2018年8月22日、東証マザーズに上場した株式会社チームスピリット。勤怠管理や工数管理、経費精算で働き方改革を実現するクラウドサービス「TeamSpirit」を主軸に展開中だ。1996年11月に創業後、2012年4月にTeamSpiritをローンチ。2017年にはシンガポールの現地法人を設立するなど推移は堅調だ。上場の5カ月前には、セールスフォース・ドットコムの新パートナープログラム「AppExchange Partner Program」において、日本唯一のAppExchange Premier Partnerにも認定されている。その成長スピードはスタートアップの一つの成功例といえるはずだ。今後の展望などについて、代表取締役社長 荻島浩司氏に話を伺った。
(荻島氏、以下略)まず背景に、自身の長年の経験とインターネットビジネスを掛け合わせたビジネスを手がけたい、という部分がありました。
遡るとIT業界は35年ほどになるのですが、プログラマーから始まり、製品企画、営業、マーケティング、プロダクト事業部長など幅広く経験してきました。Windows95が登場する頃は銀行の統廃合の流れの中で、融資契約書を集中保管するシステムの開発や、今まで世の中になかったオペレーショナルリスクを計量化するシステムの企画・設計や販売・マーケティングなど、一連のプロダクトライフサイクルに関わる業務を行っていました。
1990年代のシステムのダウンサイジングやWEBブラウザーベースのアプリケーションといった世の中の流れの中で、なんとかその流れに遅れずにやってきたわけですが、その後のクラウドの潮流に関しては先行して気づくことができました。ヨーロッパの金融機関ではマネーロンダリングを検知するシステムをASP(Application Service Provider)の形式で利用しているなどといった動きを目にし、実際にいろいろと調べてみると、一部のIT企業がクラウドにコミットし始めていることを知りました。
その後Salesforce Platform上でTeamSpiritのサービスを開発するのですが、その選択の決め手となったのはセールスフォース・ドットコムがある報告システムを郵便局へ導入したことを知った時でした。実は私たちも受注を狙っていたのですが2万8千拠点、数万人の利用者が使うシステムを短期間で構築することは難しいと感じていました。しかしまだSaaSという概念があまり知られていない状況で、セールスフォース・ドットコムはこの規模のシステムを短期でかつ低コストで導入できる能力があったのです、これには本当に驚きました。
そこでセールスフォース・ドットコムのドアを叩き、2010年6月にはセールスフォース・ドットコムとAppExchangeパートナー契約を、同年11月にはOEMパートナー契約を締結しました。
まずはシンプルに、自分たちが使いたかったから。当時リリースされていた製品を見渡してもピンと来るものがなく、当然クラウド版はありません。業務用システムはUIデザインが単調で、当時出始めたTwitterなどコンシューマー向けのシステムと比べると野暮(やぼ)ったい印象が残りました。そこで自分たちで開発しようと。
そしてもう1つ、国内大手ベンダーで受託開発をしていた時に感じていた、「すぐに使えるものを提供したい」との考えも背景にありました。お客様からすれば業務がいかに回るかが重要であり、価値を感じるのはアプリケーション。これが理想の形で動作し、わざわざ学ばなくとも使えるのがベストなのです。
SalesforceのCRM(顧客関係管理)はプラットフォームとしてこれらを実現し、導入してすぐに業務が成り立つようになっています。例えば、その製品ポートフォリオの中でセールスフォース・ドットコムは営業支援プラットフォームを提供しているので、我々は勤怠管理や経費精算などの社内業務を回すバックオフィス系を目指すようになりました。
一般的にバックオフィス系アプリケーションは、給与計算や会計のためのデータ登録ツールです。「誰のため?」という観点から見れば、人事部や経理部などバックオフィス系部署向けでしたが、「社員のためのツール」を目指し転換させました。そこで勤怠管理や就業管理、工数管理、経費精算、電子稟議(りんぎ)など、社員が毎日使う機能を一つにしたサービスを開発した次第です。