“技術書贈りおじさん”リベロエンジニア金子氏が描くエンジニアが自由に働ける世界

AIエンジニア、データサイエンティストがあらゆる業種の企業から引っ張りだこになるなど、専門的な知識や技術力をもつ人材に対する注目度はこれまでになく高まっている。その一方で、能力に見合った待遇が与えられず、スキルを磨くこともできず、本来のパフォーマンスを発揮できないまま不満を溜め込んでいるエンジニアが少なくないとも言われている。

そうした業界の問題を改善するべくエンジニアの自由な働き方を支援し、しかも一般的な水準より高い報酬を実現している企業がある。2014年に創業したリベロエンジニアだ。エンジニアがやりたい仕事をやれるようにする環境を整えているという同社では、なぜ高い報酬を設定できているのだろうか。また、どんな人が集まり、どのようなスタイルで仕事をしているのか、リベロエンジニア代表取締役の金子周平氏に話を聞いた。

実力あるエンジニアがソロプレーヤーのように活動

―最初に、金子さんが代表を務めているリベロエンジニアという会社について教えていただけますか。

リベロエンジニア 代表取締役 金子周平氏
リベロエンジニア 代表取締役 金子周平氏

 システム開発をメインにしている会社で、受託開発やエンジニアの派遣をしています。「エンジニアをもっと自由に」を会社の理念として掲げて、社員とフリーランスの「いいとこどり」と言いますか、両方の側面を持った新しい働き方を提案しています。

 僕自身、この業界で10年以上エンジニアの経験があるのですが、7割くらいのエンジニアはクライアントワーク、つまり技術支援の形で客先に常駐したりしながら仕事をすることが多いんです。そこには多重請負構造みたいなものがあって、それを改善しようと会社を立ち上げました。

 多くのエンジニアは給与が低いうえに、会社への帰属意識が求められたりする。そういうのはエンジニアの本質からかけ離れていると思っていました。技術面でのパフォーマンスをいかに高く発揮するかがエンジニアにとっては一番重要ではないかと。会社を離れてフリーランスとして活動すればいいのではという話もありますが、エンジニアが1人で仕事をしていくのは大変です。

 いざという時には、一緒に取り組める仲間も必要なんですよね。会社員も、フリーランスも、そのどちらにもメリット・デメリットがあります。なので、会社員というセーフティネットを持ちながらフリーランス的な動き方もできるプラットフォームを作り、エンジニアが自立したプレーヤーとして活動していけるようにサポートしたい。そういう仕組みを目指した会社です。

―リベロエンジニアでは、どのような方が、どんな風に仕事をされているのでしょう。

 エンジニアといっても、いろいろなタイプの人がいます。ソフトウェアサービス系のエンジニアもいれば、金融・業務系のお堅い開発をしている人、アプリ開発をしている人、あるいは組み込み、インフラなどを手がけている人もいて、みなさんそれぞれフリーランスとして独立して仕事していけるほどの実力をもつプロフェッショナルです。

 会社が仕事を調整し、メンバーの誰かにアサインすることもまれにありますが、社内では独立したプロジェクトがどんどん動いています。一般の会社にあるようなヒエラルキーみたいなものがほとんどなくて、1人1人がソロプレーヤーとして動いているイメージでしょうか。

 自分で他の企業から案件を獲得してきたり、自分が手がけているプロジェクトの開発メンバーやデザイナーを社内で募集して一緒に進めたり、リベロエンジニアというコミュニティのなかでつながってチーム的に仕事を回していたりもします。社内でビジネスアイデアを募集して、有望そうなアイデアには予算を付けて新しいサービスを立ち上げる社内起業のような動きもしていますし、副業も自由です。

 みんな個としての能力が高い自立したエンジニアですから、僕としてはみんなに技術に徹底してフォーカスしてもらいたいと思っています。ですので、リベロエンジニアはそういうエンジニアをマネジメントしていく、言ってみればエンジニアの芸能事務所に近いところがあるかもしれません。そもそもリベロエンジニアに集まってきているのは、会社員というより技術者でありたいと思っている人たちばかりなので、そういう感覚には共感してくれていますね。

