情報伝達の手段は、パソコンの普及で紙からWebに変わり、さらにスマホの登場でモバイルアプリベースへと変わりつつある。企業にとってモバイルアプリは、いまや重要な情報伝達の手段であるとともに、顧客や従業員とリレーション強化に欠かせなくなりつつある。そうしたモバイルアプリをノンプラグラミングで容易に開発できるソリューションが、「Rakuten Aquafadas(楽天アクアファダス)」だ。企業や製品のブランディングに有効だという同ソリューションの特長について、楽天コミュニケーションズの担当者に聞く。
Rakuten Aquafadasは、フランスに本社のあるAquafadas社を楽天が買収し、日本市場向けは現在楽天コミュニケーションズが提供している。日本においても、これまで電子書籍や雑誌、コミックという出版関係で多く採用されているが、欧米では出版関連以外の一般企業が採用するケースも多い。
「Rakuten Aquafadasは、世界40カ国1200社以上の様々な部門で使われています。出版ももとより、一般企業、銀行、自治体、NPOなど幅広い業種で活用されています。例えば2024年のパリオリンピックのIOC向けプレゼン資料もRakuten Aquafadasで制作されたものです」(ダリウス氏)
一般企業における活用用途としては、提案書や企画書、カタログ・パンフレット、PR誌、会社案内、採用案内、社内報などを、アプリに置き換えるといったケースがある。そうした中で、特に最近目立ってきているのが、社内外のブランディング用途での利用、と話すのは、ビジネス開発部の岡崎功氏だ。
「海外では、インタラクティブな表現ができることでブランディングを向上させる取り組みが一般的になっています。例えば、イタリアの高級家具メーカーのデジタルカタログアプリの事例では、アプリを立ち上げると動画が流れて世界観を表現します。ただの読み物ではなく、動画を効果的に入れることで高級な世界観やブランディングを高める効果を出しているのです。またデロイト・トウシュ・トーマツでは、デロイトを卒業した人向けのインナーブランディングとして、それぞれがどんな活躍をしているかという情報を提供しています。電子化することで簡単に情報を渡すことができ、アプリで表現力を高めることで、成功した忙しい人たちにも読みたいという意識を起こさせることができます」(岡崎氏)
ほかにもビジネス用途では、営業資料での活用が有効だ。カタログの情報を含めて営業に関する情報をアプリ化して情報を集約しておけば、常に最新のものが使えてバージョン管理も簡単になる。営業担当者のスキルの底上げにも活用できるし、何より紙の提案より相手の印象に残るのがメリットだ。
Rakuten Aquafadasは、豊富なインタラクティブ機能を備えたモバイルコンテンツの制作から配信まで行えるプラットフォームで、リッチコンテンツを容易に開発できる。Rakuten Aquafadasに黎明期から携わる技術営業担当のドミニク・ダリウス氏は、製品の特長について次のように解説する。
「Rakuten Aquafadasを使ってアプリのコンテンツを作れば、魅力的な形でメッセージを届けることができます。動画やアニメーション、写真のスライドショーといった形の視覚的な効果を加えられ、タップしてレスポンスするといったインタラクティブな仕組みを簡単に作れます。Rakuten Aquafadasはそれを、プログラミングレスで作れるので、デザイナーの方でも簡単にモバイルアプリを開発できます」(ダリウス氏)
Rakuten Aquafadasの特長の1つが、PDFデータやAdobe InDesignのデータ、画像、動画など、企業がこれまで活用してきた既存のコンテンツ資産を活かして効率的に開発できることだ。もちろん、コンテンツを1から制作することも可能だ。開発したコンテンツは、スマホやタブレット端末向けのモバイルアプリのほかに、パソコンおよびモバイル向けのWeb画面、さらに従来通りの紙媒体へと、ターゲットに合わせてマルチに展開できる。アプリのインターフェースは画面上のドラッグアンドドロップで“設定”するだけの手軽さだ。アプリの内容は、配信後でも更新できるため、つねに最新の情報をユーザーに提供することが可能だ。
このようにビジネス向けのコンテンツをアプリで提供するメリットについて、制作面では動画やアニメーション、スワイプ効果といったリッチな表現による視覚的効果で、これまでにないユーザー体験を提供できることが挙げられる。また、文字などの制限、縦も横も考えない自由なレイアウトで自由に作れるため、企業の世界観を柔軟に表現することできる。
もう一つのメリットが、マーケティング活動に役立つことだ。商品やサービスを販売する企業が、商品を見てもらった後に購買や継続利用に導くためには、商品だけでなく企業としての活動をPRするのが効果的だ。その際Webの世界では集客はできるが、リテンション、もう一度見る体験をしてもらうのは難しい。
アプリを利用すれば、プッシュ通知を活用して更新情報を適宜配信することで、継続的なアプローチが行える。また、リッチな表現で商品を紹介してユーザー体験を向上させた後にWebのECサイトや詳細な商品サイトに誘導したり、企業のトップのメッセージコンテンツに誘導したりして、販売活動の延長線上で会社の姿勢と共にアピールすることも可能だ。その際に、トラッキングの分析によってよく見られているページや見られていないページを把握し、コンテンツの改善につなげることもできる。
海外における先進的なモバイルアプリの使い方が、日本でもこれから普及してくるだろう。通信インフラの5Gへの移行でリッチなコンテンツが主流になる時代が目の前に迫っているのも追い風だ。
実際に、楽天グループでは、すでにさまざまなシーンで、Rakuten Aquafadasが利用されていると岡崎氏は話す。
「楽天社内での活用も進んでいて、サービスでも婚活支援のオーネット、楽天市場における地方自治体ブランディング支援、雑誌の読み放題サービス『楽天マガジン』、楽天グループ最大のイベント『Rakuten Optimism』・楽天の技術を紹介するイベント『Rakuten Tech Conference』の来場者向けアプリ、Mobile World Congress出展時の楽天ブース紹介用資料のアプリ化などで活用されています。モバイル事業への進出を進めるグループ事業との親和性も高く、そこで活用された技術・運用のノウハウも随時製品に反映されていきます」
Rakuten Aquafadasは、デザイナーがプログラムレスでアプリ開発を容易に行えることが特長だが、日本では企業内にデザイナーを抱えている企業はそれほど多くなく、販促ツールは外部委託するというケースが多い。そのためRakuten Aquafadasの販売展開については、ツールを提供するという形態だけではなく、パートナーの制作会社とともにコンテンツ制作やアプリ開発をパッケージで提供し、ユーザーの問題解決を図っている。例えば、ライセンス費用、アプリ開発込みで100万円以下というお試しプログラムも用意している。
モバイルアプリを、先端のブランディングツールとして活用し、顧客とのリレーション強化を図りたいと考えている企業は、Rakuten Aquafadasを検討してみてはいかがだろうか。