関心の高まるエンタープライズDRM--市場成長の見通しと課題は? - (page 2)

David Becker(CNET News.com)2004年05月10日 10時00分

関心の欠如

 しかし、CaseCentralのような企業はまだごく少数だ。銀行など規制の厳しい分野には、既に業界独自の文書セキュリティ対策があるが、それ以外の分野では今のところ、エンタープライズDRMへの関心はほとんど顕在化していない。

 その理由の1つには、市場が比較的未発達であることが挙げられる。Microsoftの製品はわずか4カ月前に発売されたばかりだし、AdobeのPolicy Serverは今年中に発売の予定だ。このため、現在市場にいるのは、Liquid MacinesやSealed Media、Authenticaなどをはじめとするごく少数の専門企業だけだ。

 文書のセキュリティ管理について考え始めた企業でさえ、大量の情報やデータがしばしば個々のマシンのハードディスクに保存されている状態では、エンタープライズDRMへの包括的なアプローチを考えるのは困難かもしれないと、調査会社IDCのアナリストJoshua Duhlは述べている。

 「誰もが情報やデータの管理に問題があるとは認めたがらない。そして、仮にそれを認めたとしても、次に保護する必要がある文書とそうでないものを区別しなければならないが、この区別が非常に難しい場合がある」(Duhl)

 各エンタープライズDRMシステムは、それぞれ保護できる文書の種類がことなるが、こうした制約も企業が特定のソフトメーカーに肩入れしたがらない理由となっている。また、Microsoftがこの市場に参入した際には、同社がセキュアな文書フォーマットを利用して、競合する生産性向上ソフトウェアなどや他のアプリケーションを締め出すのではないかとの懸念が取りざたされた。

 「RMSを利用するにはアプリケーションをアップグレードしなくてはならず、また何らかの方法でフォーマットに制限をかけるため、サードパーティのアプリケーションではファイルが開けなくなるのではないか、という懸念を耳にしたことがある」と調査会社GartnerのアナリストRay Wagnerは述べている。

 こうした懸念から、エンタープライズDRMへのさらにオープンなアプローチが登場するのを待ち望んでいる企業は多い。暗号化や他のセキュリティ関連のコンポーネントにオープンな標準が制定されるまでは、エンタープライズDRM市場はブレイクしないだろう、とLundstromは言う。

 「DRMは(企業向けアプリケーションで)オープンソースが大きな勝利を収める最初の分野となるかもしれない。顧客は標準に基づいた、オープンで堅牢な暗号技術に特に価値を感じている。セキュリティや暗号を1つの学術的な研究分野と考え、そうした技術の開発を押し進めている人々は、オープンソースかつピアレビュー(同僚間での評価)を完全に念頭に置いている」(Lundstrom)

 エンタープライズDRMのプロプライエタリな取り組みを特に問題視していない企業も、現在メーカー各社が提供しているさまざまなアプローチを整理するのは困難だろう、とDuhlは言う。

 「今のメーカーにはそれぞれ限界がある。問題は企業規模だったり、存続性の問題だったり、あるいは単にそれがMicrosoftであるという事かもしれないが、導入を考える企業ではこうした多数の問題を整理しなければならない」(Duhl)

 そうした上で、顧客は自分のビジネスニーズに特に合致する製品を選ばなければならない。「ちょうど、馬を選ぶのに似ている--ビール樽の荷馬車を引かせるならクライズデール種の馬がいい。競走馬にするならサラブレッド、という具合だ」(Duhl)

 各社の製品に見られる主な違いのひとつは、エンタープライズDRM製品が他のアプリケーションと連動する方法だ。MicrosoftはRMSを、Windows Server OSと連動し、メモからバックエンドのデータベース情報までを保護できるプラットフォーム製品にしたいと考えているとWilsonは言う。「われわれの技術は、コンテンツやフォーマットの違いに関係なく利用できる。顧客は文書にも事業専用アプリケーションにも、同じテンプレートを利用できる」(Wilson)

 しかしながら、現在のところ、RMSはOffice 2003で作成された文書でしか機能しない。主要アプリケーションを最新バージョンになかなかアップデートしない、圧倒的多数のMicrosoft顧客にとってこれは重大なことだ。

 AdobeのPolicy Serverにも、同社のPortable Document Format(PDF)をベースとする文書でしか機能しないという制限がある。Policy Serverは、文書の忠実性を保障する機能やさまざまなOSとの互換性など、一般に浸透したPDFフォーマットの主な長所をベースに構築されている、とAdobeの幹部は以前に述べていた。

 「われわれが話をした顧客企業にとって、さまざまなプラットフォームで利用できることが非常に重要だ。彼らが本当に求めているのは、異種混在する環境にうまく統合できるシステムだ」とAdobeのセキュリティソリューション・戦略担当グループマネージャー、John Landwehrは言う。

 しかし、PDFやそれに付随するAdobeのAcrobat製品をまだ採用していない企業には、Policy Serverは最初のシステムとしては薦められないと、GartnerのWagnerは語る。

 「システム全体をPDFベースに変更することを厭わなければ、Policy Serverには非常に良いツールが揃っている。だが、PDFしか対応しないという部分が、DRMとしては制約になる。誰もセキュリティソリューションを導入するだけのために、仕事のやり方を変えたりはしないだろう.....ユーザーにとってできる限り目障りにならないシステムが望まれている」(Wagner)

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