自由に仕事しながら高い給与を実現できる理由とは

―高還元の給与体系も御社の特徴の1つかと思います。なぜそれを実現できているのでしょう。

 先ほど申し上げたように、ソロプレーヤーとしても活躍できるくらいの自立したエンジニアが揃っています。社内的にも社外的にもトラブル対応の手間が発生することが少ないので、非生産部門のスタッフの数や管理コストを抑えることができますし、それで結果的に給与として還元しやすくなるという、いたってシンプルな理由ですね。

 あとは、技術力の高いエンジニアですので、お客様との契約単価もそれなりに高く設定させていただけています。ここはエンジニアリング系の会社として本来あるべき姿でビジネスできているのかなと思っている部分でもあります。

―多くの企業においてエンジニアの待遇がそういった形で改善されていけばいいのですが。

 これから先、世界的にもテクノロジー重視の方向性がますます強まっていきますから、待遇を改善してエンジニアがいまよりもパフォーマンスを高められる環境にしていくのは当然の流れになると思っています。すでに米国ではエンジニアは子どもの憧れの職業になっていて、スター扱いされているような人もいるんです。

 しかし、日本は労働集約型のビジネスモデルで、個のパフォーマンスを発揮させることより、いかに頭数を集めてリスク少なく進めていくか、という考え方がすごく強い。だから僕としては、エンジニアがスタープレーヤー、あるいはタレントみたいな存在になっていかなければ、日本はどんどん世界に置いていかれてしまうのではないかと危機感を抱いています。業界の構造やそこにいる人たちの意識の改革、エンジニアに対する日本の社会全体の認識が変わってくれればいいなと思いますね。

―GAFAのような世界的なIT企業は、そもそも創業者がエンジニア出身だったりもします。そういう点でも日本とは違うところが多いと思うのですが、欧米と日本の差についてはどうお考えですか。

 極端にとがっている人を否定してしまう文化が日本にはあるのかなと思っています。そういう人材を扱いきれない社会なのかもしれません。反対に海外はスタープレーヤーに巨額投資するようなシステムがあるんですよね。お国柄もあるのかもしれませんが、日本もすでにデジタルネイティブの世代がどんどん増えているわけで、そうした子どもたちに対してこれからいかに投資していけるかが鍵になってくると考えています。

 そうは言っても、学校の先生が一律で子ども全員を教育していくことは難しいですし、エンジニアは専門職ですから、向き不向きもあって、誰しもができるものでもない。だからこそ、この分野に早いタイミングで投資すべきだと思っています。国としても未来に対してしっかりお金を使ってほしいですよね。

「中抜き構造」をやめ、「信用」に振り切って利益度外視で

―エンジニアのやりたい仕事ができる環境を作りつつ、しっかり会社として利益を出しているところも、より金子さんの発言の説得力を高めていると思いますが、どのように両立しているのでしょうか。

 自由に仕事をしていて高い給与が支払われるのって、矛盾していると思われるかもしれません。通常は会社が潤えばエンジニアが割を食い、エンジニアが潤えば会社が損をするはずなんです。どちらも潤うようなビジネスモデルは成立しないんじゃないかとよく言われます。

 ところが、リベロエンジニアでは会社としての利益も出ています。中抜き構造みたいなものを取り除き、高い技術力を持っているエンジニアに高い報酬を支払って、お客様に対して本来あるべきパフォーマンスを提供できるようにすれば、成立するんですよね。

 レストランで言うと「原価率」が高い状態なんですが、その分お客様にも喜ばれる。しっかり給与を支払うということは、エンジニアのモチベーションを高く維持できるし、本人が自己投資することもできて、それが成果につながるわけなので。

―多くの会社が「中抜き構造をやめる」ことをしないのは、いまのビジネスが成り立たなくなるからだと思いますが、改めて、御社がそれを実現できている理由はどこにあるのか教えてください。

 徹底して「信用」でやっているからですかね。信用に振り切って、ほとんど利益度外視で動いてるところもあります。ビジネスのお声がけをいただけるのも全部信用があってのことで、人づてでご相談いただくパターンばかりです。高い報酬と会社の利益の両立の話をしましたが、実を言うと、僕もそんなに細かく計算していません(笑)。

