
2022年11月にOpenAIの「ChatGPT」が発表された以降、世界中が生成AIをいかに活用するかに注目が集まっている。生成AIを活用したクラウドサービスが次々と誕生し、ビジネスだけでなく、クリエイティブな作業やプライベートでの活用が進んでいる。
そうしたなか、AIを専用に処理するNPU(Neural Processing Unit)を内蔵したCPUが登場。AIを処理するには、CPUよりGPUのほうが得意で、これまではもっぱらGPUに頼ってきた。それが、GPUより効率よく処理するNPUの登場で、より身近にAI処理が可能となり、クラウド一辺倒だった生成AIの世界もローカルで処理するという流れになりつつある。
ローカルで処理することのメリットとしては、タイムラグの少ないリアルタイムな処理を可能にしたり、生成AIを利用するために必要な情報をクラウドへアップロードせずに済むため、データの情報漏洩や生成AIへ活用されるリスクを軽減できることだ。
NPUを内蔵したCPUは、インテルが一昨年前にインテル® Core™ Ultra プロセッサー(シリーズ1)を発表。昨秋には最新CPUであるインテル® Core™ Ultra プロセッサー(シリーズ2)を搭載したマシンが続々と登場している。
今回紹介する「Lenovo Yoga Slim 7i Aura Edition , imagined with Intel」もその1つで、大画面でありながら薄くて軽く、インテルの最新CPUであるインテル® Core™ Ultra プロセッサー 258Vを搭載。マイクロソフトが提唱する「Copilot+ PC」に準拠し、ローカルでのAI処理をいちはやく体験ができる。そんな本製品をレビューしていこう。
まずは外観から見ていこう。15.3型という大画面液晶を採用しながら、最薄部は約13.9mmと非常に薄く、重さは1.53kgを実現している。このサイズとしては軽く、薄くて持ち運びやすいので、モバイルワークもこなせるモデルと言える。
画面はPureSight Proと呼ばれる15.3型2.8K解像度(2880x1800ドット)のIPS液晶パネルを採用。グレア仕様で発色がよく、色域はsRGB、DCI-P3いずれも100%で、HDRと高色域を組み合わせた視覚体験が得られるDolby VisionやHDR400に対応。色差の測定範囲はDelta E<1の精度で調整されており、クリエイティブユーザーも活用できる仕様となっている。
しかもグラボレスなのだが、CPU内蔵GPU「Intel Arc Graphics 140V」の性能は、これまでのCPU内蔵GPUに比べても非常に高く、ビジネスはもちろんクリエイティブな作業もこなせる。
実際に、ミラーレス一眼で撮影した写真をAdobe「Lightroom Classic CS」で読み込んで現像作業をしたが、動作がサクサク快適。15.3型で2.8K解像度の画面だと、Windowsの画面スケールは200%推奨だが、150%にしても文字が認識できるレベルなので、作業領域も広く使えて作業しやすい。
また、画面は10点マルチタッチスクリーンのため、指でのタッチ操作が可能。色味の調整などは、マウスカーソルでの操作より直感的にサクサク調整できるので、作業も素早く行える。右クリックメニューも画面長押しで現れるので、非常に快適だ。実は筆者タッチ画面でLightroom Classic CSを操作したのは初めてだったが、マスクの指定も指で微妙な塗りもこなせるし、作業効率が良く、これからはタッチ操作で作業したいぐらい感動した。
さらに、画面のリフレッシュレートは120Hzなので、スクロールが滑らか。拡大した写真をスクロールしてもヌルヌル動くので、見やすいし目も疲れにくい。ちなみに、TÜV Low Blue LightおよびEyesafe認証も取得しているので、ハードウェア的にも目の疲れを軽減する仕様になっている。
CPUは冒頭でも述べたように、インテル® Core™ Ultra プロセッサー 258Vを搭載。4つのP-coreと4つのLPE-coreの合計8コア/8スレッドで最大動作周波数は4.8GHz、NPUは最大47Topsの処理が可能となっている。
CPUとしても高性能でありながら、NPUを使ったAIによるパフォーマンスの最適化により消費電力を抑えられ、最大22.4時間(公称値)のバッテリー駆動が可能。これだけもてばモバイルワークでも電源いらずで持ち運べる。
