ハイセンスジャパンが、家電のオールラウンダーへと変化を遂げようとしている。テレビメーカーとして日本に上陸したのが2010年。スタンダードクラスからスタートしたテレビのラインアップは、ハイエンドクラスの有機ELテレビ「E8000」、液晶テレビ「E6800」まで含め、4Kモデルだけで4シリーズ7機種にのぼる。ハイエンドモデルのE8000は、新BS/CS 4Kチューナーを内蔵し「レグザエンジンNEO plus」などを搭載。日本市場にマッチした画質、機能を積極的に採用し、2018年度の市場シェアは約9%に達した。
2015年からは、拠点とする中国で高い人気を誇る冷蔵庫、洗濯機といった白物家電の日本市場投入も決定。2019年3月からは、エアコンの取り扱いも開始した。参入障壁が高いとされる日本市場において、積極的な投資を続けるハイセンスジャパンの見据える先はどこか。ハイセンスジャパンを率いる代表取締役社長李文麗氏のインタビューと、日本向けモデルの生産拠点にもなっている中国青島工場の様子、日本では未発売の最新モデルがそろう本社ショールームなどから、中国の電気メーカーハイセンスの現状を探る。
ここでは、ハイセンスジャパン率いる代表取締役社長 李文麗氏のインタビューを紹介する。
日本は技術面、品質面で大変厳しい市場です。ハイセンスは世界130の国と地域で事業を展開していますが、ここまでの高い品質を要求されるのは日本の特徴です。製品の品質はもちろん、梱包材の破損や汚れがないよう、気を配るのは、他国にはない特徴です。日本市場は海外ブランドにとって参入障壁の高い国の1つだと思います。
高い品質が求められると同時に、国内外の家電メーカーも増え、今後数年間はかなり激しい競争が予想されます。これまでは、日本の国内大手メーカーが確実にシェアを取っていましたが、今後競争が激しくなる中で、シェアの割合も変わってくるでしょう。
――ほかの国とは異なる厳しい要求が、日本市場ならではの大変さでしょうか。細部に至るまでのこだわりに対応するのはもちろん大変でしたが、ハイセンス全体のクオリティアップと考えて積極的に吸収しています。むしろ、大変だったのは、日本進出後の3年目くらいまでのスタート段階ですね。当初はブランドも浸透していませんでしたし、販売店からも存在が知られていない状況。スタートからの3年間はとにかくブランドを浸透させ、販売店からの信頼を得ることに力を注ぎました。
そこで、スタンダードモデルからテレビの販売を始めました。コストパフォーマンスの良さから若年層を中心に人気を獲得し、販売台数を積み重ねることで、ブランドの認知が進みました。現在は、スタンダードモデルを展開しつつ、ミドル、ハイエンド、フラッグシップとテレビのラインアップを拡大し、フルラインアップをそろえています。
――現在、ラインアップは強化され、かなりのボリュームになります。ハイセンスのテレビの強みは。日本市場にマッチしたモデルを開発、販売できているところだと考えています。日本のテレビメーカーは、ハイエンドモデルには数多くの機能を搭載していますが、ハイセンスでは、消費者に必要な性能とスペックをシンプルに絞り込み、適切な価格での販売を重視しています。
2018年2月には、東芝のテレビ事業を担っていた東芝映像ソリューションが、ハイセンスのグループ傘下に加わりました。これにより東芝の開発チームとともにテレビの開発を進めることが可能になりました。映像エンジン「NEOエンジン」はその特徴的なもので、東芝映像ソリューションと共同開発することで、ハイセンスならではの高画質を実現しています。
比較的順調ですが、ハードルは必ず出てきます。競合メーカーは多いですし、販路の拡大も必要です。変化する市場に対応するためには、私たちも常に成長し、勉強し続けなければいけません。変化のないところにはイノベーションは起こりません。
私たちの変化の1つに据えているのは、白物家電の導入です。ハイセンスジャパンは今でこそ約70名の従業員を抱えますが、日本進出当初は数名でスタートしています。リソースを集中するために、テレビに絞って展開してきました。
従業員も増え、日本市場での認知度も進んだ今、冷蔵庫、洗濯機、エアコンといった白物家電を導入し、ハイセンスの露出を高めています。中国市場でのシェアは、冷蔵庫がナンバー2、エアコンがナンバー4と高い人気を誇ります。
ただ、先程も申し上げましたが、日本は難しい市場なので、商品をそのままスライドするだけではだめだと思っています。日本は住宅事情もあり、圧倒的にコンパクトな商品が多いですから、サイズの見直しはもちろん、機能面でのブラッシュアップが必要でしょう。