 ただ、信用は損なわないように、嘘をつかないように、ということだけ徹底して、ずっとやり続けてきたことで、いまこういう結果になっている。求人媒体にも一切出稿していませんが、それでも月に1人か2人ずつは純増しています。しかも、多くの技術者は前の会社ではセクションリーダーをしていたような、その会社にとっては辞められたら本当に困るだろうなという人たち。本当にありがたいことですが、まさに利益度外視で信用のみを追求した結果、そうなっているのかなと思います。

―企業から信用を得るためには、そのエンジニアが信頼に足る人物と金子さん自身も判断できないとなりませんよね。御社で働くエンジニアは、どういう人が望ましいと考えていますか。

 やっぱり自立している人ですね。たとえば僕はTwitterで会社の代表としての立場からいろいろ発信していますが、それを見て期待値の高い状態で連絡してきてくれるフォロワーの方も多いんです。でも、正直なところ、そういう人はリベロエンジニアにはなじまないかな、と思っています。

 僕は、ビジネスパートナーとして組んだらお互いのためになるかどうか、という目線で見ています。現在のメンバーの年齢層は下が24歳くらいで、一番上が42歳。平均年齢はだいたい30歳ですが、若い人でも、そうじゃなくても、自立している人。そういう人が会社に合うと思っています。

―通常の開発会社とは違った組織のあり方は、必ずしもメリットばかりではないように思うのですが、その点はいかがですか。

 会社への帰属意識みたいなものは一切求めていないですし、会社として何かを強制することもしていません。ですので、この会社だと給与面などの条件がいいし、居心地もいいから所属している、という考えのメンバーが多いかもしれませんね。

 ただ、何度も言っているように、自立した人でなければこういう環境って難しいと思うんです。入社後、誰もが最初は不安になるみたいですね。会社から何も言われないので。でも、しばらくするとその理由や意図がわかってくる。自分から動かなければ何も始まらないし、何も起きない。自分自身で考えてやっていかなきゃ、とメンタルチェンジされていく。その変化に対応できないときついと思います。

技術書をプレゼントしてエンジニアを支援する「技術書贈りおじさん」

―先ほどお話しされていたように、Twitterではアクティブに情報発信されています。

 エンジニアリング業界を変えたいという思いで、現在では主に「技術書贈りおじさん」をやっています(笑)。2020年の初めからですので、もう1年3カ月になりますね。

 ZOZO(旧スタートトゥデイ)創業者の前澤さんがコロナ禍で大変な思いをしている方々を支援する動きがありましたが、そのときに多くのエンジニアやエンジニア志望の人が自宅で勉強する流れもあったので、僕らとしても技術書をプレゼントするという形で応援しようと考えたんです。

―技術系の書籍はけっこう値が張りますよね。

 いわば専門書ですから、1冊4000円以上することもあるんですよね。実は若手のエンジニアが会社に相談に来ることがよくあって、「技術書が高くて、給料も少ないから手が出ない」という話を聞いていたことも、この活動を始めたきっかけの1つなんです。給料を上げるためにも新しい技術を学びたい。でも学ぶためにはお金がかかる。卵が先か、鶏が先か状態になっていたんです。

 エンジニアとして大成するかどうかは本人の能力次第ですが、少なくともチャンスに対して不平等なのはおかしいと思い、そこで僕らができることが何かを考えたときに、技術書をプレゼントして支援することかなと。

―業界の多重請負構造を改善するという目的のために、エンジニア個人のスキルアップをサポートするという地道な活動もしているわけですね。

 多重請負構造のようになっていると、エンジニアが自分で主体的に動くことが難しくなります。会社・営業主導になって、自分の意思とは関係なく客先に常駐することになったり、正しい意味で技術者としてスキルを高めながらキャリアを積み重ねていくような働き方ができなかったりするんですね。

 ほとんどの場合は労働集約型のビジネスモデルで、いかに人を抱えるか、どれだけたくさんの若手の面倒を見ているかが会社の評価基準みたいになっているところすらあります。それだと数の商売になってしまい、会社としては利益が圧迫されるので、代わりに技術者の給料を圧縮することになる。そうした構造ゆえに、エンジニアは技術を高めていくという本来あるべき姿を目指せず、活躍もできず、給与も低いまま、という状態に陥ってしまっています。それでスキルアップも図れない。

―エンジニアをリスペクトして、しっかり評価することで、質の高いプロダクトを次々に生み出しているような企業もありますが、それは一握りだと。

 そういう企業はおそらく上位1~2割の企業だけです。他の多くのエンジニアはベンダー側に常駐するなどして、いま言ったような問題を抱えています。エンジニアの中でも極端な二極化が起きてしまっているんですよね。

