最終更新時刻:2011年2月28日(月) 21時26分

Techventure 2008 CNET NETWORKS Japan

2chの哲学、異質な動画共有「ニコ動」として世界へ--ニワンゴ杉本社長に聞く

高瀬徹朗

2008/04/04 02:03  

 優れたベンチャー企業を選出する「Tech Venture 2008」に選出されたニワンゴは、もはやベンチャー企業の枠に収まらないほど圧倒的な知名度を誇る。コミュニケーション型動画共有サイト「ニコニコ動画」はPCのID登録者数が600万人を突破し、勢いはとどまるところを知らない。ネットユーザーを中心に高い関心を集めるニワンゴのビジネスモデルと今後の展望について、同社代表取締役社長である杉本誠司氏に語ってもらった。

既存概念崩した「ユルいコミュニケーション」

--ニワンゴ設立の経緯を教えてください。

 もともとは「新しいメールサービス」を展開することを目的として2005年11月に設立しました。ドワンゴの人間と未来検索ブラジル関連記事)の人間が一緒になって、ドワンゴの公式携帯コンテンツの枠を飛び出し、エージェント的にユーザーニーズに応えていこうと考えたのがきっかけです。

 設立の10カ月ほど前から、周囲の人たちと「新しいケータイサービスとは何か」ということを考えてきました。その中で「メール」というキーワードに着目し、メールは利用度の割にさほど進化しておらず、これを使って何か新しい遊びができないかと考えました。

 そうした話し合いの中で生まれたのが「メール検索」というアイディアです。メールは基本対話型であり、そのインターフェースを崩さずにコンテンツを検索できるサービスを考え、「ではどのようなコンテンツが適切なのか」という検討へと拡がっていきました。

 通信キャリア公式サイトのプロバイダは品行方正さが求められますが、川上(量生氏=親会社であるドワンゴ会長)をはじめ我々の発想は「人と違うこと」。公式サイトの場合、容認する側に保守性があるため、さすがに大きくはずれたことはできません。ニワンゴはレギュレーションに縛られることのない一般サイトの道を選んだため、サービス内容、あるいは人材登用などの面においていい意味で既存概念を崩すことができました。

--「ニコニコ動画」が成功した要因をどう捉えていますか。

 ニコニコ動画は一般的なカテゴリで分けると「動画共有サービス」。しかし、特徴は動画再生軸と同時にコメントの書き込みができ、また表示されることです。これにより、コミュニケーションツールとしての性格を持たせることができました。

 いわば、動画視聴における「1対1」の枠組みをはずしたこと。ひとつの動画を多人数で共有することができるのが「ニコニコ動画」です。

 他の動画共有サイトでも実質的に同様の楽しみ方がされているとは思いますが、コメントによってあたかも同じ人と同じ場所で共有しているような感覚を成立させる。我々は「非同期コミュニケーション」と呼んでいますが、こうした「ユルい」コミュニケーションのとり方がネットユーザーにマッチし、成功へとつながったと分析しています。

 例えば電子メールなど、もちろん相手が存在する前提で発信しますが、必ず読んでもらえるという保証は担保されていない。それでも、メールコミュニティは発展してきました。ブログやSNSも然り。必ずしも同期のタイミングは一定ではありません。そのようなコミュニケーションが発達したことが「ニコニコ動画」成功の背景にあったと考えます。

--「ニコニコ動画」のサービス展開における経緯は。

 2006年12月、「ニコニコ動画(仮)」を投入しましたが、このときはニワンゴという名前は開示せず、プロトタイプの形式でした。しかし、非同期コミュニティがユーザーのツボをついたらしく、急激にユーザー数が増加しました。これを受け、2007年1月に「ニコニコ動画」(β)がオープン。このとき、ニワンゴが運営していること、ひろゆき氏の参加も明らかになり、ネット上で話題を集めました。

ベンチャー支援企業の取り組み
SpikeSourceを核にWeb2.0企業との協業を進める
日本電気株式会社
半導体事業からハードウェア、ソフトウェア開発までコンピュータ関連ビジネスを幅広く手がけているNEC

