弊社製品は従業員100~3,999名の中規模企業をメインターゲットにしてきましたが、最近では大手企業の採用が加速しています。そのような企業がクラウド製品導入時に直面する課題はシステム運用やセキュリティ対策です。これらをSalesforceに任せられるのが採用の大きな理由の1つです。我々単独では提供できないシステム運用管理などをSalesforceが行っていますが、かれこれ7~8年利用して、ダウンタイムはゼロです。そのための運用管理を担うスタッフは弊社に一人もおりません。勤怠管理システムは利用者数が増加すると朝の出社時に打刻が集中し、極端に遅くなるということも耳にします。TeamSpiritは約1,000社13万人以上のお客様が利用していますが、動作が緩慢になるようなこともなく、Salesforceのプラットフォームを活用することで、システム運用やセキュリティの懸念を持たず安心してご利用いただけます。
我々は「シングルソース・マルチテナント」を重視してきました。大手企業になればなるほど要件は増加しますが、お客様の要望を組み入れ1つのアプリケーションを機能強化すれば、すべてのお客様に対するサービスも高度化します。Salesforceであれば難しいことを考えずにこのようなシングルソース・マルチテナントをセキュアな環境で実現できるのも大きな利点でした。これは実は他のプラットフォームではなかなかありません。さらに、プラットフォーム自体も次々と拡張するため、お客様に提供する価値が拡大します。例えばAI(人工知能)である「Salesforce Einstein」やワークフローの進化も大きい価値でしょう。スタートアップのようなプラットフォームとしての機能にリソースを割り振れない企業には、何物にも代えられない価値があります。
また、Salesforce AppExchangeは、レベニューシェア(パートナーとリスクを共有しながら、相互の協力で生み出した利益をあらかじめ決めておいた配分率で分け合う)型のプログラムを採用しており、初期投資コストが最小限に済むことも我々のようなスタートアップ企業には大きな利点となりました。
SaaS事業を展開する上で、Salesforce AppExchangeは最適なプラットフォームと言えるでしょう。確かに現在では他のクラウドベンダーでも似たような仕組みを用意しているところは少なくありません。それでも金融機関などがクラウド導入する際に安心感を持てるのは、セキュリティ評価が高く、また信頼性の高いSalesforceしかないと思っています。他社のPaaSでも弊社自身がシステム運用などに多くの時間を割けば実現可能ですが、お客様からの信頼をスタートアップである我々が得られるか否かと考えた場合、Salesforceに頼るのが正解でした。
今後の注力ポイントとしては、TeamSpiritの大手企業向け機能強化と生産性向上への貢献を予定しています。大手企業で頻繁に行われる組織変更や人事異動に柔軟に対応したり、蓄積した働く人の活動データを活用した、活動分析の高度化などです。
他方で海外展開も目指しており、2017年11月にはシンガポールに法人を設立しました。AppExchangeは多言語に対応しているため、アプリケーション側で言語を用意すれば対応可能です。ただ、アプローチが多少異なります。日本における工数管理は原価管理に使われますが、これを海外に適用するとプロフェッショナル・サービス・オートメーションになります。コンサルタントや士業のタイムアンドマテリアル契約に対応する形に見せ方を変えて、APAC(アジア太平洋)を中心としたグローバル展開を目指します。
今後も意識したいのは、プロダクトを作る=ビジネスを作る、ということです。ITサービスではプログラムを作ることが必要になりますが、単なるプログラムではなくお客様に貢献するビジネスにしなければいけません。その結果として世の中を良くして行けるのだと思います。ビジネスにするためにはお客様の特性に合わせ、プラットフォーム選択まで考えた製品開発が必要です。こうした考えは、新規事業創出を考える、すべての人が意識していいと思います。