WiMAXサービスのもう1つの課題は市場ニーズの問題だ。WiMAXはインフラ整備が進んでいない中国やインドなどの広大な地域でメリットがあるとされており、すでに光ファイバやADSLなどの有線インフラ設備が整った日本の都市部で、どこまで市場が広がるかは不透明な部分がある。
鷹山は主に法人をターゲットにすることで、この課題を解決しようとしている。携帯電話を企業の内線電話として利用できるモバイルセントレックスのようなサービスを提供する考えだ。
鷹山は今回の新サービスを開始するにあたり、ネットワークインテグレータのベルネットと業務提携を行っている。ベルネットは1989年に創業された会社で、PBXなどのネットワーク機器のシステム設計や開発、販売、保守を行っている。また、インターネットデータセンターの構築、運営なども手がけている。
ベルネットは鷹山のサービスを利用する企業に対して、ネットワークインテグレーションサービスを提供する。ベルネット常務取締役情報システム本部長の山根康嗣氏は、「WiMAXを利用することで、IP携帯電話端末が企業内だけでなく屋外でも利用できるようになる」と話す。ベルネットは現在、企業内の電話システムをIP電話に置き換えるIPセントレックスサービスを提供している。ここでの電話端末は固定電話だが、鷹山の新サービスと組み合わせれば、屋外でも内線電話のように定額制のIP電話が利用できるというわけだ。
ベルネットは韓国NetCODECと共同で、通信端末の開発を行っている。ベルネットによると、6月からの実験で利用する端末は通話端末にコンパクトフラッシュ(CF)型の通信カードを差し込んで利用するものだという。端末は802.11bの通信チップを内蔵しており、802.11a/gやWiMAXの通信カードを差して利用することもできる。また、PHSカードを差し込んで利用することも検討している。音声コーデックはG.711とG.729 Annex Aに対応し、QoSをサポートするという。
モバイルセントレックスとしては、NTTドコモのFOMAと無線LANのデュアル端末であるN900iLが注目されている。鷹山の新サービスは移動しながら利用できないこと、利用できるエリアが限られていることなどの点でFOMAには及ばないが、通信速度や料金の点では分がある。ベルネットはWiMAXの高速通信を生かし、テレビ会議やグループウェアなどの業務アプリケーションとの連携、動画配信などのアプリケーションを提供していきたいとしている。
鷹山はサービスの開始に向け、円建転換社債型新株予約件付社債を発行して70億円の資金を調達すると発表している。同社の業績は2002年度以来営業赤字が続いており、2004年通期の業績予想は売上高が55億3100万円、経常損失が45億3700万円、純損失が57億2200万円になると予測している。
資本基盤の面で鷹山には課題があるが、「PHS事業を終了することで、大幅な財務改善が見込める」と高取氏は自信を示す。PHS基地局の維持費やISDNの回線費用などが同社の経営を圧迫しているためだ。
WiMAXのサービス開始に伴い、鷹山はアステル東京のユーザーを新サービスに移行させる方針だ。アステル東京の加入者数は2005年2月末時点で8万4100件。アステル東京は最盛時の1997年12月には65万件の加入者がいたが、携帯電話の普及に伴い契約者数は減少の一途をたどっている。
すでに2004年8月にはアステル東京の通話エリアの縮小や一部サービスの終了を発表しており、2006年第2四半期までにはPHSサービスを停止する。アステル東京のユーザーに対しては、第三者への譲渡不可を条件に、WiMAXサービスを特別価格で提供するとしている。
高取氏によると、WiMAXサービスは、12万5000人の加入者がいれば損益分岐点に達するという。鷹山では主に官公庁や地方公共団体に新サービスの勧誘を行っており、「現在いるアステル東京の加入者がWiMAXサービスに移行すれば、来年3月には達成可能ではないか」(高取氏)と強気の見通しを示す。
さらに将来的には、802.16eを利用した移動体サービスも計画中だ。802.16eの規格化完了時期は2005年夏と見られている。高取氏は「2007年にも802.16eをベースにしたサービスを開始したい」とした。
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