セガとマイクロソフトが明かす「戦略的アライアンスの検討」の真の狙い点ではなく“全方位”の連携を目指す

 2021年11月に、セガとマイクロソフトが次世代のゲーム開発に向けて戦略的アライアンスの検討に入るというニュースがゲーム業界を駆け巡った。さまざまなクラウドゲームが登場し、ゲームそのものの在り方が変わる中、またオンラインの先にメタバースという新しい世界観が見えている中で、このビッグネーム2社がこれから何を仕掛けようとしているのかに注目が集まっている。

 ただし、このアライアンスについて具体的な中身は発表されておらず、2022年に入ってからもマイクロソフトによるアクティビジョンの買収をはじめ、ゲーム会社の大型買収が続いたことも影響し、市場では両社の連携に関してさまざまな憶測が飛び交っている。

セガ 取締役副社長の内海州史氏(右)、セガ 上席執行役員の瀬川隆哉氏(左)と、日本マイクロソフト ゲーム&エンターテインメント営業本部 本部長の米倉規通氏(中央)
セガ 取締役副社長の内海州史氏(右)、セガ 上席執行役員の瀬川隆哉氏(左)と、日本マイクロソフト ゲーム&エンターテインメント営業本部 本部長の米倉規通氏(中央)

 そこで、両社のキーマンであるセガ 取締役副社長の内海州史氏および同社 上席執行役員の瀬川隆哉氏と、日本マイクロソフト ゲーム&エンターテインメント営業本部 本部長の米倉規通氏に、両社が戦略的アライアンスの構築を目指す真の狙いや、現在の進捗について話を聞いた。

次世代ゲーム開発にマイクロソフト技術の採用を検討

 現在セガは、中期計画において「SuperGame」という大型グローバルゲームタイトルの創出を掲げている。SuperGameはビジョンやコードネームであり、特定メーカーのゲーム機器に縛られないクロスプラットフォーム仕様のもとで、オンラインのプラットフォーム上にコミュニティを形成するような、新しいジャンルのゲームとなるようだ。規模としてはMAU(月間平均ユーザー数)が5000万人超、ライフタイムでの売上1000億円超のビッグタイトルの創出を目標に、2026年の発売を目指して現在企画構想中だという。

 先般発表された合意の中身は、このSuperGameの開発に向け「マイクロソフトのクラウドプラットフォーム『Microsoft Azure』において同社の様々な技術を活用してタイトル開発を進めていくこと」と、「マイクロソフトが保有するソリューションを活用しセガの次世代開発環境の構築を進めていくこと」を主軸とする戦略的アライアンスの検討を進めていくというものだ。

 すでに両社間では、「ファンタシースターオンライン 2(PSO2)」を始めとするゲーム案件で、Azureなどマイクロソフトの技術を採用したり、セガのゲームタイトルをXboxやWindows上で発表するなど、良好な関係が構築されている。今回の合意は、その関係性の中から、米国のマイクロソフト本社も交えた形で、セガ内海氏・瀬川氏への働きかけによって実現したのだという。

日本マイクロソフト ゲーム&エンターテインメント営業本部 本部長の米倉規通氏
日本マイクロソフト ゲーム&エンターテインメント営業本部 本部長の米倉規通氏

 アライアンスを模索するにあたり、マイクロソフト側としては、セガのビジネスを「点ではなく全方位で支援させてほしい」(米倉氏)という想いがあるという。セガのSuperGameに対して "点" で技術支援するのではなく、このパートナーシップを通じて "線" で支援していく。同時に、「マイクロソフトがゲーム・エンタメ業界にもっと貢献できると思っている。セガ様と協業して一緒に成功体験を構築していきたい。それをショーケースとして業界に発信し、他のゲーム・エンタメのメーカー様にもサービスとして提供していければ」と米倉氏はこのアライアンスに込める想いを語る。

ゲームの「エコシステム」が大きく変わっている

 一方セガには、60年にわたる企業の歴史とゲーム開発の実績があり、その過程で数々の先進的なチャレンジを重ね、成功も失敗も併せ呑んで成長してきた歴史がある。セガとしては得意とするゲーム開発力を磨き上げると共に、他社とも積極的にアライアンスを模索していく方針にシフトしてきている。

