「つなげる」を諦めない第3の選択肢HD-PLCいつでもどこでもネットを身近に

 2006年に登場したHD-PLC™※が、地下や屋外、工場や倉庫といった今までインターネットが届かなかった場所の救世主として注目を集めている。発売から15年、HD-PLCはどんな変化を遂げてきたのだろうか。

 HD-PLCは、電力線を通信線として利用する技術だ。当初は家庭用として導入を進めていたが、同時期にWi-Fiの整備が急速に拡大したこと、有線LANのような高速通信に対応していなかったことなどの理由から、普及には至らなかった。

 多くの新技術は、この段階で「過去のもの」になってしまいがちだが、HD-PLCは違う。2018年に発売したPLCアダプターに「マルチホップ機能」を搭載。その結果、長距離通信、分電盤を跨いだ通信が可能となりオフィスビルや工場といった現場におけるインフラとして進化を遂げた。

 以前のHD-PLCは、親機と子機を1対1で接続する必要があり、離れた場所にある子機には通信が届かないといった弱点があった。しかしマルチホップ技術では、子機が中継機の役割を果たし、バケツリレー式にネットワークを構築することが可能。最大10ホップで2キロメートル先まで通信できるなど、長距離通信を実現する。これにより、大規模工場など広範囲な場所でのネットワーク構築ができ、加えて、既設の電源線を活用できるため、工事範囲を最小限に留められるなどのメリットを持つ。

マルチホップ技術では、子機が中継機の役割を果たし、バケツリレー式にネットワークを構築できる
マルチホップ技術では、子機が中継機の役割を果たし、バケツリレー式にネットワークを構築できる

 既設の電源線を活用するメリットはほかにもある。配線工事コストを大幅に削減でき、これに伴う工期の短縮、軽量化にも結びつく。Wi-Fiでは、壁や階段など、建物の構造が通信を左右することもあるが、電力線の届く場所であれば、安定した接続を維持する。電気工事とともに通信工事を一度に工事できるため、現場で作業を担う工事関係者のスケジュール調整にも役立つ。

「HD-PLC」 対応 PLC アダプター。屋内専用、屋外専用があり、それぞれコンセントタイプと端子台取付タイプがラインアップされている
「HD-PLC」 対応 PLC アダプター。屋内専用、屋外専用があり、それぞれコンセントタイプと端子台取付タイプがラインアップされている

電波法の省令改正が後押し、人手不足解消の一助にも

 B2B市場への普及には、電波法の省令改正も後押しする。6月30日にはHD-PLCで通信できる範囲が大きく拡大。主に工場などで利用される600V以下の三相3線での使用が可能になったほか、鋼船での利用が許可された。鋼船という移動体での利用が認められたのは初めてのこと。これにより活躍の場が大きく広がったといえるだろう。

 実はこの鋼船での使用許可が、労働力不足解決の一翼を担うとの見方がある。船舶業界は、約4割が船員の確保に困っているというデータがあり、人手不足に悩む業界の1つだ。一度乗船すると何日かは航海が続くというのが一般的なサイクルだが、航海中は陸地から離れてしまうため、スマートフォンが使えない。労働力として確保したい若年層は、スマートフォンが使えない場所で働くことの抵抗感が大きく、解決しなければならない問題の1つが、船内におけるネットワーク環境の構築だという。

 日本国内の貨物輸送に使用される内航船は、沿岸部を航行することが多いため、甲板では陸上からの携帯電波を受信することが可能。しかし、外からの電波は船体が跳ね返してしまうため、窓のない船内には電波が届きにくく、携帯電話のサービスエリアになっている海域でも電波の受信が困難というのが今までの内航船における電波の受信状況だった。

 船内はスペースが限られており、大規模な工事などはしにくい環境。ただし、電源線は確保しているため、そこにPLCアダプターを取り付ければ、船内でのネットワーク構築が可能になる。甲板で陸上からの4G電波を受信し、甲板からはHD-PLCを使い、既設電源線を通して、船内の各居室と通信。船内のさまざまな場所でネットワークが使えるようになる。

 船内のように「諦めていた場所でのネットワーク構築」はある意味HD-PLCが得意とする部分だ。某鉄道会社では、ホームへの防護柵設置に合わせ、監視カメラの設置を検討していた。監視カメラ設置には有線LANの工事が必要になるが、従来の方法では、100メートルごとにHUBを設置し、さらにLANケーブルのモジュラー部の施工が必要になるなど、時間と工数がかかることが課題になっていた。

 そこで、HD-PLCを導入することで、100メートルごとのHUB設置とLANケーブルのモジュラー部施工を代替。通信専用の電力線を敷設できたため、従来の電気工事で複数台のカメラの設置が可能になったという。映像送信専用の電力線を新たに敷設という工事になったが、LAN配線の敷設に比べ簡単かつ短工期で工事が完了したという。

