さくらのVPSは破壊的イノベーション

高い自由度とパフォーマンスのさくらのVPSは専用サーバを越えたのか?

企画特集 : さくらのVPS(さくらインターネット)

さくらのVPSは破壊的イノベーション

CNET Japan Ad Special2010年10月8日 15時30分

専用サーバを越えたさくらのVPS

 さくらのVPSの仮想マシンは、メモリ512MB、HDD20GB、ネットワークは100Mbpsで、CentOS 5がインストールされ、もちろんroot権限で使うことができる。これが1Gbpsでバックボーンネットワークに接続された物理サーバ上で稼働している。仮想マシンのスペックは、最新のハードウェアが利用できる専用サーバと比較すると、スペックでは見劣りする。しかし、同じスペックの専用サーバと比較した場合、VPSの方がパフォーマンスは上だという。

さくらインターネット 代表取締役社長
田中邦裕氏

 「なぜかというと、ゲストOSからは512MBしか見えませんが、ホストOS上には仮想マシンに割り当てた容量以上のメモリが搭載されている。だから、ゲストOSが512MBを使い切ってスワップしても、ホストOSではメモリ上にスワップ領域が乗っている場合があります。また、ホストOSの空きメモリはディスクキャッシュとしても動作するため、ディスクI/Oが高速化されます。それに、物理サーバのCPUはXeonですから、同等スペックの専用サーバよりも高いパフォーマンスがでることは十分ありえます」(田中社長)

 専用サーバを越えるVPSの開発。これに成功したからこそ、さくらのVPSは日の目を見た。しかし、そもそもVPSの開発に取り組むきっかけは何だったのだろうか。それは2つの出来事だったという。

 ひとつは、田中社長が個人で運営するサイトで公開したサービスが人気となり、サーバがアクセス過多になった際に専用サーバの準備が間に合わず、他社のVPSを利用せざるを得なかったことだ。「AmazonのEC2を申し込んでから5分でVPSサーバを使うことができたんです。このときに仮想化技術のすばらしさを再認識した」のだという。

 もうひとつは、2010年の2月から3月頃にかけて、さくらのレンタルサーバを止めて海外のVPSに移行したというユーザ事例をいくつか見かけたことだ。レンタルサーバは手軽とはいえ、やはり自由度という面では制限がある。「VPSならば安くて自由度が高い、という声をWeb技術のリテラシーの高いユーザのブログで見かけた。これは仮想化技術を使った専用サーバを越えるようなサービスが当社にも必要と思った」(田中社長)。

 そして4月頃にVPSサービスの開発を決意し、5月から開発がスタート。7月15日には既存会員向けにベータ版を公開するまでにこぎ着けた。わずかに2ヵ月足らずという驚異的なスピードでのリリースとなった。これを聞くと、どうしても昨年からVPSサービスの準備をしていたのではと勘ぐってしまう。

 「実は社内では以前からKVMでの仮想化技術を使っており、古いホスティングサーバを仮想化して台数を減らしていたんです。当社は14年前からホスティングサービスをやっているので、古いサーバも多いですが、それらは仮想化して新しいサーバに乗せた方がパフォーマンスが高いので。その際にLinuxでもBSDでも動かす必要があったのでKVMを採用していました」(田中社長)。

 また、当初VPSで採用する仮想化技術として、田中社長自身は他社との互換性を重視してXenを推していたという。だが、ゼロベースで検討した結果、自由度が高ければ互換性も高まるとの判断に加え、すでに社内で実績があったKVMを採用することとなった。このことが結果的に素早いVPSサービスのローンチに結びついたのだ。

だが、ひとつ気になるのは、さくらの他のサービスとの関連性だ。これほどの自由度とパフォーマンスを持つVPSを980円で提供すると、ローエンドの専用サーバとバッティングする心配はないのだろうか。

 「その可能性はあります。ですが、専用サーバの売上げを維持するためにVPSの価格を上げては本末転倒ですから」と田中社長は語る。

 さらに「余談ですが」と前置きしつつ田中社長は続けた。「我が社は破壊的イノベーションと持続的イノベーションを自社で同時に起こしていると言えるかもしれません。先行者はどうしても持続的な発展をせざるを得ない。当社の専用サーバもリモートコンソール機能の提供を予定していますが、急激な値下げは難しい。それに対してVPSは価格もテクノロジーも新しいものですが、今後どうなるかはわからない。どちらが選ばれるかはお客様の選択次第です」。

 VPSのベータ版サービスをリリース直前に、さくらインターネットは北海道石狩市にクラウドコンピューティングに特化した大規模データセンターの構築を発表した。竣工は2011年秋の予定だ。これだけ大規模なデータセンターの構築には、巨額の投資が必要だ。そして、それは日本国内にとどまらず、海外展開も視野に入れて、よりコスト面で競争力をたかめるために必要なチャレンジなのだという。

 トップランナーでありながらイノベーションのジレンマに陥らないために次々とチャレンジを続けているさくらインターネット。そのさくらのVPSが、次にどんな進化を遂げるか楽しみだ。