きさ(32.3cmx25.9cm)とそして2.7kgという重量も微妙なところである。これより一回り小さい12インチモデルなら、あまり迷うことなく携帯用に購入するところだが、個人的な経験からいうと2.7kgのマシンをカバンに入れて持ち歩くのはかなり骨の折れることだと感じる(ふだんから自動車で移動する人なら問題にならないかもしれない)。その点を踏まえると、14インチモデルは自然といわゆる「デスクトップ代替機」として考えられることになるのだろうが、アップルの場合、この価格帯(15万円近辺)の上下にかなり魅力的な選択肢があるので、一気に選択が難しくなる。つまり、 17インチのiMac G5(15万2040円)とMac miniの1.42GHz版(8万1800、プラス17インチ程度のモニター)が直接の競合になってしまう。
いずれにしても、そういうある種の「身軽さ」や(非使用時の)「目立たなさ」を高く評価したい人、さらには最も手軽に一通りの機能を持つMacを試してみたい人には、このiBookはお勧めの一品だろう。とくに、「当たり前のことが当たり前にできる」というiLifeが付属する点、そしてTigerで搭載された各種の最新機能が愉しめる点を考えると、Windowsマシンを含めたPC全般の中でも、比較的コストパフォーマンスの高い製品と言えよう。ただし、流行のいわゆる「テレパソ」ではないので、リビングルームでのチャンネル争いで主導権を取れず、テレビ兼用のPCがやはり必要だ(あとは、時たま持ち帰る会社の仕事用に使えればいい)というタイプの人には向かない(どうしても……という人は、かなり割高な印象のサードパーティ製品を使う選択肢もある)。その点で、ある種の「潔さ」が求められることは確かだが、むしろプライベート用のマシンには能動的な愉しみを求めたいという人には、このコンパクトにまとまったノートブックが好ましく迎えられるのではないだろうか。一見何の変哲もない、けれども実は上質な生地を使って丹念に仕立てられたボタンダウンシャツ。そんなシャツに似たコンピュータをお探しなら、このiBookを手に取ることをお勧めしたい。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境