クラウド選択の勘所 注目の「キャリア・クラウド」とは 去る4月24日から同26日まで、東京コンファレンスセンター・品川において「ガートナー ITインフラストラクチャ&データセンター サミット 2013」が開催され、企業がクラウドを導入するために必要なインフラ戦略について様々な講演が行われた。この中で明らかとなった、これからのクラウドサービスの選択方法やその活用法について考えてみたい。
これからのクラウドの本格的な活用に向けて、有力な選択肢として注目されているのが、通信事業者(キャリア)が提供するクラウド、すなわち「キャリア・クラウド」である。事実、戦略的ICT活用を提言するガートナーも、キャリアをクラウド選択の候補に加えるべきであると提言している(資料1参照)。
クラウドはネットワークの利用が欠かせない要素となるが、キャリア・クラウドはネットワークの専門家であるキャリアが、データセンターやサーバー、アプリケーションなどのクラウド基盤とネットワークを一体的に提供するところに大きな強みを持つ。また、多くのキャリアが以前からデータセンター事業を展開し、技術力や運営ノウハウを蓄積していることもクラウドサービスに厚みを与えている。
高い優位性を持つキャリア・クラウドだが、その選定は慎重に行う必要がある。重要となるのが「事業者のビジョン」「ビジネスシナリオ」「アーキテクチャ」「テクノロジー」および「それらの投資姿勢」である。
“実用期”に入ったクラウドは、いまや重要なビジネス基盤。サービスを支える技術力やインフラの充実度、将来に向けた継続的なサービス提供の予見性が担保されていなければ、安心して利用できないからだ。さらに言うならば、どのような戦略をもってクラウド事業を展開しているのか、その“コンセプト”への共感がなければ長期にわたるパートナーとして良好な関係を保つのは難しい。
図1 「Global Cloud Vision」の9つの特長
データセンターのほか、ネットワークやサーバーを含めたインフラ、その上位で利用する業務アプリケーション、さらにセキュリティ機能や運用管理サービスまで幅広く提供する「グローバルトータルICTアウトソーシング」を目指している これらの要件を満たし、その取り組みを推進しているキャリアがNTTコミュニケーションズである。同社は、企業向けサービスビジョン「Global Cloud Vision」の下、顧客企業のグローバルシームレスなビジネス展開を支援するクラウドサービスを強力に推進している(図1)。
キーワードとなるのが「グローバルトータルICTアウトソーシング」である。「お客様のICT基盤のクラウド化を契機に、ネットワークやデータセンターなどのインフラおよび、音声などのアプリケーションやセキュリティ、運用管理サービスまでを含めた通信事業者ならではの『グローバルトータルICTアウトソーシング』を提供し、お客様の経営改革に貢献します」とNTTコミュニケーションズの金井 俊夫氏は説明する。それを具現化したサービスも豊富に提供している。
データセンターのほか、ネットワークやサーバーを含めたインフラ、その上位で利用する業務アプリケーション、さらにセキュリティ機能や運用管理サービスまで幅広く提供する「グローバルトータルICTアウトソーシング」を目指している これらの要件を満たし、その取り組みを推進しているキャリアがNTTコミュニケーションズである。同社は、企業向けサービスビジョン「Global Cloud Vision」の下、顧客企業のグローバルシームレスなビジネス展開を支援するクラウドサービスを強力に推進している(図1)。
キーワードとなるのが「グローバルトータルICTアウトソーシング」である。「お客様のICT基盤のクラウド化を契機に、ネットワークやデータセンターなどのインフラおよび、音声などのアプリケーションやセキュリティ、運用管理サービスまでを含めた通信事業者ならではの『グローバルトータルICTアウトソーシング』を提供し、お客様の経営改革に貢献します」とNTTコミュニケーションズの金井 俊夫氏は説明する。それを具現化したサービスも豊富に提供している。
高品質/高信頼なグローバルインフラストラクチャ―
例えば、VPNサービス「Arcstar Universal One」とあらかじめ無料で接続されたクラウドサービス「Bizホスティング Enterprise Cloud」はグローバルレベルで共通仕様のサービスを利用できるのが特長。基盤となるデータセンターは2013年4月以降の計画を含めると全世界146拠点以上に展開し、サーバールーム総面積は18.1万㎡以上。世界屈指の規模を誇る。
