文化庁の諮問機関・文化審議会著作権分科会の2008年度「私的録音録画小委員会」の第2回会合が5月8日、開催された。
コンテンツの私的録音録画補償金制度の改定をめぐっては、2007年1月17日の同委員会で文化庁が暫定案を提示。同案では、私的録音録画補償金制度の縮小を原則としつつ、当面補償金制度での対応を検討をする必要がある分野として、音楽CDからの録音と無料デジタル放送からの録画が提案された。
一方、今回の会合で文化庁があらたにまとめた制度案では、現行制度の基本的枠組みを維持するという立場から、これまでに打ち出された私的録音録画補償金制度を縮小していく方針を踏襲しながらも、iPodなどを含む、録音録画を主たる用途としている機器、および記憶媒体については、補償金制度の対象に適用すべきであるという考え方が明確に示された。これに対し、パソコンや携帯電話など録音録画を含めて複数の機能を有する汎用機器については、主要用途が録音録画に限定できないことから、現状では対象から外すべきだと明言されている。
また、対象機器や記録媒体の決定方法について、文化庁では法的安定性や予見可能性の観点から政令指定方式を維持すべきだと主張。さらに、同庁内に権利者、メーカー、消費者、学識経験者などで構成される評価機関を設置する意向を明らかにし、補償金額の決定などについても同機関で一定のガイドラインを策定すべきだとしている。
私的録音録画補償金制度は、これまで権利者側と業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)の綱引きが続き、議論がこう着している。今回の文化庁案は、両者の立場に一定の配慮を示し、折衷案的に示したかたちだ。しかし、文化庁の説明後の意見交換では、双方の主張は並行したまま、新たな議題を生むかたちとなった。
従来より「DRM(デジタル著作権管理)があれば補償金は不要」と訴え、「ダビング10」の導入を推進するJEITA側は「補償金制度の縮小、撤廃を前提としていくと言いながら、同案は制度を拡大していく方向性にも見える。運営が不透明な状態のまま、JEITAとして賛同できるかどうかは疑問」(JEITA常務理事の長谷川英一氏)と不満げに語った。これを受け、文化庁著作物流通推進室長の川瀬真氏は「補償金制度について、これ以上コンセンサスを得るのは難しい。懸念はわかるがそれらを十分踏まえた上で制度設計していると自負している」と、進展の進まない議論に一定の方向付けをしたい本音を漏らした。
一方、地上デジタル放送の録画ルールを「コピーワンス」から「ダビング10」に緩和するためには補償金が必須とし、補償金制度の継続を前提にダビング10に合意できると主張する権利者側を代表して会合に出席する、社団法人日本芸能実演家団体協議会実演家著作隣接権センター運営委員の椎名和夫氏は「今回の文化庁案は、ひとまず議論を終着させるための段階的な結論だと評価する。数年にわたりこの議論を続けてきて、この段階でいったん結論を得るということが重要」と、今回の提案を支持するコメントを述べた。
そのほか「多くの消費者が補償金制度に不信感を抱くのは、最近騒がれたガソリン税の負担に近いものがあるのでは? 要は、消費者は制度の実施にどれだけ合理的な理由があるのかを重要視していて、支払われた税金の使用用途がはっきりしないままでは納得がいかない。対象機器の拡大は、しっかりとした情報を公開した上でなければならない」(音楽・ITジャーナリストの津田大介氏)、「制度設計はある程度受け入れざるを得ない部分があると思う。しかし、補償金制度を縮小するという方向であれば、現在適用されている機器を対象から外すということもありうるということが明示されていないのが疑念のもとになっているのでは」(駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部教授の苗村憲司氏)といった意見も提案された。
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