 エンジニアってパソコンが1台あればなれることもあって、気軽にこの世界に飛び込んでみようと考える人も多いと思います。ですが、そういう人たちがいきなり最先端の現場、日本や世界のITトレンドを引っ張っているような会社で活躍するのはさすがに難しい。そうなると、エンジニアの仕事とは言いにくい、誰でもできるような「IT事務」的な仕事をすることになってしまいます。

―今後エンジニアがあらゆる産業で重要視されるようになるとすれば、経営者も考え方を変えていく必要がありそうですね。

 おっしゃる通りです。これから先、社会を前に進めていくための原動力はIT分野にしかないと言ってもいいくらいです。そのIT分野を成長させるのはエンジニアなんですよね。であれば、エンジニアがいかにパフォーマンスを発揮しやすい状況にしてあげられるかが肝になってきます。いままさに、ここは力を入れて解決しなければいけない分野だと思っています。

 僕らのようにエンジニアファーストの考えで、少しでも待遇を良く、給与を高く設定して、やりたいことをやれるようにと頑張っている会社も増えてきているとは思います。ただ、そういう会社の存在はあまり世の中に知られていません。ある意味、打ち上げ花火が上手なところは話題になって世間に広く知られるけれど、開発会社として本質的なところを突き詰めていくほど地味になって目立たないというか……。そこは僕らも含めて苦労しているところですね。

エンジニアのやりたいことがやれるプラットフォームに

―2020年10月に社名を変更し、2021年5月で創業から7年になります。会社として新しい段階を迎えるタイミングですね。

 リベロエンジニアは、僕がエンジニアだった頃に嫌だったことをやらずに済み、自己実現もできる会社にしたいと思って運営してきました。報酬が安いなら報酬を高くしよう、やりたいことがやれないならやりたいことやれるようにしようと。そして、普通のエンジニアリング系の会社ではできそうにないこともどんどんやっていこうと思っています。

 やろうと思えば会社というコミュニティの中で仲間を募れるし、予算を立てて新しいサービスを立ち上げることもできる。自分次第でなんでもできる、という土俵がまさに整いつつあるところです。自己実現がしやすいこういったコミュニティを、これからもっと広げていきたいですね。

 たとえば最近では、子ども向けのプログラミング教材をオンライン化するシステムを作ったり、ゲームデザイナー向けのマッチングサイトを開設したり、ITとは関係ないキャラクタービジネスを始めたりしています。

 その1つが調味料の擬人化プロジェクトなのですが、実際にプロの漫画家さんにビジュアルを作ってもらって、SNSなどで毎週漫画やコラムを更新していたりします。そういうものが立ち上がっていくのを目の当たりにすると、いい意味で「本気でこれをやったか!」みたいな感慨があるんですよね。

リベロエンジニアが独自に始めた調味料の擬人化プロジェクト
リベロエンジニアが独自に始めた調味料の擬人化プロジェクト

 メンバーには何でも好きなことをやっていいと言っていますが、エンジニアリングとは全く異なる方向性で、誰かの強い思いでプロジェクトが動き出しているのを見ると、本当に嬉しい。小さな経済圏みたいに、このコミュニティの中と外でお金を回せていることが僕の中で達成感があるというか、これが会社の根幹なのかなという感じがします。コンテンツの中身はなんでもいいんです。この会社が、そんな風にやりたいことがやれるプラットフォームとして機能しているのが、とにかく嬉しいんですよね。

―最後に、読者にメッセージをいただければ。

 技術書のプレゼントは毎月実施しています。2021年5月で16回目を迎え、これまでにトータルで300冊はプレゼントしてきました。Amazonで買える5000円以内のものという基準はありますが、エンジニアリングに関係している書籍であればどれでもOKというルールで配っています。この活動は今後もずっと続けていきたいと思っていますので、エンジニアの方、エンジニアを目指している方は、ぜひ僕のTwitterアカウントをチェックしていただければ。

インフォメーション

More freedom for Engineers.エンジニアをもっと自由に。
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エンジニアをもっと自由に。
提供:株式会社リベロエンジニア 
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2021年11月30日

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