起業直後のベンチャーが事業に集中できる環境作りを
ソネットエンタテインメント株式会社
好調な業績を背景に今年1月17日に東証一部への上場を果たしたソネットエンタテインメント

プラットフォーム事業でベンチャーとWin-Winの関係を
NECビッグローブ株式会社
2006年7月にNECからインターネットサービス事業部門が独立、分社化したNECビッグローブ

国内の投資成果を生かし海外への進出も積極的に
株式会社サイバーエージェント
事業ドメインの3本柱として、「ネット広告代理店業」「ネットメディア事業」とともに、「投資育成事業」を掲げているサイバーエージェント

企業市民活動の一環としてベンチャーを自治体とともに支援
日本マイクロソフト株式会社
33年前、アメリカシアトルの一ベンチャー企業として出発し、21世紀を代表する世界的企業に成長したマイクロソフト

協賛企業
最新インタビュー
グローバル展開こそネットの醍醐味--アイ・ブロードキャスト上田社長に聞く
株式会社アイ・ブロードキャスト
携帯電話向け画像・動画変換ソフト開発のアイ・ブロードキャスト。同社代表取締役である上田拓右氏に企業概要と今後の展開などについて聞いた。

位置連動型広告は日本から世界へ--シリウステクノロジーズ宮澤社長に聞く
株式会社シリウステクノロジーズ
「位置情報に付随して表示するマッチング広告」を武器に大学在学中に起業したシリウステクノロジーズ代表取締役社長の宮澤弦氏に聞いた。

モバイルサイトを育て、起業家を生み出す―エンターモーション島田社長に聞く
株式会社エンターモーション
モバイルの世界で近年盛り上がりを見せているのが、広告を主体とした一般サイトだ。エンターモーションはそうした一般サイトのビジネスを支えるソリューションを提供するとともに、起業家の育成にも力を入れている。

「世界初」が世界進出への個の力を結集させる--エニグモ須田共同CEOに聞く
株式会社エニグモ
エニグモが提供するサービスはどれも独自性に溢れている。その源泉となるものは何か――。同社共同最高経営責任者を務める須田将啓氏に聞いた。

2chの哲学、異質な動画共有「ニコ動」として世界へ--ニワンゴ杉本社長に聞く
株式会社ニワンゴ
PCのID登録者数が600万人を突破した「ニコニコ動画」の勢いが止まらない。その成功の原点と今後の方向性についてニワンゴ代表取締役社長である杉本誠司氏に聞いた。

目指すは国境なき取引市場の中継地点--オークファン武永社長に聞く
株式会社オークファン
モノとモノの取引は、価格情報が明確であれば容易に取引の場は国境を越える――。商品の総合的な相場検索サービスを展開するオークファン社長の武永氏に、設立の経緯や今後の展開などを聞いた。

世界的なソフトウェア会社を日本から--コミュニティーエンジン中嶋社長に聞く
コミュニティーエンジン株式会社
オンラインゲームなどに活用される通信ミドルウェアの開発などを行うコミュニティーエンジンの中嶋謙互社長に、事業の現状と今後の展望を聞いた。

放送の視聴機革命が、通信融合の未来を変える--PTP有吉社長に聞く
株式会社PTP
地上波全チャンネル、24時間すべての番組を録画する。しかも、圧倒的な使い勝手の良さ――。大容量ハードディスクレコーダー「SPIDER PRO」を展開するPTP代表取締役社長である有吉昌康氏に聞いた。

豊かな交流促す技術の舞台は「携帯」であり「グローバル」--ウタゴエ園田社長に聞く
ウタゴエ株式会社
「うたごえ検索」を看板技術として設立されたウタゴエ。「人々のコミュニケーションを豊かにする」をポリシーとし、「グリッド技術」を用いた映像等の配信事業にも着手。すでに海外進出へも踏み出している同社社長の園田智也氏に聞いた。

画像認識技術で新たな広告市場を切り開く――ジェイマジック宮田社長に聞く
ジェイマジック株式会社
ジェイマジックは、芸能人の誰に似ているかを教える「顔ちぇき!」で一躍有名になった。ただ、元々は画像認識技術を活用したサービスを展開する企業であり、携帯電話やネットと絡めることで、大きなビジネスの展開を狙っている。