小倉:書き込みによって特定の被害が発生するわけですが、その責任の転嫁先が発言者であってもいいし、そういう発言を可能としている場を提供している人であっても構わないわけです。
だから、発言者に行き着かないような場を提供している場合は、その場の提供者が責任をとる。
佐々木:例えば僕が自分でサーバを借りてブログを作っていて、それでブログコメント欄は匿名OKです、ネットIDは要りませんとした場合に、そのコメント欄に誰かに対する名誉棄損が書き込まれたら、それは僕が責任を取らないといけないということですね。
でも、信頼できないユーザーは、やっぱりどこかに必ず一部いるわけです。
そうすると、例えば佐々木を陥れるためにブログのコメント欄に名誉棄損を書いて、佐々木に責任をとらせようと思う人が絶対に出てきますよね。
小倉:それを信頼できない人はネットIDのシステムを導入すればいいわけです。でも現状は「ユーザは信頼できないけれども、自分は責任をとる気がない。だから被害者に全部損害を負わせてしまえ」となっている。
私は「常に実名を出せ」と言っているわけではなくて、「何かあったときに実名がトレースできるようにしておきなさい」というだけです。
佐々木:被害者側から見るとその気持ちはよくわかりますが、現実的にそれをやろうとすると、かなりハレーションが大きくなる。だから結局すべてIDにひも付けした言論しかなくなってしまうんじゃないかという問題もある。
伊知地:佐々木さんみたいに個人でブログを運営する人がどんどん増えていくと、個人の人がみんなガイドラインを勉強しなければいけない、開示するかしないかいちいち判断しなければいけない、というのはかなり無理があると思うんです。われわれネットワークをやってきた者はもちろん勉強しなければいけませんが。
小倉:特定の人間を攻撃するようなコンテンツを日本中に対して公開する以上は、そのガイドラインを勉強すべきじゃないかと思うんです。
佐々木:その場合、例えばレンタルサーバでMovableTypeをインストールして自分でブログを運営していると、自分で責任をとらなければいけない。でも、そこで過激な言論をするのは自分ではなくて、そのコメント欄の人たちなわけですよね。そこまで責任をとらなければいけないとなると、自分でブログを立てようとする人にとっては厳しい要求じゃないかと思うんですが。
小倉:だから自分でブログを立ててコメント欄付きのブログを開設する場合には、違法な書き込みがなされていないか、コメントがなされていないか定期的に巡回して削除するぐらいのことは当然すべきだし、一時的にそういうコメントが続くようであれば、コメント欄を閉じるなり、あるいはそのブログが共通のネットID認証みたいなサービスを使ったり、あるいはコメントを認証方式にできるのであればそれを使うなり、できることはやらなければいけないと思います。
最近、オライリーさんがブロガーのコードみたいなものを作ろうという話をしていて、その中で自分の発言だけじゃなくて、自分のブログに投稿されたコメントについても責任をとらなければいけないという話をし始めたのは、そういうことだと思うんです。
-------------ネットIDの仕組みそのものは全員が必要であるとの意見だが、その適用範囲にブログでコメント欄をオープンにしている個人ユーザーも含めるべきかに至っては主張が分かれた。小倉氏は何らかの書き込みスペースを開設する以上は個人も一定の責任を自覚すべきとしており、佐々木氏と伊地知氏は個人にそこまで求めるのは無理があるとしている。次回はこの続きで、インターネットの匿名と実名はどうあるべきかについて議論した様子をレポートする。
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