マクロメディア統合に挑むアドビ--チズンCEOに聞く - (page 2)

--それはソフトウェア企業の成長が鈍化しているためですか。

　当社は違いますが、多くのソフトウェア企業は成長の鈍化に直面しています。これらの企業はバックエンドのインフラソリューションに何百万ドルもの値札を付けていました。企業のIT予算がふんだんにあった頃は、多くのIT担当者が上司から「必要な金はいくらでも出す」といわれていました。4000万ドルのERPシステム、HRシステム、CRMシステムを構築することも可能でした。しかし、現在のIT担当者は「金は底をついた。もうこれまでのようにはいかない」と言っています。

--先日、CNET NewsはTexas Instruments（TI）のCEOにインタビューを行いました。TIのCEOによれば、今後はPC以外のコンピューティング機器の需要が高まるので、高成長が期待できるとか。今後5年間で、PCとそれ以外の機器の関係はどう変わると思いますか。

　情報の閲覧、消費、および交換には、PC以外の機器が用いられるようになると思います。PCが利用されるケースが減り、代わりにモバイル機器が台頭するでしょう。2年から4年後には、HDTV（高品位テレビ）に接続されたサテライトボックスやビデオゲーム、ケーブルボックスを通して、あるいはHDTV自体に搭載されたコンピューティング機能を通して、情報を利用できるようになります。

--それはAdobeにとって何を意味するのでしょうか。

　当社の顧客の大半は、これからもPCを使って情報を作成、管理、提供するでしょう。そうだとしても、これらの情報をPC以外の機器でも簡単に利用できるようにする必要はあります。その一環として、日本市場ではAdobe Readerに関する試みをいくつか展開し、多少の収益を上げています。

--Adobeの顧客はこれまでとは違う方法で、コンテンツを作成するようになるのですか。

　これからも、当社の顧客は大半がPCを使ってコンテンツを作成すると思います。高度なコンテンツを作成するためには大量のCPUパワーが必要ですが、この点では依然としてPCに軍配が上がるからです。

--標準の問題は、メディアプレイヤー市場でも競争の阻害要因になるのでしょうか。

　妥当なものである限り、当社はすべてのフォーマットをサポートしていくつもりです。当社の顧客の多くはQuickTimeを利用しています。Window Media Playerを利用している顧客も大勢います。Realを利用している顧客はそれほど多くありませんが、Real Playerも引き続きサポートしていく予定です。しかし、今後は特にウェブサイトを中心に、Flash Playerを積極的に活用していきたいと思っています。軽くて、品質も高いFlash Playerは、急速に勢いを得ています。Flash Playerはウェブ上で最も普及しているビデオプレイヤーでもあります。

--それがAdobeの差別化要因になるのでしょうか。

　 Adobeにとっても、Macromediaにとっても、これは大きな差別化要因です。われわれ（AdobeとMacromedia）のリーチとPDFとFlashの普及度を見てください。われわれの顧客は、Microsoftよりも広い範囲に渡っています。Microsoftにはひとつのプラットフォームしかないからです。

--Microsoftといえば、両社の事業領域は今後、大幅に重複するようになるのでしょうか。

　実際には、当社とMicrosoftはずいぶん前からライバル関係にあります。20年前、Microsoft はPostScriptの対抗馬を開発しようとしました。この試みは完全な失敗に終わりましたが、少なくとも挑戦はしたわけです。

　個人的に印象に残っているのはPhotoDrawです。Microsoftはこの製品をOfficeにバンドルし、IllustratorとPhotoshopを打ち負かそうとしました。しかし、この試みも大失敗に終わりました。現在、MicrosoftはDigital Imaging Proを提供しています。この製品も成功を収めているとは言い難いものの、Microsoftが当社に挑み続けていることは確かです。

　私はMicrosoftと正面対決したいとは思っていません。しかし残念なことに、当社は年商400億ドルを誇る、この独占的なソフトウェア企業と直接競合する立場にあります。われわれとしては、これからも得意分野に的を絞っていくのみです。