しかも32GBのLPDDR5x 対応メモリーを搭載するのでアプリ動作も余裕。ストレージも1TBのNVMe SSDなので、すぐに逼迫する心配はない。
実際に1日持ち歩いて使ってみたが、撮影した写真を現地で取り込んだり、Lightroom Classic CSで多少写真現像したり、Wi-Fiのあるところでネットを徘徊しつつ原稿を書くなどしてみたが、朝100%のバッテリー容量で外出し、晩に戻った際は40%弱のバッテリー残量だった。
作業する際にキーボードを触ってみたが、フルサイズでキーストロークが1.4mm確保されており、しっかりと打鍵感があり、それでいて静音だ。キー配列もクセがなく、筆者のような「かな入力」ユーザーでもすんなりタイピングできるだろう。キーボードバックライトの明るさは消灯を含め3段階調整できるので、バッテリーの状態に合わせて調整できるのも嬉しい。
タッチパッドは80mm×135mmと非常に大きく、指触りはとても滑らか。キーボードのホームポジションに指を置いたまま、親指でクイクイっと操作できるのもいい。画面タッチのほうが操作は楽なときもあるが、極力手の動きを少ない状態で作業を進めたいときは、タッチパッドで楽に作業を進められた。
また、インターフェースがUSB-CだけでなくUSB-Aも備えているのがありがたい。最近はUSB-Cだけに絞っている製品も少なくないが、USB-A端子のアクセサリーをまだまだ使用しているので、変換アダプターを介さずに使えるのがいい。HDMI端子も備えているので、会議室のディスプレイに投影する際も手間を掛けずに接続できる。
本製品は、「Aura Edition imagined with Intel」と名付けられているとおり、インテルとの協力により、さまざまなアプリ機能が搭載されている。
その1つが「Smart Share」アプリ。あらかじめ「Intel Unison」によってスマホと連携(スマホ側にもIntel Unisonアプリのインストールが必要。iOS/Android版あり)しておくと、F11キーを押すだけで、スマホで撮った最近の写真や動画へ簡単にアクセスでき、ドラッグ&ドロップによって、スマホからパソコンへ簡単にコピーできる。
たとえば、スマホで撮影した写真をAdobe「Photoshop CS」でレタッチしたいといった場合、写真を転送する手間暇かけずに作業できる。意外とスマホからパソコンへの転送は面倒で、クラウド経由だったりUSB経由だったり、一手間二手間の作業工程が必要だった。それが、ボタン一つでSmart Shareアプリが起動し、必要な写真をドラッグ&ドロップで済むのは、まさに神である。
ほかにも、「Smart Modes」では、F9キーを押すと起動しているアプリによって最適なパフォーマンスの設定に調整してくれる(設定でシナリオモードを自動にした場合)。ウィジェットに表示されるスマートモードには、オンラインセキュリティの強化や通知の消音、ビデオ会議などのコラボレーションでWindowsのビデオエフェクトのオン/オフ、目の休憩を促す機能、電源モードを自分で指定する、といったことが可能だ。
このあたりも、面倒な設定をひとまとめで確認してチェックするだけだから非常に楽。強制的に省電力にしたいといったときも、2アクションでできる。
本製品を実際に使ってみて、まず画面が大きいと見やすいし、タッチ操作が可能だと作業効率が上がるし、とてもクリエイティブ向きのマシンであると感じた。そして、NPUが搭載されていることで、たとえばCPUだと負荷のかかっていたビデオエフェクトなどもNPUで処理することで、CPUに負荷をかけず、しかも消費電力も抑えられるというメリットがある。
まだ、NPUを使ってAIを処理するアプリが少ないが、今後多数登場する予定なので、いまのうちに本製品のような高性能なNPU搭載マシンを購入すれば、即AIパソコンの力を体験できる。加えて、グラボレスでもクリエイティブな作業ができることは、消費電力が抑えられバッテリー駆動時間が長くなるので、モバイルワークでも作業が捗る。
高性能で薄軽ながら、価格も25万円切りとコスパもよく、クリエイティブな作業を中心にモバイルパソコンを考えているならLenovo Yoga Slim 7i Aura Edition Gen 9を選ばない手はない。