こうしたZendeskが提唱している理想的なカスタマーサービスのあり方を実現する上で、電話サポートに関する同社のソリューションである「Zendesk Talk」は、これまで分断されがちだったオンラインサポートと電話サポート(コールセンター・サポート)を効率よく連携させることができる製品だと言える。
Zendeskのオンラインサポートに電話サポートの機能を組み込むことで、顧客とのコミュニケーションに関するあらゆる履歴をタイムラインで管理でき、電話サポートの模様は全て録音して事後確認することができる。また、チャットやメールでの対応途中に電話や電話番号を使ったSMS(ショートメール)で即座に顧客をフォローすることができるほか、電話サポートの模様をクラウド上でリアルタイムに共有して他の担当者のフォローを仰いだりエスカレーションすることも可能だ。加えて、クラウド型ソリューションであるためにシステムコストの抑制とカスタマーサービス担当者の生産性向上を両立することができるのだ。
では、企業はこのZendesk Talkを活用してどのようなカスタマーサービスの体験を生み出しているのだろうか。導入企業を代表して、一流ホテル・旅館を厳選した宿泊予約サービス「Relux」を運営するLoco Partnersの事業推進部TSグループのゼネラルマネージャーである三原槙悟氏がプレゼンテーションした。
Reluxは、高い顧客満足度を生み出している国内の一流宿泊施設を厳選して紹介している宿泊予約サービスで、会員数は約96万人(うち訪日外国人約17万人)、掲載施設は約1000件。オウンドメディアはもちろん、Facebook、Twitter、InstagramなどのSNS、LINEなどのチャットツール、YouTubeなどを活用して情報発信を行っている。
三原氏によると、このReluxのサービスにおける重要なポイントとして満足度の高い旅を提供するという「Travel Satisfaction」という考え方を提唱しており、顧客の要望に応じて旅行のプロが最適な旅行プランを提案し必要な手配をサポートする「Reluxコンシェルジュ」というカスタマーサービスを創設して、顧客の旅行体験を最高のものにするべくサポートしているのだという。顧客満足度を指標化したNPS(Net Promotion Score)は58.3と高く、リピート率も非常に高いのだそうだ。
そして同社では、Reluxコンシェルジュにおける顧客へのサポートと掲載されている宿泊施設とのコミュニケーション手段としてZendeskのソリューションを活用。メールや問い合わせフォームなどのチャネルでのサポートに加えて、電話でのサポートも一元的に統合的に管理して、高い顧客満足を生み出しているのだという。
「Zendesk導入前は電話サポートを通常の電話回線で行っており、いつ誰がどのような対応をしたという対応ログの保存が全くできない点、鳴りやまない電話でコンシェルジュが席を離れられない点、電話応対した顧客の情報が管理できない点などの課題があった。導入後は、会話内容やログは全て録音・保存され、コンシェルジュはオンライン・オフラインの切り替えができるので離席がしやすくなった。また顧客情報もオンラインサポートと一元的に管理できるようになった」(三原氏)。
加えて三原氏は、Reluxコンシェルジュのワークフローの効率化についても言及。顧客とのコミュニケーションが発生した時点でチケットを発行してやりとりの履歴を全て記録できるため、タスクの状況や顧客のステータスを共有しながら切れ目のないサポートを実現することができているのだそうだ。「今後は、LINEによるサポートもZendeskに統合したり、SMSやチャットによるサポートを導入して顧客とのコンタクトをすべてZendeskに統合していきたい」(三原氏)。
三原氏が説明する通り、顧客満足度を生み出すカスタマーサービスはサービスの本質的な価値を生み出すものであり、顧客にストレスを与えないシームレスなカスタマーサービスが十分に整備されているか否かが、顧客のロイヤルカスタマー化とその後のビジネスの成功に大きな影響を与えていると言える。
ブランドエンゲージメントや顧客ロイヤリティをマーケティング視点で考えた場合には、どうしても「どうやって商品やサービスを買わせるか」「リピート購入するためにはどのような情報発信が必要か」というプッシュ型のアプローチを考えがちだが、顧客が企業のサポートを必要とするカスタマーサービスは、こうしたマーケティング課題を解決する最善かつ最短の道ともいえる。自社のカスタマーサービスは十分な顧客体験を提供できているかを改めて点検し、Zendeskのようなソリューションを活用した改善を検討する必要があるのではないだろうか。