 これからのコンシューマーゲームでは、パッケージ型からサブスクリプション型のビジネスモデルへの移行や、AIやクラウドといった変化の速いテクノロジーへの対応、オンライン化で必要となったセキュリティ対策といった様々な新しい知見が求められる。オンラインやメタバースといった新しい世界観やトークンエコノミーによるゲーム内経済圏が登場し、ユーザーの遊び方や行動様式も進化している。それらへの対策を1社の技術力で賄いながら、時代が求めるゲームタイトルを開発し続けていくのは長い歴史と高いゲーム開発力を持つセガといえども厳しい。それだけ今のゲーム業界は大きく動いているのである。

 「世界の総ゲーム人口は今後40億人にも届くであろうと言われる中で、昨今ゲームのエコシステムが大きく変わってきている。その流れに対応していくためには、自社で育ててきたリソースだけでは間に合わない。マイクロソフトのようなゲームのプラットフォームとクラウドインフラ、デジタルテクノロジーを持っている企業と協力していくことが、今後のセガの成長につながる」と内海氏は胸の内を語る。

セガ 取締役副社長 ゲームコンテンツ&サービス事業本部長 兼 編成局長の内海州史氏
セガ 取締役副社長 ゲームコンテンツ&サービス事業本部長 兼 編成局長の内海州史氏

 SuperGame構想を推進するキーマンである瀬川氏も、「これからのゲーム作りは最新のテクノロジーとセガの発想力が重なって新しいエンターテインメントを生み出す形になるが、テクノロジーの部分はテックジャイアントと組んでいかないと厳しい」と明かす。

 現場としては、次世代のゲームに必要なユーザーデータの管理や収集、AI活用やセキュリティ対策といったインフラ構築の部分はマイクロソフトに代表される高い技術を持つパートナーとアライアンスを結ぶと共に、ゲーム作りにおける尖った感性や培ってきたノウハウといったリソースを、その楽しさの追求や感動体験の創造というコンテンツ開発の部分に集中させ、新たなプレイヤー体験をともなったグローバルで勝負できるタイトルを生み出したいという考えである。

「ゲーム」と「コーポレートIT」の両視点を持ったマイクロソフト

 マイクロソフトがセガに対して提供できるリソースは、IT・ネットワーク・セキュリティなどのインフラとアプリケーション、開発関連のツール類および最新のデジタル技術。加えて、マイクロソフト自身がこの10年間で行ってきたデジタルトランスフォーメーションのノウハウも惜しみなく提供していくとのこと。更には、マイクロソフトがAzureをはじめとした自社ソリューションを使ってゲームビジネスを既に実際に行っている事実もこのアライアンスの大きな強みになる。これらが、両社のアライアンスがうまくかみ合う理由となっている。

 発表の通り、セガは今回のアライアンスで実現したい項目として、まずSuperGame開発を見据えたゲーム開発環境のモダナイゼーションを挙げている。直近の課題としては、社内の働き方やデジタル活用環境の改善が必要で、コロナ禍のハイブリッドワークで開発者が「ワークステーションをオフィスと自宅で2つ保有しているような状態」(瀬川氏)となっており、コスト面の問題に加えて、情報共有やデータ更新に関し時差や齟齬が出てしまうという問題があるという。

セガ 上席執行役員 ゲームコンテンツ&サービス事業本部 第3事業部長の瀬川隆哉氏
セガ 上席執行役員 ゲームコンテンツ&サービス事業本部 第3事業部長の瀬川隆哉氏

 それらの問題は、実はクラウドのAzure上にコラボレーション環境を含めたゲームの開発環境を置き、どこからでもアクセスできるようにすることで解消できる。ユーザーインターフェース(UI)が刷新され、さらに汎用ツールを使って開発を標準化することで外部からノウハウを持った技術者を採用しやすくなり、開発スピードが向上するという効果が期待できる。ここまでが当初の構想として想定されている領域で、おおよそ発表段階で語られている部分である。