データセンター間をつなぐネットワークの拡充にも継続的に取り組んでいる。2012年8月には高信頼・低遅延の大容量海底ケーブル「Asia Submarine-cable Express」を整備。「アジア主要都市のデータセンター間を業界最低遅延で接続し、より高品質で低コストなサービスを実現しました」と金井氏は述べる。
また、クラウドサービスについては先進的な技術を積極的に取り込むことで、ユーザーの利便性を高めている。その1つが世界で初めて(※)クラウドサービスに導入した仮想ネットワークだ。仮想ネットワークとは、ネットワークのリソースをソフトウエアのように柔軟に利用できる技術。「例えば、データセンター内のネットワーク機器の設定や変更を、カスタマーポータルから迅速に実施できるため、『物理的なネットワークの設定や変更作業に多くの手間と時間がかかる』といった事態を解消します。また、今後はクラウドとVPNとの接続などにも仮想ネットワークの展開を図り、クラウドとVPNを含め一体的なコントロールを可能にする通信キャリアならではのメリットをお客様に提供していく考えです」と金井氏はその特長を語る。
※NTTコミュニケーションズ調べ
データセンター間をつなぐネットワークの拡充にも継続的に取り組んでいる。2012年8月には高信頼・低遅延の大容量海底ケーブル「Asia Submarine-cable Express」を整備。「アジア主要都市のデータセンター間を業界最低遅延で接続し、より高品質で低コストなサービスを実現しました」と金井氏は述べる。
また、クラウドサービスについては先進的な技術を積極的に取り込むことで、ユーザーの利便性を高めている。その1つが世界で初めて(※)クラウドサービスに導入した仮想ネットワークだ。仮想ネットワークとは、ネットワークのリソースをソフトウエアのように柔軟に利用できる技術。「例えば、データセンター内のネットワーク機器の設定や変更を、カスタマーポータルから迅速に実施できるため、『物理的なネットワークの設定や変更作業に多くの手間と時間がかかる』といった事態を解消します。また、今後はクラウドとVPNとの接続などにも仮想ネットワークの展開を図り、クラウドとVPNを含め一体的なコントロールを可能にする通信キャリアならではのメリットをお客様に提供していく考えです」と金井氏はその特長を語る。
※NTTコミュニケーションズ調べ
運用管理業務を効率化するグローバルカスタマーポータル
しかも、サービスは使いやすいカスタマーポータルから統合的に管理することが可能だ。サーバー、ネットワーク、ファイアウォール、ロードバランサーなどのICTリソースを、グローバルレベルで自由に割り当てられる。「お客様自身で海外の複数のデータセンターのサーバーリソースを増強したり、別の拠点にデータをバックアップすることも可能です。場所に依存しないクラウド利用が実現できます」と金井氏は強調する。
お客様ICTシステムをトータルに守るグローバルマネージドセキュリティ
セキュリティ対策の強化にも取り組んでいる。NTTコミュニケーションズグループ各社のノウハウやNTT研究所の先端技術を融合し、独自開発したセキュリティ運用基盤は、PC端末やモバイル端末、各種サーバーやセキュリティ製品などからセキュリティに関するイベントやログを収集、サイバー攻撃などの自動分析/判定を高速かつ低コストに実現する。「セキュリティ対策に要するコストと労力を低減し、セキュリティレベルの底上げにもつながります」(金井氏)。
さらに、「グローバルリスクオペレーションセンター(GROC)」として、 世界10カ国に200名以上のセキュリティオペレーターや専門分析官を配置し、24時間365日のセキュリティ監視運用体制を整備。グローバルレベルでサイバー攻撃などのリスクを最小化し、安全・安心なクラウド利用をサポートする。
さらに、「グローバルリスクオペレーションセンター(GROC)」として、 世界10カ国に200名以上のセキュリティオペレーターや専門分析官を配置し、24時間365日のセキュリティ監視運用体制を整備。グローバルレベルでサイバー攻撃などのリスクを最小化し、安全・安心なクラウド利用をサポートする。
図2 キャリア・クラウドによるグローバルICT基盤
現地主導のICT基盤は部分最適が一般的。運用がバラバラで効率の悪いシステムになっているケースが多い。それに対し、キャリア・クラウドを活用することで、グローバルレベルで全体最適が可能になり、システムの柔軟性が高まる。統一したマネジメントによる業務の標準化も加速する ユーザー企業のなかでもキャリア・クラウドに関する注目が高まっている。実際、NTTコミュニケーションズのグローバルなクラウドサービスを利用し、全体最適によるグローバルICT基盤を実現、世界各地に点在していたICT環境にガバナンスを効かせることで、経営改革につながる大きな成果を上げている企業も少なくない(図2)。
