宇宙科学のシンフォニー - (page 2)

文:Holly Jackson(CNET News.com)
翻訳校正:ラテックス・インターナショナル
2008年09月02日 07時00分

 「スタンフォード大学を含む多くの機関で、科学研究のための予算が大きく削られる中、科学で人々の胸を躍らせようと考えた。一般の人たちの科学への興味が高まれば高まるほど、社会は発展していく。私たちがありがたいと思っているもののほとんどは、最先端の科学研究から生まれている」(Gasser氏)

 科学をテーマにした音楽を作曲するに当たり、Gasser氏は、高校卒業以来学んだことがなかった分野に飛び込まなければならなかった。

 「わたしは科学と、GLASTを支える科学である素粒子物理学、宇宙論、天文学に夢中になった。わたしにとってすばらしい体験で、これら2つのパラダイムが融合しやすいことに驚かされた」(Gasser氏)

 芸術と科学を融合する手段として同氏がとったのは、電磁スペクトルの波長を五重奏の楽器で表現することだった。音楽のテンポが速くなるにつれて、トロンボーンで波形のように低音を奏でることで、マイクロ波からガンマ線までの周波数を表現している。また、「GLAST Prelude」には、プロジェクトに携わった6カ国の国歌の一部も盛り込まれた。最も重要なことだが、Gasser氏が作品の中で最もメロディックで主題的だと言うGLASTのテーマは、宇宙空間に浮かぶ観測衛星を表現している。

 「軌道を旋回するこの衛星の美しさを捉えたいと思った」(Gasser氏)

 「GLAST Prelude」の成功後、Gasser氏は、宇宙の歴史にオーケストラのすべての楽器を盛り込んだ「Cosmic Reflections」の作曲を決めた。このシンフォニーは、まだ作曲途中だが、ビッグバンと宇宙マイクロ波で始まり、宇宙の構造形成、太陽系の形成へと続き、地球での知的生命体の進化で終わる。30分の作品は、2009年秋にケネディ・センターで開催予定の「GLAST Observatory Symposium」でBoston University Symphonyによって演奏される。

 「『ピーターと狼』とグスターヴ・ホルスト作曲の『惑星』を合わせたような曲になる予定だ。プロコフィエフ作曲の『ピーターと狼』は、物語をオーケストラの演奏で表現した物語だ。朗読と、それに続く音楽が物語を音で表現する。音楽をバックに朗読するところもある」

 作品には、ゴダードからの画像、映像とともに、物理学者で「スタートレックの物理学」の著者であるLawrence Krauss氏と、Gasser氏が芸術監督を務めるClassical Archivesの最高経営責任者(CEO)であるPierre Schwob氏による台本が盛り込まれる。

 クラシック音楽と宇宙との融合は今回が初めてではなく、「2001年宇宙の旅」のドラマチックなオープニングを思い起こさせる。しかし、一見対極にある2つが融合して芸術作品を生み出すことはほとんどない。

 「確かに、共通点はあまりないように見える。脳の対極にあると言う人もいるだろう。しかしこの作曲を通じて、わたしは両者には多くの共通点があると感じている」(Gasser氏)

この記事は海外CNET Networks発のニュースをシーネットネットワークスジャパン編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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