 ただ、この構想には続きがある。セガとして、ゲーム領域以外にも、次世代開発環境構築の検討を進める過程で、日本、米国、欧州の主要な拠点でビジネスを進める中、「例えば、それぞれがマイクロソフトのインフラ環境下であるのにシステム間が連携していなかったり、情報セキュリティ対策がコーポレート方針とゲーム開発の実態で齟齬があったりするといった点で、事業運営上の問題が見えてきた」と内海氏は話す。

 ほかにもアライアンスの検討に向けて諸々の環境を見直す中で、コンテンツの流通面といったゲーム業界のアナログ的な課題をはじめ、将来予想される環境を見据えた際には、本質的な課題が見えてきているという。そのような課題解決のためには、マイクロソフトが保有する総合的な知見が役に立つと考えている。「アライアンスを検討していく中で、実はいろいろとつながっていることがわかった。いい気づきを得られたと思う」(内海氏)

 そこがまさに、マイクロソフトがいう「全方位のサポート」と合致する部分だ。セガとマイクロソフトとの親和性は、単なるクラウドテクノロジーだけではなく、その先にあるゲームビジネスの知見、業務系のアプリケーションサービス、他業界におけるDX支援実績も含めたところまでを網羅していることにある。マイクロソフトとの連携だからこそセガは「気づき」を得られ、対話の中で、すでにゲーム環境の構築にとどまらない変革(DX)への道筋が見えてきている。

 「開発環境のモダナイズ化を進め、ゲーム開発期間を短縮し、生産性を上げていく。開発費を抑えることで、利益を高めることができる。単に、SuperGameをクラウドでホストするだけの話であれば、競合クラウドベンダーと差別化はない。我々は、SuperGameだけでなく、会社全体のDXを支援していくことができる。それがマイクロソフトと連携する価値」(米倉氏)

技術提携で5年後にゲーム界をリードできる存在に

 現在、両社は週2〜3回ほどの頻度で現場レベルでのミーティングをしているとのこと。戦略的アライアンスの検討を発表したことにより、セガ社内では次なる挑戦にあたっての一歩目が踏み出しやすくなり、マイクロソフトとのコミュニケーションを通じて、変革を受け入れやすい雰囲気が醸成されているようだ。また上層部でも、「アライアンスが検討されている領域に限らず、両社が話をする機会は増えている」(内海氏)という。

 改めて両社の考えを整理すると、まずセガとしては今まで通りに尖ったゲームを作り、挑戦を続ける。それを効率的に、かつ企業全体の視点で俯瞰して見ても最適な形で進めていくためにアライアンスを活用する形だ。またそこからは、事業を創る側の理解と気づきから発生したトップダウン型のDXプロジェクトも始まっている。「来る5年は、グローバル規模でゲーム業界の潮目が変わる面白い時期になる。そこにセガもついていき、一部のエリアではリードもしたい」と内海氏は意気込みを語る。

 マイクロソフトとしてはDXによってSuperGameの開発だけでなく、ビジネス面でもセガを支援していく。それを成功させることによって、来るべき時代に向けてマイクロソフトのテクノロジーを活用したゲーム開発や、セキュリティ実装の流れを作っていきたい考えだという。

 「家庭用ゲーム機の『ドリームキャスト』に初めてモデムポートを搭載したセガと、『Xbox』で初めてLANポートを搭載してゲームのインターネット接続を定着させ、ゲームに革命を起こしてきたマイクロソフト。この両社が新しいオンラインゲームの在り方を考えるために手を組んでいるのは感慨深い」と、米倉氏は今回のアライアンスを検討することの重みを表現する。

 2021年11月の発表後、実際に周囲からの反響は大きかったという。アライアンス検討の目的は決して囲い込みではなく、今後もさまざまな企業と付き合っていきたいと両社は口を揃える。

 特にセガは昔から職人気質で独自路線の会社と見られがちだが、実はさまざまな技術を素早くキャッチアップし、柔軟に取り入れているのが実情と瀬川氏は話す。SuperGameの開発を前に同氏は、「自社にあるものと世の中にあるものを見極めつつうまく利用して、グローバルスタンダードな形でサービスを作っていく。幅広く一人でも多くのユーザーに届くゲームを開発したい」と想いを語った。

提供:日本マイクロソフト株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2022年6月30日

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