AIを活用してビジネスを変革し、競争力を高めようとする取り組みが本格化している。しかし、AIの活用には専門知識や人材も必要となるなど、多くの企業にとって容易な取り組みとは言えない。
企業のAI活用を実現するための課題はどこにあるのか。NECのAI・アナリティクス事業開発本部でシニアマネージャーを務める菅野亨太氏は、「NECはお客様のAI活用を実現するためのプロジェクトを200件以上行ってきました。その経験から、AI活用を実現するための課題が見えてきました。AI、機械学習技術で価値を生み出すには、多様なプロフェッショナルの連携と協働が必要になるということです。特に、データサイエンティストがAI活用の効果を"検証"し、アプリケーション開発者がAIをシステムとして "導入"し、業務の専門家や運用管理者が現場で"活用"するといった3つのフェーズ間の連携が重要になります。多様かつ異なるプロフェッショナルが緊密に連携し、協働できなければ、本当の価値をAIで生み出すことはできません。」と指摘する。
AACloudは、AI活用に不可欠な検証・導入・活用の各フェーズをシームレスに接続し、スキルの異なるプロフェッショナルの協働を促進することで、AI活用の迅速な実現を支援するプラットフォームである(図1)。
図1:NEC Advanced Analytics Cloudの機能と構成
AACloudはAI活用を支援するためにどのような機能をサポートしているのか。まず検証のフェーズに対しては、データサイエンティストが必要とするツールと環境が一括提供されている。これには、NECの最先端のAIエンジン「異種混合学習」とともに、分析の実行と結果をインタラクティブに記録する「Jupyter Notebook」やPythonベースの機械学習ライブラリ「scikit-learn」といったOSSを統合した環境が提供されている。
異種混合学習は、NECが独自に開発した機械学習アルゴリズムで、多種多様なデータから簡単に複数のデータのパターンを自動で場合分けして規則性を発見することができ、予測モデルの説明を明示する高い解釈性を実現している。その優位性について、菅野氏は、「ディープラーニングなど他の予測アルゴリズムは、予測結果は出せるがその説明を示すことが難しいため、説明をきちんと示す必要がある分析には異種混合学習が適している」と説明する。
NECは1960年台からAI技術の開発に積極的に取り組み、半世紀にわたって技術を蓄積し続けており、異種混合学習だけでなく、"見える化"、"分析"、"対処"という3つの領域をカバーする最先端のAI技術群「NEC the WISE」を保有している(図2)。その中には、NIST(米国国立標準技術研究所)主催の評価タスクで第1位を獲得した技術も数多く含まれており、世界的に高い評価を得ている。菅野氏は、「人の知的創造活動を最大化し、人が人らしく生きる世界を実現することを目指してAIの開発に取り組んでいる」と、AI開発の目的を強調する。AACloudでは今後、異種混合学習だけでなく、ディープラーニングを搭載したNEC the WISEのRAPID機械学習なども提供する予定だ。
図2:NEC the WISE