決済にイノベーションを-- JCBが「本気」でスタートアップと組む理由

 「われわれは本気です、皆さんと一緒にイノベーションを起こしたい」──そう語るのはJCB事業創造部次長の北原治彦氏だ。JCBは、Fintechに関連するスタートアップ向けのアクセラレータープログラム「JCB Payment Lab」を開設。選考を通過した企業には業務提携や出資も検討するという。

JCB事業創造部次長の北原治彦氏
JCB事業創造部次長の北原治彦氏

 JCB Payment Labは、JCBとスタートアップによる事業創造プロジェクトだ。エントリーした各スタートアップのビジネスアイデアをJCBが選考。そしてJCBおよび運営サポート企業のメンターとの協業により、約4カ月かけてかけてビジネスアイデアを具体化していく。

 タイムスケジュールはこうだ。10月30日まで専用ウェブサイトでエントリーを募集する。11月より選考を開始し、プログラムの参加企業を決定する。2017年2月から約4か月にわたりビジネスアイデアを具体化し、6月に業務提携・出資を検討。7月には成果発表の場として「DEMO-DAY」を実施する。

 募集するビジネスアイデアは2つ。「新たな顧客体験を実現するモバイルペイメントサービス」と、カード利用履歴などの「データを活用したサービス」だ。日本発の国際カードブランドとして知られるJCBがなぜスタートアップを支援するのか、その狙いやFintechへの取り組みを北原氏に話を聞いた。

JCB Payment Labは、参加企業とJCBの「共創」を目標としている
JCB Payment Labは、参加企業とJCBの「共創」を目標としている

カード会社の役目は、カード決済だけじゃない

──JCBではFintechをどのように捉えているのでしょうか。

 1つはキャッシュレスです。日本ではキャッシュレス比率が18.5%。つまり81.5%が現金ということなんですね。一方で諸外国を見ると、キャッシュレス比率は韓国で6割、米国でも5割に達しています。

 そのような背景もあり、日本政府もキャッシュレス化を大きく推進しています。また、モバイル機器の普及がキャッシュレス化の推進剤になると考えていて、この分野でのイノベーションが重要だと捉えています。

──日本のキャッシュレス比率が低い要因とは。

 日本は安全な国なんですね。海外では現金を持ち歩いても日本ほど安心という国は多くありません。また、韓国では政府がトップダウンでキャッシュレス化を推進している背景があります。

 日本では現金でも特段の不便もなく過ごせてしまうので、諸外国と同じようにキャッシュレス化が進むとは思っていません。われわれが考えているのは「現金よりも便利だし、もっとビジネスがまわるよね」という価値の提案なんです。そのなかで、“ペイレス”ということを意識しています。

──ペイレスはキャッシュレスを一歩進めた概念なのですか?

 ペイレスのわかりやすい例はUberです。普通タクシーに乗ると、行き先を告げて、到着したらメーターを見て運賃を支払いますよね。それでは運転手も大変だし、ユーザーにとっても財布の中からお金を探すには手間です。

 Uberではアプリで行き先を告げてあり、アプリに登録したカードで自動的に支払われます。ほかには、スターバックスも米国でペイレスのサービスを提供しています。共通しているのは、ユーザーにも従業員にも”決済する”という動作がないことです。

──そこでJCBが力を発揮できると。

 はい、ペイレスの取り組みは諸外国で進んでいます。その時にカード決済が使われるわけです。日本でもこのシェアを高めることができれば、世の中を良くしながらわれわれもビジネスができる。カード会社って、カードを“ピッ”とスワイプするだけじゃないんです。

──従来はFintechとどのように関わってきたのですか。

 正直これまでは自前主義でやってきました。カード会社として初めてギフトカードを出したのもわれわれですし、ポイントプログラムやサインレスシステムの導入もわれわれが先行しているんですね。ただ、今後は、すべての取り組みを自前でやるのは時代に合わないなと感じています。

──そこでスタートアップと組むわけですね。

 はい。JCBは日本発唯一の国際カードブランドであり、挑戦者としての自負があります。日本でいろいろなことを考えているスタートアップと連携し、日本発のイノベーションを仕掛けていきたいんです。そのためにJCB Payment Labを企画して、スタートアップと一緒にやろうと考えました。

溜まった決済データは「宝の山」

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