ドコモのSIMロック解除の影響は「皆無」と断言する4つの理由--iPhoneが解かれたとしても - (page 2)

SBMがiPhoneのSIMロック解除に応じたら?

 先にも触れたとおり、ガイドラインでは「平成23年(2011年)度以降新たに発売される端末のうち、対応可能なものからSIMロック解除を実施する」と明記されている。今夏にも発売されるであろう、次期iPhoneの扱いが焦点になるわけだが、仮にSBMがiPhoneのSIMロック解除に応じざるを得なくなったとしても、直接的な影響は無いのではなかろうか、というのが筆者の考えだ。

 SBMは衆目の知るとおり、iPhoneを実質負担0円で購入できるキャンペーンをこれまで大々的に行ってきている。当然、次期iPhoneも同様のキャンペーンは行うであろう。当該キャンペーンは説明不要であろうが、「月月割」により、毎月の通信料金から、端末代金相当額を端末購入翌月から24カ月間割引くというもので、最低25カ月間拘束されることになる。

 無論、「月月割」適用期間中に解約することも制度上可能であるが、多くのユーザーは同時にホワイトプランにより2年間は拘束されているので、これの途中解約違約金9975円が掛かる上に、端末割賦残債を支払わなければならない。0円で買った(貰った)はずのiPhoneは、25カ月間使わないと実質0円にはならないのである。この時点で、多くのユーザーは25カ月間、いくらネットワーク品質が悪くても、我慢し続けながら使わざるを得ないのである。

 つまり、SBMが今夏に発売するであろう次期iPhoneのSIMロック解除に応じざるを得なくなったとしても、2013年の夏頃に影響が出てくる可能性があるということなのだ。では、25カ月の拘束期間満了後SIMロック解除権を得たユーザーによる影響はどうなのか。それでもSBMへの影響は限定的になるのではないかと筆者は以下3点から考えている。

影響が限定される3ポイント

 1つ目は、「電池寿命の問題」だ。iPhoneでも採用されているリチウムイオン電池の持ち時間特性は、一般的に300サイクル(300回の充放電)でおおむね、使用当初の70~80%の特性、500サイクルでおおむね50~70%といわれている。1日1回充電したとして、1年で使用開始当初の80%程度ということなのだが、実際はどうだろうか。多くの人が1年後に新品当時の70~80%の持ち時間特性はないというのが実感だろう。

 2年後など、電池の持ちが明らかに悪くなって、とてもじゃないが1日どころか半日も持たないというのが実際だと思う。SIMロック解除権を得たとしても、そもそも、端末の買い替えを検討する時期になっており、そういったユーザーに対しては、更に2年SBMを使うことを前提に、実質負担0円の買い替えキャンペーンを当然するであろう。

 2つ目は、「ホワイトプランの料金体系」だ。ホワイトプランは、新規契約の24カ月後に迎える契約更新時に契約を継続すると、更新翌月、翌々月の使用料が無料になる。更に、その24カ月後(つまり、新規契約時から48カ月後)に契約更新すると、その翌月が無料になるという料金体系を採用しており、ここでの拘束効果は相応にあると見てよい。

 実際に2年ほど前まで1.2~1.3%台で推移していたSBMの解約率は、2010年度になり0.9%まで低下してきている。仮に、次期iPhoneが毎月15万台程度新規で売れていくとすると、2年後に毎月15万のSIMロック解除候補者が出てくる訳だが、SBMの平均的な解約率0.9%を当てはめ、SIMロック解除してドコモに流出したとしても、15万×0.9%で月間約1300人。iPhoneのユーザーはリテラシーも高く、かつ非常にアクティブなので、SBMの平均的解約率の5倍(0.9%×5倍)である4.5%としても、15万×4.5%の月間6750人程度の影響なのだ。これであれば、現在純増数が毎月25万程度で推移しているので、十分に吸収して「影響は無い」と言えるであろう。

 3つ目は、同じW-CDMAであるSIMロック解除後の移転候補先であるドコモでiPhoneは、現時点において正式にサポートされていないため、外部機器接続時の「パケ・ホーダイダブル」の上限料金である1万395円(税込み)というかなりの高額負担になるということだ。

 SBMでiPhoneを利用した場合、上限金額は4410円(税込み)なので、パケット料金が5985円も割高になるわけだが、SBMとドコモの2台持ち時の通信料負担とほぼ変わらず、筆者のように話題のネタとしてやってみたいという奇特なユーザーを除けば、多くのユーザーがちゅうちょするであろう。ただし、ドコモがSBMなど他社から持ち込んだSIMロック解除端末向けのパケット料金プランというものを新たに設立しなかった場合の話だ。

 それでは、ドコモが、SBMのiPhoneをSIMロック解除した際の受け皿プランを作るだろうか。筆者は、そこまでドコモがするつもりは無いのではないかと想定している。というのも、「光の道」議論でのA案・B案といった意見広告やソフトバンクショップでの署名活動、旧Vodafone買収前には総務省に対して行政訴訟を起こすなど、何をしでかすかわからないソフトバンクを、いたずらに刺激するのは得策では無いとドコモも考えるであろう。

 さらに、Androidを中心にラインナップも充実してきており、日本においても出荷ベースでiPhoneをAndroid端末が抜くということは射程圏内に入っている状況下で、そこまでする必要は無いと考えるのではないだろうか。こればかりは、想定の域を出ないが、ドコモのスマートフォンラインナップの充実度合いを見ると、Androidで十分にiPhoneと肩を並べて戦える環境になりつつあると考えているのではないかと想定する。

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筆者:梶本浩平(かじもと こうへい)

金融機関にて、リサーチアナリストとして通信セクターを担当。株式上場前のNTT移動通信網(現NTTドコモ)に入社後、iモードの初期開発メンバーとしてサービス立ち上げに従事した後、海外通信事業者との資本提携業務に携わる。2007年9月より、みずほ信託銀行調査役・シニアアナリストとして通信、インターネット、電子部品のセクターアナリストとして従事した後退職。2008年11月より現職。

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