セミナーの冒頭、Zendesk日本法人の社長である藤本寛氏が指摘したのは、近年カスタマーサービスに力を入れる企業が電話サポートに高い関心を示しているということだ。「国内展開の開始から4年を迎えたZendeskは、国内導入企業が1200社にまで成長した。既にZendeskを導入している企業も、チャットサポート、LINEサポートの導入などサポート機能を拡張してカスタマーコミュニケーションの拡充を実現している。中でも最近では電話サポートの導入や使い方に関する相談が増えている」(藤本氏)。
具体的には、PBXのような維持費が高額になりがちな既存のビジネスフォン・ソリューションをクラウド基盤にリプレイスしたい、既存のオンラインサポート窓口を補完する役割として電話サポートを統合的に運用したい、顧客への付加価値として電話サポートを導入して緊密なコミュニケーションを実現したいといったニーズが寄せられているのだそうだ。
メール、問い合わせフォーム、電話、チャット、窓口など、企業と顧客の接点は多種多様であり、複数のチャネルをカスタマーサービスの手段として展開すること自体は決して珍しいことではない。しかし、ここで課題となるのは、カスタマーサービスの"たらい回し"が顧客に与えるストレスだ。困難を抱えて解決策を求めている顧客がいくつもの窓口を渡り歩き、そこで何度も同じ説明をすることは、残念ながら珍しくない光景だと言える。
2007年にデンマークで誕生したZendeskは、こうしたカスタマーサービスが顧客に与えるストレスを解消できるソリューションとして、様々なチャネルから寄せられるカスタマーサービスのリクエストを一元管理して、シームレスなコミュニケーションを実現することを目指して開発されている。
様々なチャネルを連携させたシームレスなカスタマーサービスの実現は、製品やサービスのブランドエンゲージメントやロイヤルカスタマーの醸成といったマーケティング活動にも大きな影響を与えると、Zendeskの製品開発責任者であるエイドリアン・マクダーモット氏は指摘する。「近年、急成長しているビジネスに共通しているのは、カスタマーサービスを中心にビジネスを考えているということ。カスタマーサービスは顧客のカスタマージャーニーを円滑にし、ロイヤルカスタマーへと導く」(エイドリアン氏)。
そしてエイドリアン氏は、これからのカスタマーサービスで注目すべきトレンドとして、カスタマージャーニーを分析してインサイトを理解することや、カスタマーサービスの知見をマーケティングの全体最適に活用すること、そして機械学習・ディープラーニングを活用してカスタマーサービスのナレッジを有効に活用することなどに加えて、「チャンネルバリアの排除」と「連続的なコミュニケーションの担保」という2つの重要なキーワードを掲げた。
チャンネルバリアというのは、顧客と企業のコミュニケーション手段が特定のものに限られてしまっている状態を指す。顧客がカスタマーサービスにアクセスする手段には、電話、メール、問い合わせフォーム、チャット、LINEなど様々なものがあり、この幅をブランドコミュニケーションにまで拡げると、SNSやYouTubeをも企業と顧客の接点になる。エイドリアン氏は「企業はこのようなあらゆる主要チャネルにおいて、顧客とのコミュニケーション手段を生み出さなくてはならない。そして、顧客がチャネルを変えたとしても、そこで継続的なコミュニケーションができる状態を作ることが必要だ」と語り、こうした顧客のチャネル・スイッチングがあってもコミュニケーションの履歴を把握してサポートを行っていくことの重要性を指摘した。
そして、こうした連続的なコミュニケーションを担保することの重要性について、エイドリアン氏はカスタマーサービスの中で顧客のロイヤリティを失う要因のひとつに、「顧客が同じ情報を企業から何度も求められることだ」と指摘。カスタマーサービスのチャネルが変わるたびに同じ情報を何度も入力したり説明したりすることが、顧客に大きなストレスを与え、顧客ロイヤリティの崩壊を招くことになるのだという。
「顧客にはコミュニケーションのコンテキストに合った対応が必要になる。困っている顧客が何度も同じ説明をするような状態は、避けなければならない。カスタマーサービスは"企業の顔"であり、顧客ニーズに的確に対応することが、洗練されたブランドイメージの醸成に大きく影響する」(エイドリアン氏)。