 改修工事をしづらい場所での工事にも向く。長野県駒ヶ根市にある旅館「山野草の宿二人静」は、昨今、旅館でも必須サービスの1つとなってきたフリーWi-Fiの導入に踏み切ったが、歴史ある建物のため、1~5階の縦配線によるLAN工事では費用負担が大きく、施工は難しいと判断。そこで、電力線を使って各フロアにPLCアダプターを取り付け、Wi-Fi環境を整えた。既設の電力線を使用するため、縦配線の工事がいらず、施工の負担を軽減。ネットワーク環境を考慮していなかった建物においても、最小限の工事で収められたとしている。

旅館「山野草の宿二人静」。各フロアの廊下天井にアクセスポイントを設置
旅館「山野草の宿二人静」。各フロアの廊下天井にアクセスポイントを設置

 複数の居室に分割してインターネットを届けることもできる。名古屋大学の学生寮では、リモート授業の増加にともない、従来の電話回線によるVDSLから、ネットワークの強化が求められていた。光ケーブルでは約2週間、有線LANでは約1カ月が工事期間として必要となり、早急な改善を求める学生たちの要望には応えられない。

 そこで、約2~3日で工事が完了するHD-PLCを導入。既存電力線の活用により、工事費用も抑えられ、ランニングコストも3%程度に抑制。PLCアダプターの発注から工事完了まで約3週間という短工期を実現した。

 導入した戸数は137戸。HD-PLCでは、電波法の規制上出力制限があり、通信速度の実効値は最大値20Mbps程度。これを導入する戸数で分割すると超低速になってしまうが、今回は複数のHD-PLCの系統を形成し、最大7戸で20Mbpsを使用できるようにし、15~20Mbps程度の通信速度を確保できたという。

名古屋大学学生寮外観
名古屋大学学生寮外観
名古屋大学の学生寮。各居室に安定した通信環境を構築できた
名古屋大学の学生寮。各居室に安定した通信環境を構築できた

屋外にも広がる導入事例、諦めていた場所にも

 屋外での導入も進んでいる。⾧崎県にある全⾧7460メートルの新⾧崎トンネルは、携帯電波も無線も届かず、外部との連絡手段として、ネットワーク環境の構築が望まれていた。しかし、長距離のLAN工事は工事費用の負担が大きく、またLANケーブルの短期間での環境劣化による通信不良も予想されていた。そこで、現場事務所まで引き込まれていた光ケーブルをトンネル入口に設置したマスターボックスまで延長し接続。そこから200メートル置きにターミナルボックスを配置し、計18台のPLCアダプターで4000メートルの通信可能エリアを確保した。

 有線LANの⾧距離工事の削減に加え、LANケーブルは数カ月程度で劣化するという課題もあったが、HD-PLCがこの課題を解決し、トンネル内と外部との連絡網を構築した。

新長崎トンネル
新長崎トンネル

 今までネットワーク環境が不要とされた場所での導入事例もある。北海道の牛舎「有限会社ドリームヒル」では、牛の行動や健康管理に関するデータの収集のため、牛にセンサーを取り付け、そのデータを牛舎ごとに集約して受信機で受信、データを管理室で一括管理してクラウドに上げるシステムを構築している。

 牛舎間のネットワーク配線は費用と工期の両面から負担が大きく、約1キロメートルにおよぶ⾧距離での配線が必要、かつ安定的な通信環境を保持したいと、課題は多かったが、牛舎入口の分電盤に設置しているPLCアダプターを設置し、有線LANでデータを送信。電力線を活用することで、ほかの無線通信との干渉や障害物による電波遮断もなく、安定的な通信を可能にしているという。

北海道の牛舎「有限会社ドリームヒル」
北海道の牛舎「有限会社ドリームヒル」

 いずれも、有線LANによる長距離配線が難しかったり、Wi-Fiが届かなかったりと、諦めてしまいがちな現場だが、HD-PLCという選択肢が解決策となって、ネットワーク環境の構築に役立っている。

 スマートフォンの使用が当たり前になり、デジタルカメラ、照明、スピーカーなどありとあらゆるものがインターネットにつながるようになった昨今、インターネットにつながる場所の拡大も求められている。しかし、ネットを想定してなかった建物や通信しづらい場所は数多く存在する。届かない、工事ができないと諦めてしまう前に、Wi-Fi、有線LANに続くHD-PLCという第3の選択肢を検討してみてほしい。

※パナソニックが提唱する高速電力線通信方式の名称で、日本およびその他の国での登録商標もしくは商標。
画像提供:パナソニック株式会社
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提供:パナソニック株式会社ライフソリューションズ社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2021年11月30日

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