羽田:われわれは、もともとがネット屋なので、理想的には自動販売機みたいなビジネスをやりたいのです。自分たちが労働集約的に手をかけていくのではなくて、自立的にビジネスが回っていくということを考えたときに、やっぱりお金が動くところというのは、欲望だと思うんです。そうすると、欲望の対象物が物だと飽きてしまえば終わりですよね。でも、自己顕示欲とか、メジャーデビュー欲っていうのは永遠に続くと思うんですよ。スター誕生の昔からありましたし、今後も永遠にあると思うんです。それを一方の欲望の柱に据える。
で、他方の欲望の柱というのは、その人たちに(タレントに)なる才能とか、能力がなくても、その人たちを目利きしたり、発見したり、応援したりという、僕に言わせれば自己顕示欲の亜流、変形のような欲望も、ウェブの上で表現していいんだというのが、ブログとか、Amazonのレビューとかでだんだん正当化というか、一般化してきましたよね。じゃあ、それをぶつけてマッシュアップする場をつくってあげれば新たなビジネスモデルになるんじゃないか、というのが発想の原点です。
山崎:はい。われわれの特徴は、本当にデビューできるという部分です。入り口も出口も現実なものであるというのが違います。ネットビジネス単体で、ネットだけで完結するビジネスモデルじゃないところが特徴の一つだと思います。
羽田:例えば、ポイント制を導入しようと思っているんですが、みんなの評価で10万ポイントを獲得したら絶対にCDデビューできますと、わがサイトが保証してあげるわけです。そういうのがあったとしたら、7万ポイントぐらいになったらみんな目の色が変わってくるでしょう。「俺、あと3万でデビューできる」といったら、もうアーティストのほうはこのサイトをどんどん宣伝すると思うんですよ。「俺の歌を聴きに来てくれ、ここで歌っているから、絶対、聞きに来てくれ」って。それが今までだったらライブに呼ぶぐらいしかできなかったのが、こういうサイトだったら広く時間と距離を超えて呼べますよね。
で、もう1つプロデューサー、プロモーターがいるとしたら、これは応援している人ですよね。「俺が初めて応援したアーティストがもうすぐデビューできそうだから、いいやつだから聴いてみてくれ」といってユーザー自らがどんどん広めてくれる。自動販売機だとしたら、「こんなコーヒーが飲みたいね」と言ったら、「こういうコーヒーがいいよね」って相談してくれて、自らそのコーヒーを商品化して、さらに自ら補充してくれる。で、どんどん売れ筋のコーヒーが売れていく。そういう自動販売機をつくったつもりです。
山崎:やっぱりネットなんで、自律っていう仕組みがないとうまくいかないんですよ。事業って全部そうだと思うんですけど。応募する側と評価する側が同じユーザに見えますから、まずそこの交流が生まれますし、逆に応募している側同士の交流も生まれますし、評価している側の交流も生まれます。この辺の機能は最初のオープンのときはないですが、随時追加していく予定です。
山崎:高円寺にレコーディングスタジオposh me!というものを作りました。ここは非常にハイクオリティで、本当にプロのCDをつくるのに耐え得る機材とか音のチューニングを施してあるスタジオになってなっています。実際、もう8月はプロからの予約で埋まってしまっているんですが、それぐらいクオリティーの高いものですから、ミュージシャンがここに来て録音して、ここのスタッフに「これposhしておいて」というと、それはもうここに勝手にposhされる。
羽田:誰かがそれを聴いている。待合室に戻ったら、「さっきあげた曲、よかったよね」というふうに。端末が置いてあって、そういうようなショーケースにしていきたいですね。
山崎:とりあえず高円寺につくりましたけど、高円寺ってやっぱり下北沢と並んでサブカルチャーの聖地みたいなところがありますから、インディーズとしてはやっぱり重要なところだと思うんですが、あとは渋谷とか福岡とか、そういうところにも展開していきたいとは思っています。
山崎:ソーシャルネットワークというものを目的ではなくてツールとして使って、ソーシャルネットワークは表に出てこなくて、裏にあって、でもそれがあるから活性化するサービスというのを持っている会社さんってたくさんあると思うんですよ。
たとえば、TSUTAYAやAmazon、楽天もそうだと思うんです。そういうようなところにはどんどん営業していって、こういう仕組みを御社でも取り入れませんかと。こういうソーシャルネットワークを仕組みとして使うということに気づいている企業ってまだほとんどいらっしゃらないと思うんです。そこはやはりコンサルティングをしてあげて、そのシステムをお買い上げいただくというのは、かなり事業の収益の柱にはなると思います。
羽田:楽天なんかでも、もしそういう機能があったら、売り上げはもっと伸びると思うんですよ。たとえば、インテリアを考えた場合に、机と椅子のセットを買いたいなとか、ライトもコーディネートしたいなとか、ベッドも揃えて部屋全体をコーディネイトしたいとか、そういうときに、横串で調べたり探したりすることができなくて、各店のサイトを行ったり来たりして、そのうち飽きてしまって買わないとなると思うんです。
それが、「この机にこの椅子、すごくぴったりだったよ」というような批評があって、その人のレビューに対するレビューがあって、「この人は評価を1点しかもらえていない。こいつは信用できないな」というのがあったら、そのクロスセリングというものがどんどん働いていきますよね。Amazonはそれがあるわけです。
山崎:Amazonの場合、買ったらほかにもこんな物はどうですかって言われて、それもついつい欲しくなってしまって、併せて買ってしまうんですよね。こういう仕組みを取り入れることで売り上げが伸びる企業はたくさんあると思うんです。それはネットに限った話じゃないと思うんです。消費者にリーチするところだったらどこでもそうだと思うんですが、そういうところに積極的にシステムを販売していこうと考えています。
羽田:もう1つ、TSUTAYAさんもそうですよね。お客さんが新作を借りに行くという明確な目標があるときはいいですが、じゃあその新作を返しに来るとき、単純に返却だけにとどめてしまうと、そこでもう商売のチャンスを1回逃しているわけです。そこに、例えば返却コーナーに歩いていく間にTSUTAYAオンラインを操作して、「あなたは最近こういうのを借りているけど、ほかの人はこう言うのを借りていて、こんなことを言っているよ」というようなことが確認できて、「おもしろそうだ」と、端末のボタンを押すとそれが予約されて借りられる、なんていうのがあったら、おそらく、アクティブな人で月平均2.1本借りるところが2.3本になるとか、そういうビジネスって可能だと思うんです。
山崎:それをつくる基盤というのがおそらくソーシャルネットワークです。ソーシャルネットワークのポイントというのが、ある程度個人のプロファイルを明かすということですから、属性管理できるわけです。「20代の男性の年収これぐらいの人がこれだけいる」というデータベースになればなるほど、マーケティングデータベースとして使いこなせます。そういう最低限の基盤を満たしているのがソーシャルネットワークだと思うんですよ。だから、そういう売り方、おそらくいろいろな企業さんにできるんじゃないかと思うんです。
山崎:視野には入れていますが……。
羽田:実は、もっと大きなビジョンを隠し持っていて、これはまだお伝えできませんが、それには相当資金がかかるので、2、3年後の株式公開を視野に入れています。
山崎:法人向けのビジネスという意味で言うと、ソーシャルネットワークを販売していく単価は、時間と共にどうしても下がっていくと思うんです。ただ市場が広がっていくので、売り上げ規模と利益(でいうと)利益率は下がっていくけれども、利益の絶対額は横ばいか増えていくような感じだと思います。そうやっている間に培ったものを新しい商売に、また法人向けにつなげていくというのが、その次のステップの視野なんです。
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