掲載日時: 2011/03/11 13:00:00

shio直伝!! GR×Mac 究極の写真術--第2回:準備編

[PR]写真家の塩澤洋一氏による連載2回目は準備編。写真の撮影はほとんど一瞬。そのタイミングに全神経を集中して思い通りの写真を撮るために達人がどんな準備をしているのかを紹介していく。

著者 : CNET Japan Ad Special 執筆/写真:塩澤 一洋

URL : https://japan.cnet.com/extra/ricoh_201103/35000234/

(1) GRの準備

こんにちは!! shioこと塩澤一洋です。
第2回は準備編。撮影に臨む前に行うことをお伝えします。

第1回:設定編(2011年3月4日公開済み)
第2回:準備編(2011年3月11日公開。今号)
第3回:撮影編(2011年3月18日公開済み)
第4回:公開編(2011年3月25日公開済み)

いいカメラはいい写真の第一歩。
コンパクトで扱いやすいGRは、気持ちを即座に描写できる。
(画像クリックで拡大表示)

写真の撮影はほとんど一瞬。撮りたいと思ったタイミングに全神経を集中して絵作りし、シャッターを切る。そのためには、撮影以前に済ませておけることはすべて予め終わらせておくのが万全だ。思い通りの写真を撮るには、準備が大切なのである。

まずはバッテリー。きちんと充電したものを入れよう。充電器から本体に戻し忘れたまま、撮影に出かけてしまうと悲惨だ。いざ撮影しようとしたらカメラが動かない、という悲しい現実に直面することになる。

撮影時、私は常に予備のバッテリーを携行し、1個が完全になくなるより前に交換して使っている。早め早めの交換が大切だ。撮影に夢中になってバッテリーの消費に気づかず、撮ろうと思ったその瞬間にバッテリー切れで貴重な機会を逃した経験が何度もある。それはなんとしても避けたいのだ。

メモリーカードの確認も大切。バッテリーと同様、Macに読み込んだまま、カメラに戻し忘れて撮影を始めると悲しい。カメラ内部メモリーに何枚か保存できるが、それでおしまい。やはり、バッテリーとメモリーカードは、毎日必ず、撮影前に確認が必須だ。

GR DIGITAL 3にはSanDiskの「Extreme16GB」を使っている。カメラを入手した時点で市場にあるできるだけ高速なタイプ、といってもあまり価格が高すぎないものを選ぶ。ひとたびそのカメラで使うSDカードを決めたら、絶対に他のカメラと混用しない。前回書いたように、SDカードに記録された最新のファイル番号が、その次に撮影する写真の番号に影響するから、他のカメラで使ったSDカードを入れた場合、ファイル番号の連番が継続しなくなる可能性があるからだ。

そして時刻合わせ。出かける前にカメラの時刻を秒単位で合わせておく。複数のカメラを持って旅行に行くような場合は特に重要だ。でももし時刻の設定がずれたまま撮影を始めてしまったら、そのまま最後まで撮影したほうがいい。Aperture3に読み込んでから一括して撮影時刻を補正できるからだ。とはいえ、予め合わせておくに越したことはない。

北京・GR DIGITAL 3 (画像クリックで拡大表示)

レンズの表面をきれいにすることも大切。撮影中、知らず知らずのうちにレンズに触れて、指紋などが付着してしまうこともある。レンズが汚れていると画質に影響するから、撮影前にはレンズをクリアにしておきたい。

そのため私は、東レの「トレシー」を愛用している。すべてのバッグの小さいポケットに、トレシーを常備しているのだ。レンズに「はーっ」と息を吹きかけてからトレシーで一拭きすれば、あっという間にきれいになる。レンズの繰り出し部分はデリケートなので、力を入れず、やさしく拭くのがポイントだ。

カメラにはケースのたぐいを一切付けていない。できるだけカメラを「身軽」 な状態にして、撮りたいと思ってから撮影までのタイムラグを短くしたいからだ。また特定の「カメラバッグ」というものも使っていない。その日そのときに持って出るバッグの小さいポケットに、カメラを裸のまま入れておく。もちろん、カメラは精密機械なので、衝撃が加わったり、突起物が当たったりすることが絶対にないよう細心の注意を払っている。

カジュアルな服装であれば、ズボンのヒップポケットに入れることも多い。またジャケットを着ているときは、左胸の内ポケットが定位置だ。昔はそこに手帳やペンを入れていたが、GRの出現以来、右手で取り出しやすいこの内ポケットは、GR専用。

ともかく、すぐに取り出せて、すぐに撮れるよう、撮影までの最短距離にカメラを常備することが肝要なのである。そのため、ストラップは大変有効。次のページで詳しく説明しよう。

北京・GR DIGITAL 3 (画像クリックで拡大表示)

