同時に、既存の編集者たちは以前にも増してWikipediaを保護しようとする傾向が強くなっており、お気に入りの記事に監視の目を光らせたり、新しい編集者に疑念ともとれる気持ちをに向けたりしている。
Lih氏は「記事の(作成や)編集の勢いがウイルスのように広がっていく現象を今日再現するのは難しい」と述べた。同氏によると、古くからのボランティアは「新参者の背中をポンと叩いて、『ようこそWikipediaへ』と言ったりはしない」のであって、「今何をしたのだ。役に立つことができないのなら消えてくれ」と言うのだという。
これでは次世代のパワーユーザーを見つけるのが難しくなり、Wikipediaの将来に脅威をもたらす力学が発生するかもしれないとLih氏は危惧する。「次の350万件の(英語)記事はどこからやってくるのか」(Lih氏)
しかし、Lih氏はWikipediaが終わってしまったとは決して思っていない。それとは全く反対で、「Wikipedia Revolution」の著者である同氏は、Wikipediaの今後10年間の成長は新しいコンテンツのソースを大量に呼び寄せる同サイトの能力にかかっている、と考えている。
Wikimedia FoundationがWikipediaに新しいコンテンツを提供できる政府や図書館、アーカイブ、博物館へ参加を呼びかける取り組みに成功することが極めて重要である、とLih氏が考えるのはそのためだ。
ほかにも、大量のマルチメディアの追加を積極的に推進する大規模な取り組みが行われる可能性が高い。しかし、それが実現する前に、動画と音声の共同作成および編集を可能にするツールを開発しなければならない、とLih氏は述べた。
さらに、既に270カ国語に対応してはいるが、未対応の言語はほかにもたくさんある。そして、それはWikipediaにとって明白な成長分野のように思える。実際にWales氏はThe Washington Postに対し、Wikipediaが地球上のすべての言語に対応することを望んでいると話した。
Wikipediaがそれを実現するまでには少し時間がかかるかもしれない。しかし、Wikipediaは今後も存在し続ける。1700万件の記事と未だに強い忠誠心を持つ大勢の執筆者と編集者のことを考えると、当面は同サイトの活気を維持できる力がたくさん残っている。
Wikipediaが誕生後の10年間で残した遺産は何だろうか。Lih氏にとって、それは同サイトが社会通念を根本から覆したことだ。
「『勝者が歴史書を書く』という有名な格言がある。この格言はもう当てはまらないない。(今では)人々が歴史書を書くようになった」(Lih氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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