ディー・エヌ・エーはなぜ勝ち続けるのか――知られざる“テクノロジー”企業の姿(前編)
ディー・エヌ・エーはなぜ勝ち続けるのか――知られざる“テクノロジー”企業の姿(前編)
CNET Japan Ad Special、文・青山祐輔 写真・津島隆雄
組織の変革によりスピード感が生まれる
2010年3月期第3四半期における、モバゲータウン内でのゲーム関連売り上げは、前期の約4億4000万円から、およそ8倍増の約35億7000万円にもなった。ソーシャルゲームは売り上げだけでなくコスト面でも大きな効果があった。ディー・エヌ・エーではそれまでモバゲータウン上で提供するゲームの開発の多くを他社に委託してきたが、先行してリリースしたソーシャルゲームを内部のエンジニアが開発していたからだ。このことが利益率にとって非常に有利に働いている。
内部のエンジニアが今までになかったものを開発する。ソーシャルゲームの導入にあたって、単にかけ声を上げるだけでなく、社内で組織を変え、ソーシャルゲームの開発に注力できるだけの体制を作ったところに同社の機動力が見られる。
「(モバゲータウンの成功で)ものすごい勢いで成長しました。サイトが10倍100倍に成長すると業務量が3倍5倍に膨らみます。それを本当は知恵と実行力で改革していかないとならないのに、この成長を止めたくないという恐怖から、リスク回避型の考えになってしまい、それをマンパワーで乗り越えようとした。でも、それが一番良くなくて、できた端から壊すっていうような考えじゃないと、実は維持できないんですよね。」
このように過去を振り返りながら南場氏は語ってくれた。一方、守安氏は実際の企業の動きについて次のように語っている。
「事業の方向性が悪いときには組織を変えますよ。モバゲータウンに関しては、2009年5月に大きく変えました。当時、いろんなグループに細分化されてしまっていて、それぞれが細かい個々のコンテンツを担当していました。ですが、それだと何かに注力しようとなったときに、いくつもグループがある中で、そのうちのひとつのグループだけが頑張ることになってしまう。そして、そのグループに人が足りない状況になってしまう。したがって、細かいグループ分けを止めて、3つの大きなグループに分け、グループ内で人の流動性を高めるようにしました。今後も、さらなる成長を目指して、臨機応変に組織を大きく変えていこうと思っています。」
ディー・エヌ・エーにとって初めてのソーシャルゲームは、これだけのヒットを飛ばしながら、作品を開発したスタッフはほとんどがディー・エヌ・エーに以前から在籍していたエンジニアだという。その中にはゲームを開発するのが初めてだというものもいた。にもかかわらず、ユーザーを引きつけるゲームを開発できたのは、ディー・エヌ・エーのエンジニアの働き方そのものに答えがある。守安氏が答えてくれた。
「従来は企画職がいろんなサービスの企画を出して、エンジニアがそれを作っていた。その結果、エンジニアは言われたものを作るだけになってしまって、自分たちで考えない状況になったんです。それじゃあよくない。もともとモバゲータウンにしてもエンジニアが自ら考えて作ったサービスだし、その方がうまくいくと僕は思っている。そこで、ソーシャルゲームを作るところに限ってはエンジニアと企画職のメンバーを1対1のペアにして、エンジニア自身が主体的に考えるようにしました。」(守安氏)
その結果、新しいアイデアを考えるとそれを企画書に落とし込む前に、エンジニアが直接形にしてしまえるようになった。守安氏は続ける。
「企画書では、特にソーシャルゲームみたいなモノは面白いかどうかってわからないんですよ。ソーシャルゲームを作りはじめたときに、企画書はいらないから、とりあえずモノを作ろうと言いました。そしてできたモノを見たうえで、善し悪しを判断するようにしました。その方が早いですよね。それってエンジニアじゃないとできないんです。」
主体的なエンジニアが作るサービス。これによって生まれる事業のスピード感。新たな事業の立ち上げを繰り返すことで、ディー・エヌ・エーがたどり着いたスタイルがこういったものだったということだ。それがそのまま同社の強みとなっている。後編では現場のエンジニアの生の声を通じて、その働き方、ものの考え方に焦点をあてて同社の姿を解明してみたい。
※所属部署名、役職は取材時のものを使用しています。
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