川島氏:我々は"不動産×ウェブ×データ"という領域で様々なサービスを展開しており、主に不動産情報サイト「マンションレビュー」をはじめとするデジタルメディアの運営や、そのノウハウを活かした不動産会社のマーケティング支援を行っています。サイトやシステムの構築・運用といった部分からワンストップで提供していますね。クライアントは100%が不動産会社になります。
仲根氏:最近では、我々のマンションデータを活用したターゲットマーケティングを希望する異業種からの問合せも増えてきました。"これくらいの物件価格規模の入居者にマーケティングがしたい"というニーズですね。データを持っているのが我々の強みですので、そこに対して様々なニーズが生まれているのだと思います。
川島氏:「マンションレビュー」は"あなたが検討しているマンションは買うべきか/やめるべきかがわかる"というコンセプトで、新築マンション、中古マンション、賃貸マンションを幅広く網羅しています。買おうとしているマンションの販売価格が、妥当かどうかをチェックすることができるのが大きな特長です。
川島氏:例えば、ある都心のマンション、2LDK、60㎡の物件が7000万円で販売されていたとします。しかし、消費者はその物件の相場、地域の同程度のマンションの相場を知らないので、その7000万円という価格設定が高いのか、安いのかがわからないのです。私たちは、「このペットボトルの水は2000円です」と言われたら高いと感じますよね。それは私たちがその商品の相場価格を知っているから。しかし、不動産の場合はそうした感覚が消費者にはないのです。
そうした状況において、私たちは「このマンションのこの部屋は、いくらの価格ならば妥当か」をデータベース化し、人工知能によってアウトプットする仕組みを構築しました。このサービスで、買う前に相場価格診断や口コミをチェックしたり、物件情報をポイント化して算出した"マンション偏差値"と呼ぶマンションの資産価値指標を参考にしたりすることで、消費者には検討中物件のデューデリジェンス(資産調査)ができる環境を提供したいと考えています。既存の不動産物件情報サイトに対抗する存在ではなく、両者を活用してもらうことで、消費者の不動産購入を支援するという狙いです。現在販売中の物件が紹介されている不動産情報サイトで買いたい物件を探し、マンションレビューでその物件のデューデリジェンスをするという利用の流れを想定しています。
仲根氏:加えて、こうしたサービスの必要性は、消費者の不動産に対する意識の変化も背景にあります。最近は、マンションを購入する場合でも、今後の住み替えの可能性などを考慮して不動産に対する資産価値を意識するようになってきており、特に都心や都市近郊ではこの傾向が非常に強い。投資家ではない一般の人も購入するマンションの資産価値を把握したいというニーズは高まっていると思います。
なお、サービスをできるだけ多くの人に利用してほしいという考えから、細かな情報入力はなるべく省いてメールアドレス、ニックネーム、郵便番号など最低限の情報の無料会員登録のみで利用できるようにしています。利用は無料で、利用回数の制限なども設けていません。
川島氏:私も仲根も、もともとは不動産会社で営業やマーケティングに携わってきたという経緯があり、それがこうしたサービスの構築に繋がったと言えると思います。お互い、不動産会社時代には数百件、数千件という不動産査定業務を行ってきましたので、どうすれば資産価値を算出できるのかというノウハウは十分に蓄積していました。駅からの距離、築年数、部屋の設備など物件情報に書いてある様々な情報を点数化する不動産査定業務で一般的に使われている計算式を応用して、独自のアルゴリズムを組んでマンションレビューの"マンション偏差値"を算出しています。
川島氏:適正価格診断では、あるマンションに対して物件の条件(専有面積や階数、方位など)を入力すると、その条件に対して推定相場価格と推定相場坪単価を算出し、「適正相場ゾーン」「割高ゾーン」「割安ゾーン」という販売価格帯の評価を提供します。こうした計算・評価は全て人工知能が行っているのです。
不動産取引の中では価格交渉が行われるため、不動産価格と実際に売買された価格(成約価格)には乖離が生じます。不動産会社では成約価格を元に査定をするのが基本なのですが、残念ながらこの成約価格は不動産会社しか参照することができず、一般にはオープンになっていません。そのため、販売価格を元に相場を算出しても、実際の売買価格とはズレが生じてしまうのですが、膨大な売買価格を集めていくことでそのズレは小さくなっていきます。
加えて、相場価格が上昇トレンドなのか、下降トレンドなのかを判断したり、相場よりも遥かに高い/低い価格設定をしている物件の価格情報は異常値として算出から除外したりするように人工知能が動いて相場情報を推測しているので、より精度の高い情報を提供できるようになっています。
仲根氏:また、不動産の相場価格というのは、景気の影響を受けやすく、変化しやすいという特徴があります。そうした中で最新の情報に基づいて更新していかなければ、実際の相場価格とのズレが生じます。世の中にある不動産の販売価格の情報から最新の相場情報を算出してデータを更新し続けるために、人工知能を活用しています。
こうした作業はひとつの物件であれば人の手でもできることですが、全国14万棟というマンション物件数をカバーして相場の変化に合わせて常に最新の情報に更新していくためには、人工知能の活用は欠かせないと言えるでしょう。最近では、不動産会社の営業担当者が自社で査定する手間と時間を削減するために、マンションレビューを活用するといった事例も出てきていますね。