「クルマ×IoT」が生み出す新ビジネス--識者が持論を展開 - (page 2)

西田氏 : 自動車の中には大量の走行データがあります。これまでは、開発の時にのみ活用されていたわけですが、それがリアルタイムでやり取りできるようになると、例えば同じような走行シーンで以前はどうだったのか、といった情報を活かして運転できるようになるわけです。それは単純な運転支援という面もありますし、カーナビの延長線上でこのまま進んでいくと渋滞状況はどうなっていくかといった情報も考えられます。

 またちょっと飛躍した考え方になりますが、エンターテインメントを考えた場合、ある街の中をある天気のなか走っていた時にどういう曲が流れると気持ち良いと感じるか。大量にある楽曲の中から自動的に選んで流してくれる。自分がコレを流してだとか言わなくても、自分の嗜好であるとか、周りのトレンドだとかを活かして、クルマの中のエンターテインメントを変えるといったことができると思います。自分のクルマの中にデータがあってもできる範囲というのは限られているわけです。

 インターネットに巨大なデータがあって、それと常にデータのやり取りをしている。双方向性がある形で反応するからこそできることで、しかも小さなデータではなく、数千万人、数億人といった単位で集めたデータを使うことによって角度であるとか、適切さであるとかが変わってくるという部分が大きいと思います。

――神尾氏 : ドコモはIoTとクルマの関わりをどう考え、会社としてどう関わっていくのでしょう。


NTTドコモM2Mビジネス部長の谷直樹氏

谷氏 : IoTとクルマの関わりは、マシーンとのコミュニケーションというところから始まっている話だと思います。弊社としては20年近くマシーンとのコミュニケーションを行ってきており、当初は自動販売機をはじめとする“留まっている機器”との通信から始まっています。自動車に搭載できる通信モジュールができあがってきたのが7~8年ぐらい前になります。それから徐々にネットワークに繋がるような状況になってきています。

 今までは個々のサービスが独立した状態で提供されていたといえます。あるソリューションはクルマの動体管理・運行管理を効率よく行うためのマネージメントとして使っており、また運送業者の場合は、効率的な稼働状況にするための運転状況の管理などに使われています。それぞれのソリューションにあわせたサービスを提供していたというのが実態です。

 昨今スマートフォンの利用が増えてきていますが、クルマに乗ると、スマートフォンの状況をそのままクルマで活用するという形でしか提供できていません。クルマはクルマで別の世界があり、別のサービスが提供されているわけです。クルマとスマートフォンが別々の形というのが今までの状況だったわけです。

 それがIoTという世界になると、それらが有機的に繋がっていくことが重要になります。クルマを取り巻く販売系、整備系、賃貸、カーシェア、保険などがIoTを通じて繋がっていく、新しいサービスの形が出てくると考えています。弊社はすでにグローバルにM2Mのプラットフォーム基盤を構築しています。今後は今まで個々のサービスとして提供されてきたものが有機的に繋がるようなプラットフォームを、弊社が支えていきたいと考えています。

――神尾氏 : クルマというのはとても大きなビジネスです。クルマがIoTを取り込むことで、どれだけビジネスが変わるのでしょうか。クルマのIT化におけるビジネス的な見所、注目すべきポイントを教えてください。


情報通信総合研究所の岸田重行氏

岸田氏 : 生活の基盤であり産業の基盤であるものが繋がるわけですから、あらゆるものが変わってもおかしくないということです。変え方であったり、アイデアであったり、考え方であったり。どんどんいろいろなものが出てくる。そういったことがイノベーションという形で表にでてくる。そのように捉えています。

――神尾氏 : 一般のユーザーの立場に立った時、どこが魅力になり、どのように売れていくものなのでしょうか。

西田氏 : キーワードとしては“インカー・エクスペリエンス”という言葉に集約できると思います。つまりクルマの中での体験ということです。たとえばクルマの中のインパネというものは基本的にアナログなものなわけですが、それがディスプレイ化していく。

 どういう情報をどういう形でどのように見せるかというのは、自由な発想で作れるわけです。表示を変える、操作のために必要な情報が変わるというところを含めた快適さが変わるということです。クルマの中の体験というものが、ソフトウェア化によって大きく変わる可能性があるわけです。

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