例えば今、日本でも人気の高い洗濯機の洗剤自動投入は中国でも普及していて、定番機能になりつつあります。しかし中国で販売しているモデルは、どれも洗剤投入口が固定されていて洗浄できません。これはハイセンスだけではなく、ほかの中国メーカーも同様の仕様です。ここを取り外して洗浄できる様にすることが日本向けモデルに求められていることだと思います。
日本はほかの市場に比べて技術のハードルも高い。それを、できないで済ますのではなくて、日本基準を満たすことで、ハイセンスの競争力を高めていけるものと考えています。
ハイセンスは、1997年に三洋電機と提携し、インバーターエアコンを中国で初めて作ったメーカーです。その後も日立製作所と合弁会社を立ち上げ業務用エアコンを手がけたり、1980年台には、パナソニックのテレビの製造ラインを請け負ったりしたこともあります。そういう意味では、日本の電気メーカーと長くパートナーシップを築いてきました。そこで培ったノウハウをいかし、日本メーカーの品質に対するこだわりを取り入れていきたいと思っています。
――白物家電もテレビ同様、日本メーカーが強い市場だと思います。確かに日本メーカーのブランド力は偉大です。しかし、ハイセンスは日本市場にチャンスがあると考えています。なぜなら、市場のニーズに合った機能を搭載していれば、高価格でも売れるという事実があるからです。白物家電のラインアップはスタンダードからハイエンドまで、数多くあり、その中でハイエンドへのシフトが起きているジャンルがとても多い。
ただ、カテゴリーごとにラインアップをそろえるのは、体力がいります。利益率が低い事業であればなおさらでしょう。ハイセンスはこの部分こそ発展させていきたいと考えています。
――先程、販路も変化していくというお話がありましたが、この変化はどう捉えていますか。家電量販店は、お客様との重要な接点ですから今後もアプローチを続けます。一方で、日本におけるEC市場にも注力していきます。すでにEC向けの組織や人員体制も整えており、拡大していく準備は出来ています。EC市場については中国はかなり進んでおり、ここはハイセンス本社でもノウハウが溜まっていますので、その戦略をハイセンスジャパンにも活用していきたいと考えています。
日本の家電製品の基準が厳しいことは世界中で知られています。その日本品質を取り入れることで、中国メーカーの品質を高めていきたいです。これはハイセンスグループ周会長の主導で取り組んでいることです。
エアコンの導入をはじめ、日本市場における取り扱い商品の数を増やしていきたいと考えています。10月中旬には、シアターサウンドシステム「HS512/210」を日本で発売します。7月20日より好評の有機ELテレビ「E8000」、液晶テレビ「U7E/E6800」をご購入のお客様には、抽選で510名にシアターサウンドシステムをプレゼントする、大型キャンペーンも展開します。 [詳しくはこちら]
また中国では、TVチューナー付短焦点「レーザーTV」やスマートフォン、さらにはスマートホーム機器なども発売済みで、日本にはない魅力的なモデルを数多くそろえています。すべてを導入できるかは未定ですが、日本市場に合わせた展開をしていきたいと考えています。
われわれハイセンスジャパンでは来年10周年の大きな節目の年を迎えるにあたって3つの方針があります。
1つ目は「ハイセンスブランドの構築」。さまざまなマーケティング活動を通じて、Hisenseブランドの認知を高める。また、高品位製品の販売を通じて、信頼されるブランドとなること。
2つ目は「快適な生活提案」。ハイセンスはテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンを製造販売する総合家電メーカーとして、常に新しい技術を追い求め、より快適な製品、より感動を与える製品を生み出していくことにより、快適な生活を提案していく。
3つ目は「スタイリッシュなライフスタイルの提案」。より洗練されたデザインの採用により、“テレビも冷蔵庫も洗濯機もエアコンもHisense製品はかっこいい”“機能面でもスマートだ”という評価を得て、ユーザーからその製品でかっこいい生活スタイルをおくりたいと思われる製品を生み出していく。
そのために必要なことは常に顧客中心に製品開発、顧客サービスを考え続け、高いレベルのサービスを提供していくこと。
以上のことを通じて、これからの10年間、売上高で現状の10倍へのチャレンジ、マーケット金額シェアでTOPクラスを目指します。これからのハイセンスジャパンのさらなる活躍にどうぞご期待ください。