(2) ストラップの効用

さてストラップ。撮影と写真の仕上がりに直結する重要なアイテムだ。

写真の精細度を大幅に低下させる最大の原因は、「微ブレ」である。写真を一見してわかる「ブレ」ではなく、パッと見ただけではわからないが拡大して見ると確かにほんのちょっとブレている、という程度の微細なブレが「微ブレ」。ごくわずかなカメラのブレが、写真全体の透明感、精彩感、そして画質そのものを直接左右する。

したがって、解像感の高い緻密な描写を得たかったら、画素数の多寡やレンズの描写性能を云々するよりも前に、まず、「微ブレ」を徹底的になくすのが先決である。一般的には三脚を使うのが定石だけれども、せっかくの機動性が失われてしまう。そのため私は三脚は一切使わず、ストラップを有効活用するのだ。

私が使うストラップは3種類。

1つはリコー純正のネックストラップ、「GS-1」または「ST-2」。これをカメラにつけて首にかけ、カメラを前方にピーンと張ると、手ぶれを抑制できるのだ。せっかくネックストラップを付けていても、撮影時にピーンと張らないと宝の持ち腐れ。ネックストラップは、カメラを運搬するためのものでもあるが、微ブレを防止して画質を向上するためにこそ使うべき、大切な撮影道具なのである。

低い位置とか前方に乗り出して撮影する場合は、左手でストラップの頂点を手前に引きながら右手でGRを前方に押し出す。また高い位置を撮影するときは、頭の後ろに回すこともできる。ちょっと不格好だけれど、撮影は一瞬で終わるので気にしない。ストラップにテンションをかけることによってカメラを静止させ、微ブレを回避する方が大切なのである。

ネックストラップは「微ブレ」防止の最有力アイテム。
対角線に取り付けて「斜め吊り」するのshio流だ。(画像クリックで拡大表示)

私の場合、このストラップをGRに斜めに取り付けている。カメラを背面から見て、左上と右下のストラップ穴に結びつけるのだ。本来は左右同じ高さに取り付けて、カメラを横位置、あるいは縦位置に吊るために付けられている3カ所の金具だが、それを対角線状に利用するのだ。こうすると、カメラを横に構えても縦に構えても、モニターがストラップの影になることがなく、見やすい。またストラップを肩から斜め掛けして歩く場合にも安定度が高い。

2つめはアンカーストラップ。ABITAX製の「3614 Anchor Strap」だ。ヨドバシカメラ吉祥寺店で12色、きれいに列んで売られていたのを買った。本来はケータイストラップだが、2007年の夏以来、これをGRに付けっぱなし。背面から見て右下のストラップ穴に付け、小指と薬指に内側から挟んで握り込むと、機動性も確保できる。掌(たなごころ)の中でGRを安心してとり回すことができるのだ。

GRのshio的ベストパートナー「アンカーストラップ」。
ブレ抑止効果はないので、撮影時のホールディングが大切(画像クリックで拡大表示)

基本的なホールディングスタイルは3種類。もっとも一般的な「ボトム・アーム・スタイル」、横位置撮影での使用頻度が高い「バック・アーム・スタイル」、そして私の好きな縦位置撮影に適した「ライト・アーム・スタイル」。それぞれ「GRist」のインタビューに写真が掲載されているので、そちらをご参照いただきたい。

さらにもうひとつおまけ。「自分撮りスタイル」。レンズが自分を向くようにGRを横位置で上下逆さにし、向かって右端のボディ(グリップ部分)を右手で手前から握り込んで、右手親指の第一関節でシャッターを切る。旅行に行って名所旧跡で自分を入れた写真を撮るとか、恋人とツーショットを撮るときに重宝なスタイルだ。慣れると安定感もあってブレにくい。

「ハンドフリーストラップ」を付けてカメラを押し出すようにピーンと張れば安定感抜群。
GRの三脚穴が中央にあるおかげだ。こういうところにもGRの妥協のない設計が光る。
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3つめは、三脚穴に取り付けるタイプのネックストラップ。エツミ製の「E-6069 ハンドフリーストラップ」だ。アンカーストラップと併用できるし着脱が簡単なのがいい。普段はストラップなしでGRを使い、ネックストラップをピーンと張る安定が必要なときだけ三脚穴に固定する、というテンポラリーな使い方ができるので便利だ。

北京・GR DIGITAL 3 (画像クリックで拡大表示)

(3) Macの準備

Macも準備しよう。Macの機種はAperture3 が動けば何でもよい。私はApertureをバージョン1から使い始め、もはや私の写真生活に欠かすことのできない「アトリエ」である。

Macを買うと「iPhoto」がついている。誰でも簡単に使える優秀な写真用ソフトだ。撮影した写真を見たり、選んだり、スライドショウしたり、プリントしたりと、普通に楽しむならiPhotoで十分。でも撮影枚数が増えてくるとさらに進んだ使い方をしたくなる。速度も重要。

Aperture3はすべての操作が高速で快適だ。仕事だろうが趣味だろうが、写真を楽しむ人が「撮影後」に行いたいと思うことを一手に引き受けてくれる頼もしいソフトである。写真のよさを引き出し、より洗練された作品に仕上げていくためのアトリエ。そう、iPhotoは「ギャラリー」、Aperture3は「アトリエ」なのだ。

