Appleで複雑さが増していることの象徴とも言える存在の1つにApple Storeがある。
Appleの小売直営店であるApple Storeは、顧客を満足させるという同社の考えにおいて非常に重要な存在だが、窮屈になっている。店内にあるのは、静寂というより騒然さだ。
小売部門の新たな責任者であるAngela Ahrendts氏は、せめて少しばかりの風をいま一度送り込もうと試みる再デザインに取り組んでいる。それは、同ブランドにお金を投じる多くの顧客と修理を必要とするさらに多くのガジェットが一堂に集まる現在、容易ではない。
さらに、Appleの心はハードウェアにある。携帯電話がより実用的になるに従い、ソフトウェアをシンプルかつ素晴らしいものにするためのプレッシャーが強まる。Appleは、そのことにさほどうまく対応できていない。Apple Musicがその一例だ。
また、うわさによれば、Appleのエンジニアの多くは今もなお、ソフトウェアプロジェクトよりもハードウェアプロジェクトに携わることに興味があるという。ガジェットは実体のあるものだが、ソフトウェアは象徴的なものにすぎない。
ちゃんと動作することというアイデアの上に自らの社風を築いた企業が現在、それが今でも事実だと人々に念を押すことに向き合わざるを得ないというのは、いかに奇妙なことか。そして、このことは、人々の生活がこれまでになく複雑化しているのと時を同じくしている。
オリジナルの「Think Different」は、考えを必要としないデザインによって顧客が非常に夢中になる状況を作り出すことだった。だが、それはもはや同じではない。
だからといって、非常に差し迫った事態というわけではない。
Segall氏が述べるように、Appleが持つシンプルさというマントを奪うことに成功したブランドはない。たとえば、Googleは、さまざまな「Android」端末にバラバラなバージョンの自社ソフトウェアが搭載されていることに非常にいら立っており、メーカーに恥ずかしさを感じさせて急がせることを考えていると報じられている。
ただし、米顧客満足度指数で人々が最も満足している携帯端末はiPhoneではなく、サムスンの「Galaxy Note 5」だ。
そこで、Appleよりもシンプルだとふと思えるブランドが出現したらと考えてみよう。多くの人は、そのブランドに流れないだろうか?
かつてないほど複雑な世界において、このような複雑さを取り除いてくれる人を誰でもいいから求めるのは、人が持つ基本的な欲求の1つではないだろうか?
そして、もし、この勇気ある新しいシンプルなブランドが成功したらどうだろう?どのようなことが起きるだろうか?このブランドはより大きくなり、貪欲になるだろう。
そうなると、シンプルさは姿を消し始めるだろう。
これは、人間関係と似ている。歌手のBarbra Streisandは昔、「追憶(原題:The Way We Were)」という曲で「あの頃は本当にすべてがこれほどまでにシンプルだったのだろうか?」と哲学者のごとく歌った。
その曲は、時間が過去のすべてを書き換えたのかと問うが、そうとは限らない。時間はその作業を、方向性が常に一致するわけではないチームに任せるだけだ。そして、物語は肥大化していく。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手