現地主導のICT基盤は部分最適が一般的。運用がバラバラで効率の悪いシステムになっているケースが多い。それに対し、キャリア・クラウドを活用することで、グローバルレベルで全体最適が可能になり、システムの柔軟性が高まる。統一したマネジメントによる業務の標準化も加速する ユーザー企業のなかでもキャリア・クラウドに関する注目が高まっている。実際、NTTコミュニケーションズのグローバルなクラウドサービスを利用し、全体最適によるグローバルICT基盤を実現、世界各地に点在していたICT環境にガバナンスを効かせることで、経営改革につながる大きな成果を上げている企業も少なくない(図2)。
クラウドへの全面移行で大幅なコストダウンを実現
例えば、あるユーザー企業では自社運用していた1700台のサーバーに対し、コスト削減とガバナンス強化を目的として、クラウドの全社導入を決定した。さらに20社に分散していた通信事業者をNTTコミュニケーションズに集約するとともに、バックアップ回線や障害対応体制などを整備。また基幹業務を支えるERPパッケージの全社統一を図り、共通部分の運用のアウトソースも実現した。「クラウドへの移行にあたり、サーバーやシステム構成の見直しを行うことで運用の効率化も促進でき、2016年までに年間ICTコストを約30%削減することを目指しています」とNTTコミュニケーションズの田中 基夫氏は述べる。
重要システムからクラウド化し、主要業務の標準化とBCP強化を実現
また、別のユーザー企業では、グローバルビジネスの更なる拡大を目的にクラウドを活用している。同社はグローバルビジネスの進展に伴い、新興国などの未開拓市場向け商品開発が必須の課題となっていた。しかし、従来のシステムでは自社運用が基本であり、日本および海外拠点はそれぞれが現地ビジネスに最適化されたシステムを利用していたため、各拠点間の開発連携が困難だった。そこで現在はクラウドを活用し、グローバル統一運用基盤の確立を進めている。
具体的には、重要度が高い生産系システムなどをクラウドに移行し、複数のキャリアを利用していたネットワークもNTTコミュニケーションズに一本化。「現在は国内、海外それぞれにメインサイトとバックアップサイトを構築し、4つのデータセンターを利用することで、主要業務の標準化とグローバルシームレスなBCP強化を実現しています」と田中氏は語る。
今後もグローバルシステムの拡充を進め、2018年までにすべてのシステムをクラウドに移行する計画だ。
具体的には、重要度が高い生産系システムなどをクラウドに移行し、複数のキャリアを利用していたネットワークもNTTコミュニケーションズに一本化。「現在は国内、海外それぞれにメインサイトとバックアップサイトを構築し、4つのデータセンターを利用することで、主要業務の標準化とグローバルシームレスなBCP強化を実現しています」と田中氏は語る。
今後もグローバルシステムの拡充を進め、2018年までにすべてのシステムをクラウドに移行する計画だ。
このようにキャリア・クラウドは、グローバルビジネスを発展させる大きな可能性を有しており、ガートナーがキャリア・クラウドに注目する理由もそこにあるのだろう(資料2参照)。まず挙げられるのが、既存事業との高い親和性だ。通信事業者は独自のネットワークを保有し、グローバルにビジネスを展開している。基盤となるデータセンターの構築・運用実績も豊富だ。大規模な共有インフラをベースに「サービス」として提供する事業形態が文化として根付いている点も大きなアドバンテージである。
特定のベンダーに依存しない中立的なポジションにあるため「しがらみ」もほとんどない。ユーザー企業にとって、これは大きなメリットである。特定のベンダーによる「囲い込み」を回避し、最適な形でクラウドを利用できるからだ。
これからのグローバルビジネスを考える上で、クラウドの活用は必須のテーマである。クラウドを活用すれば、市場環境に合わせた既存事業の見直しや新規事業の拡大、M&Aによるグローバル進出、災害やサイバー攻撃などの多様なリスクにも柔軟に対応できるようになる。通信事業者が提供する「キャリア・クラウド」は企業が見落としてはならない存在であると言えるだろう。
特定のベンダーに依存しない中立的なポジションにあるため「しがらみ」もほとんどない。ユーザー企業にとって、これは大きなメリットである。特定のベンダーによる「囲い込み」を回避し、最適な形でクラウドを利用できるからだ。
