ニュースをオープンソース化せよ--Wikiの挑戦

Martin LaMonica(CNET News.com)2005年01月31日 17時09分

 ネット上のボランティアはジャーナリズムを向上させることができるのか・・・。Wikipediaの共同創設者Jimmy "Jimbo" Walesはその答えを見つけようとしている。

 Wikipediaは何千人ものボランティアが執筆と編集を行うオンライン百科事典として大きな成功をおさめた。今、彼らはニュースの領域にもwiki の共同プロセスを持ち込もうとしている。

 Wikinewsと呼ばれるこのプロジェクトはまだ初期の段階にあり、数々の具体的な問題に直面している。独自の報道を行う難しさや、スピードが重視される報道を相互レビューモデルを使って実現できるのかといった問題はその1例だ。

 それでもニュースに挑戦するのはなぜなのか。Walesやその他の人々は、主流のメディアが客観性を失い、質の高いジャーナリズムを追求する努力を放棄してしまったと考えている。Wikinewsの目標は、中立的で、偏りのない、事実に即した記事を提供することだ。事実を正しく伝えること--これは主流のメディアが多少の信頼を失った分野でもある。

 Wikinewsは数あるwiki関連プロジェクトの1つにすぎない。このほかにもオンライン辞書や自由に利用できる教科書といったプロジェクトがあり、いずれも非営利組織のWiki Media Foundationが運営している。そのなかでも特に注目を集めているのが開発中のWikinewsだ。少なくとも、ジャーナリストの間でのこのプロジェクトへの注目度は高い。

 CNET News.comはWalesにインタビューを行い、Wikinewsとwikiの周囲に生まれつつある「新しい文化」について話を聞いた。

--このニュースプロジェクトが誕生したいきさつと目標を教えてください。

 Wikipediaには、中立性に関する非常に厳しい方針が存在します。これは「中立的な観点」と呼ばれ、われわれのすべての活動を律する重要な原則となっています。Wikinewsでも例外ではありません。われわれは活動家がペンを執る極左のニュースサイトIndymediaのような、1部の草の根ジャーナリズム・プロジェクトとは異なり、中立的で質の高い基本情報の情報源となることを目指しています。

 Wikinewsをはじめた1つの理由は、百科事典であるWikipediaが、ニュースを補完するすぐれた情報源となっていることに気づいたからです。

 われわれはwikiのエネルギーをニュースにも適用できるのではないかと考えました。今起きている事象を記述することにも関心がありました。しかし、この種の記述は百科事典にはそぐわないため、こうした記述を置く場所を、このエネルギーを振り向ける場所を必要としていました。

--中立性をどうやって確保するのですか。ボランティアも偏った考え方を持っているかもしれません。思想の偏向は記事の選択にも影響します。

 その通りです。偏った観点を排除し、客観性と中立性を確保するための絶対的な方法はありません。しかし、wikiプロセスの仕組みとそのオープン性のおもしろいところは、さまざまな観点を持つ人々を広範に満足させる文章でなければ、wikiプロセスを通過することはできないということです。このため、執筆者は自然と偏見のある表現を避けるようになる--つまり、記事に含みを持たせることができなくなるのです。

 たとえば、The New York Timesの紙面にどれだけの作為が加えられているかを考えてみてください。私がThe New York Timesを例に挙げたのは、この新聞が特に悪いからではありません。他に比べると、はるかにましだからです。

 一流紙を読んでいると、「これを自分で編集できたら」と思うことがよくあります。事実を誇張している記事や、ニュースではなく、自分たちの意見を伝えようとしている記事があまりにも多い。Wikiプロセスはそのための手段となりますが、記事を書くのは人間ですから、完璧なものにはなりません。

--Wikinewsは今後、どのように展開していくのでしょうか。主流メディアと共存することになるのか、それとも取って代わるものとなるのでしょうか。

 まず、私はWikinewsが主流のメディアの代替品になるとはあまり考えていません。たとえば、主流のメディアには容易にできても、われわれにはできないことの1つに、信頼できる記者をウクライナに派遣し、信頼性の高い報告を手に入れるというものがあります。われわれがスタッフをどこかに派遣することはできません。地元住民の協力を得ることはできても、素性の分からない相手なら、情報源として信頼することはできない。一般的にいって、自分で記事を書きたいと思う人は活動家である可能性が高く、必ずしもジャーナリストとはいえませんからね。

 しかし、われわれは主流のメディアに新しい形の反応を返したり、ある意味では論評を加えたりすることはできるでしょう。この点では、すでにブログが重要な役割を果たすようになっています。質の高いブログは、質の高い社説欄のようなものです。一部のトップブロガーなら、一流紙に掲載されるような記事も書くこともできるでしょう。

 ブロガーは記事だけでなく、メディアそのものにも意見することが少なくありません。報道のやり方を批判したり、メディアが見過ごしている事実を探ったり・・・。Wikimediaはこうした役割も果たすことができますが、その形は違う。ブロガーが社説、あるいは社説に対する反応だとすれば、われわれは第一面に対する反応です。Wikimediaはさまざまな情報源が伝える情報を統合(synthesize)するものとなります。

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