永井美智子(編集部)
2007/09/30 14:58
日本では1プレイ100円というのが一般的だが、米国では同25セント(当時の邦貨換算で約30円)だった。ゲーム機器を置く店舗としては、ユーザーにたくさんお金を使ってもらって早く機器の購入費を償却したい。このため、1〜2分で1プレイが終わるような設計にして欲しいという要求が寄せられたという。
「10分のアニメと60分のアニメでは作り方が違うように、そもそも設計思想が異なる」
このため、米国向けには難易度を高くした。実際に海外仕様のゲームと国内仕様のゲームを店舗に置いて比較してみると、1日あたりの売り上げが1500円ほど違ったという。
このように料金体系の違いがゲームの設計思想の違いを生み、それは今の家庭用ゲーム機向けタイトルにも引き継がれているという。
パックマンの1日あたりの店舗の売り上げの差。赤い線がパックマンで、二股に分かれた上が海外仕様、下が国内仕様にした場合。海外仕様のほうが売り上げが大きいことが分かるゲームを設計する上で上村氏が気をつけたことがいくつかある。その1つが、「ハイリスクハイリターンの設計」だ。プレイヤーにとってリスクがあるけれども、うまく行けば敵を一網打尽にできるといったようなハイリターンが得られるプレイを盛り込んだ。あえて危険を冒してでも挑戦したいという魅力ある機能を設定することで、「上手なところを見せたい」という上級者の心をくすぐった。
もう1つは、対戦ユーザーのレベルの設定だ。例えばレースゲームで、運転のうまい人と下手な人が対戦するとあっという間に下手な人が引き離されてしまい、勝負にならない。そこで、負けている車は勝っている車よりも性能が良くなりスピードが速くなるという機能を盛り込んだ。その車が前方の車を追い抜いた時点で、その機能は使えなくなり、通常の勝負に戻る。2つの車がゴムでつながれている感じということから、社内では「ラバーバンド」と呼ばれていた。
また、ユーザーがミスをしたりゲームオーバーになったとき、自分が失敗した経緯が明確に分かるようにした。これで今度は同じミスをしないようにしようと反省し、自分なりの攻略法を身につけていく。「頭に浮かんだ成功のイメージが浮かべば、それを実行したくなる。そういう攻略方法のイメージを持たせるとゲームにはまっていく。それがゲーム設計だ」
日本でゲーム産業が発展した理由については、技術面と文化面の優位性があったと岩谷氏は指摘する。技術面については、ディスプレイやセンサー、CPUといったハード技術に加えて、人工知能や画像認識、バーチャルリアリティといったソフト技術も進んでいる。これらの技術がゲームで生かされているという。
さらにコンテンツ面では、アニメや漫画、小説など優れた作品が多い。「ゲームは技術と芸術が融合したもの。その両者の歴史があったことが、日本に優位性をもたらした1つの大きな要因だ」
4月から教壇に立ち、若いクリエイターの育成に勤しむ日々だが、学生には少々注文があるという。
「夏休み前に、学生に『旅に出ろ』といっぱい言ったのに、夏休みが明けてみたら陽に焼けてないんだよね(笑)」
岩谷氏は、学生たちの行動範囲が狭いことに警鐘を鳴らす。「行動範囲が狭いと得られる経験が少ない。クリエイターは(自分が持つ)材料が多いほうが圧倒的に有利。もう少し活動して欲しい」
岩谷氏は、ゲームはエンターテインメントの一部でしかないと考えている。だからこそ、さまざまな面白いことを体験し、自分の中に蓄え、それを肥やしに新たなエンターテインメントを作っていって欲しいと考えているようだ。
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