これからのグローバルビジネスを考える上で、クラウドの活用は必須のテーマである。クラウドを活用すれば、市場環境に合わせた既存事業の見直しや新規事業の拡大、M&Aによるグローバル進出、災害やサイバー攻撃などの多様なリスクにも柔軟に対応できるようになる。通信事業者が提供する「キャリア・クラウド」は企業が見落としてはならない存在であると言えるだろう。
ユーザー企業にとって、コンピュータ・ベンダーやITサービス・プロバイダーは、システムの構築や運用において長年多くの場面で関係を有しておりなじみが深い。一方、その他のプロバイダーについては未知の部分が多いこともあり、クラウドの利用においては、新たなクラウド専業プロバイダーと従来のITサービス・プロバイダーといった二軸の対比で考えがちである。しかし、これはクラウド利用における選択の幅を狭めることになり、将来得られるかもしれないメリットの可能性をユーザー企業自身が捨ててしまっていることに等しい。特に、キャリアに関してはこれに注目する明確な理由がある。
既存事業との共通性:クラウドの属性であるサービス、スケール、共有、従量、インターネット技術はどれもキャリアの中核事業である通信サービスと共通する。
独自性:クラウドとネットワークは切り離すことができない。このネットワーク・インフラストラクチャを保有するプレーヤーとしてキャリアの存在はユニークであるといえる。
グローバル:ネットワーク・サービス市場では、各国キャリア間で、長年グローバルでの競争/協調が展開されてきている。その経験と対応能力、投資能力は、グローバル・スケールで展開されるクラウド市場において強みとなる。
クラウドを推進する動機:クラウドはどのプレーヤーにとっても新規市場である。しかし一方で、IT市場のプレーヤーの多くにとって、既存の収益基盤、収益構造を崩すリスクも内包する。キャリアにはこの「しがらみ」がほとんどなく、ユーザー企業にとってはクラウド活用において、積極的な支援を受けやすい。
これら4つの理由により、ユーザー企業がクラウドを活用する上で、キャリアは高い能力を発揮する可能性を有している。
既存事業との共通性:クラウドの属性であるサービス、スケール、共有、従量、インターネット技術はどれもキャリアの中核事業である通信サービスと共通する。
独自性:クラウドとネットワークは切り離すことができない。このネットワーク・インフラストラクチャを保有するプレーヤーとしてキャリアの存在はユニークであるといえる。
グローバル:ネットワーク・サービス市場では、各国キャリア間で、長年グローバルでの競争/協調が展開されてきている。その経験と対応能力、投資能力は、グローバル・スケールで展開されるクラウド市場において強みとなる。
クラウドを推進する動機:クラウドはどのプレーヤーにとっても新規市場である。しかし一方で、IT市場のプレーヤーの多くにとって、既存の収益基盤、収益構造を崩すリスクも内包する。キャリアにはこの「しがらみ」がほとんどなく、ユーザー企業にとってはクラウド活用において、積極的な支援を受けやすい。
これら4つの理由により、ユーザー企業がクラウドを活用する上で、キャリアは高い能力を発揮する可能性を有している。
NTTコミュニケーションズ
URL : http://www.ntt.com/
URL : http://www.ntt.com/
- グローバルクラウドビジョン
- Bizホスティング Enterprise Cloud
- Arcstar Universal One
- ガートナー ITインフラストラクチャ&データセンター サミット 2013 開催レポート
NTTコミュニケーションズの
「グローバルクラウドビジョン」
NTTコミュニケーションズ株式会社
経営企画部 サービス戦略担当 担当部長
金井 俊夫氏
SDNを利用したキャリア・クラウドとその活用事例
NTTコミュニケーションズ株式会社
クラウドサービス部長
田中 基夫氏
キャリア・クラウド:企業が見落としてはならない
インフラストラクチャ・サービス選択のポイント
ガートナー リサーチ
バイス プレジデント
田崎 堅志氏
「グローバルクラウドビジョン」
NTTコミュニケーションズ株式会社
経営企画部 サービス戦略担当 担当部長
金井 俊夫氏
SDNを利用したキャリア・クラウドとその活用事例
NTTコミュニケーションズ株式会社
クラウドサービス部長
田中 基夫氏
キャリア・クラウド:企業が見落としてはならない
インフラストラクチャ・サービス選択のポイント
ガートナー リサーチ
バイス プレジデント
田崎 堅志氏
提供:エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部 掲載内容有効期限:2013年9月30日
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