いままでiPhotoで写真を管理していた場合も、そのライブラリーをすべてAperture3に読み込める。移行も簡単なのである。

当初から19,800円で売られていたAperture3だが、2011年1月に「Mac App Store」が始まると同時に、なんと1万円を切る9,000円で発売された。この機能と使い勝手の良さから考えたら破格値である。これを購入してインストール。そのままでも十分使えるが、いろいろと設定を加えていくと、どんどん便利になる。その辺は、次回以降にお伝えしよう。

北京・GR DIGITAL 3 (画像クリックで拡大表示)

もうひとつ重要なのは、「flickr」のアカウント。flickrは写真共有サイトで、写真をアップロードし、非公開で蓄積したり、公開して世界中の人に見てもらったりできる。そのアカウントを取得するのだ。アカウントをとって少々使うくらいなら無料。しかし、ぜひとも有料のProアカウントにしたい。有料といっても年額24ドル95セント。年2,000円ちょっとで、写真を無制限にアップロードできるようになる。大切な写真のバックアップにもなるので安心感を買うと考えても安い。

私の場合、撮った写真のすべてを、リサイズなしの低圧縮JPEGファイルでflickrにアップロードしている。いままでに10万枚以上をflickrにアップしてあり、8万枚程度を公開モードに設定済み。どなたでもアクセスして、EXIF情報をご覧になったり、元ファイルをダウンロードすることが可能だ。

私のブログ、shiologyに貼ってある写真はすべてflickrからリンクしているものである。shiologyにある写真をクリックしていただけばflickrに飛ぶ。そこで、写真左上の「Actions」をクリックし、たとえば「View Exif info」を選んでいただけば、シャッタースピードや絞りといった情報をすべてご覧になれる。

そして私にとって欠かすことのできないのは、flickrへのアップロードを便利にするプラグイン「FlickrExport for Aperture」。Aperture3は買ったままでもflickrに写真をアップロードする機能を備えているが、FlickrExportを入れると格段に便利になる。たとえば、flickrへアップロード後、flickr上での写真のURLを、Aperture3内の写真のメタデータとして取り込んでくれるのだ。これがあるおかげで、いったん写真をアップロードしたあとは、Aperture3で写真を選んでそのURLを右クリックすれば、その写真のflickr上のページに飛ぶことができる。

北京・GR DIGITAL 3 (画像クリックで拡大表示)

(4) 心の準備──何を写すか

もっとも大切なのは心の準備だ。GRもMacも単なる道具にすぎない。写真を撮るのは撮影者自身である。

何を撮るか。
何を写すか。
そのすべては、撮影者の心次第だ。

その人らしさがそのまま表れる。だから写真は面白い。
写すものも写し方も人によって異なる。だから写真は面白い。

カメラを持って同じ道を数人で歩き、あとで見せあうとそれぞれまったく違う対象をまったく違う撮り方で写真にしている。誰でもボタンを押せば撮れる簡単な作画技法だからこそ、その人の興味や関心がストレートに現れて、ほかの人との相違が際立つ。それが写真の面白さだ。

私の場合は、「きらきら」を写している。それについては2006年1月のブログに書いた(「604:060128 写真はキラキラ」)。もともと、意識して「きらきら」を撮ろうとしていたのではなかったが、自分が写した膨大な写真を振り返ってみたときに、「あぁ、自分はきらきらを写してきたんだなぁ」と気づいたのだ。それ以降も、個々の対象に対して、「おいしそう!!」、「美しい!!」、「魅力的!!」という気持ちを写しているが、やはり、結局のところ全体としてみれば、きらきらを写し続けているように思う。

北京・GR DIGITAL 3 (画像クリックで拡大表示)

写真は「写心」。写す人の心を写す。
写真は「写信」。写す人と写る人との信頼関係を写す。

写真は、自分の心を投影し、相手との人間関係も写す。すばらしい表現媒体だと思う。その撮影はほぼ一瞬だけれども、その人の生き方や感性がそのまま表れる。
だから、常日頃からの心の準備が大切なのである。

写真は撮影の瞬間に至る前に行うことが非常に多い表現手法なのだ。写真の準備の大切さについては、以前、今回のコラムとは違った視点で、「写真は未来を写す」というコラムを書いている。どうぞご参照ください。

次回は撮影編。GRならではの撮影術やMacの使用を前提とした撮影のノウハウについてお伝えしたい。

北京・GR DIGITAL 3 (画像クリックで拡大表示)

執筆者プロフィール

塩澤一洋

写真家。フィルムのGR-1から、初代GR DIGITAL、2、そして3と「GR」を愛用し続ける生粋の「GRist」。月刊MacPeopleに「一語一絵」を連載中。

Twitter:@shiology
ブログ:http://shiology.com/

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