logo

G-SHOCKやデジカメなどのコア技術を応用「共創」で新事業を創出するカシオの挑戦

後編

「共創」による新規事業の創出に取り組む、カシオ計算機。スポーツ、ビューティーなど異業種とのコラボレーションが話題を集める一方で、デジタルカメラで培ったイメージング技術をはじめ、コア技術を生かした新たな事業の創出でも大きな成果をあげている。(前編はこちら)

メディカル事業画像変換技術を応用し、
医工連携で画像診断サポートシステム構築を目指す

 カシオが手がける新規事業の中でも特にその取り組みが進んでいるのが、デジタルカメラで培った画像変換、画像処理技術を応用したメディカル事業だ。2019年5月に皮膚科・形成外科向け「ダーモカメラ」を発売したほか、2020年3月には皮膚観察用の「ダーモスコープ」もリリース。さらにAIを用いた画像診断サポートシステムも、事業化に向けて研究開発が進められている。大学との共同研究から生まれた新事業について、事業開発センター DC企画推進部の北條芳治部長に聞いた。

カシオ計算機 事業開発センター DC企画推進部長の北條芳治氏
カシオ計算機 事業開発センター DC企画推進部長の北條芳治氏

メディカル分野に取り組むことになったきっかけを教えてください。

北條氏

 カシオはデジタルカメラに関して数多くの独自技術を持っていて、写真をアート風にする画像変換技術もそのひとつです。あるとき皮膚科の先生から、その画像変換技術が「ダーモスコピー」と呼ばれる皮膚の診断に使えそうだという話をいただいたんです。当時、自分の上司であった現社長に相談したところ、今ある技術をそのまま提供するのではなく、先生の要望にあわせて作り直すように言われました。そこでダーモスコピーの第一人者である皮膚科医の協力のもと、皮膚が観察しやすい画像変換技術を改めて開発しました。その技術がプロジェクトのベースになっています。

皮膚の薄皮のすぐ下にある皮膚内部の色や構造を撮影するのに必要な偏光撮影(左)、皮膚の表面の病変部を撮影するのに便利な非偏光撮影(中央)、偏光では浮き出てこない隠れたシミやぼやけたほくろなどの辺縁部がくっきり写るUV撮影(右)の3ショットをワンシャッターで撮影できる
皮膚の薄皮のすぐ下にある皮膚内部の色や構造を撮影するのに必要な偏光撮影(左)、皮膚の表面の病変部を撮影するのに便利な非偏光撮影(中央)、偏光では浮き出てこない隠れたシミやぼやけたほくろなどの辺縁部がくっきり写るUV撮影(右)の3ショットをワンシャッターで撮影できる

医療機器であるダーモカメラの開発は、どのようにスタートしたのですか?

北條氏

 当初は医療機器開発に必要な業許可もまだ取得していなかったので、まずはわれわれの画像変換技術を用いて、皮膚科医向けのダーモスコピー学習用サービスを提供するところからスタートしました。その過程で大学病院の先生方と連携することができたので、その先生方の協力のもと、半年後にはダーモスコピー用の撮影ができるダーモカメラの開発に着手しました。現在はダーモカメラとカメラから画像データを自動で取り込み、管理できるアプリケーションも提供しています。

現在開発中の画像診断サポートシステムは、どのようなものなのでしょうか?

北條氏

 ダーモカメラの開発を進める一方で、数多くの症例データをもとにAIを用いて画像診断をサポートするようなシステムを開発できないかと考え、信州大学と共同研究に取り組んできました。それが「イメージングデータを用いた皮膚がん診断ソリューション開発」として2019年、AMED(日本医療研究開発機構)の補助金交付対象となる「先進的医療機器・システム等開発プロジェクト」に採択されたプロジェクトになります。

 ダーモカメラで取り込んだ画像を管理アプリケーションを通じてクラウドに送り、AIによる画像診断サポートサービスを利用できるようにしたい。さらにそれらをグローバルにも展開していきたいと考えています。

皮膚科のほか、他の診療科向けにも同様のソリューションを横展開する予定はあるのでしょうか?

北條氏

 ダーモカメラのほか、すでに産婦人科向けに子宮頸がんの早期発見に役立つ「コルポカメラ」にも取り組んでいますし、歯科・口腔外科からも同様のニーズをいただいています。医療機器はコンシューマー向けの製品と異なり、マーケットが限られています。一方でカメラ開発には大きな投資が必要ですので、まずベースのユニットを作り、診療科ごとにレンズやライトの部分をカスタマイズできるようにすることで、効果的にさまざまな診療科への展開を図っています。

現在発売中のダーモカメラ「DZ-D100」とダーモスコープ「DZ-S50」
現在発売中のダーモカメラ「DZ-D100」とダーモスコープ「DZ-S50」

イメージングモジュールビジネスエンドポイントAI×画像処理エンジンをセキュリティ、
生体認証、センシングに応用

 メディカル事業と同様、デジタルカメラで培った独自技術を応用した新たな取り組みを進めているのが、元デジタルカメラ開発チームが手がけるイメージングモジュールのビジネスだ。ルネサスエレクトロニクスとの「共創」のもと、エンドポイントAIでの高速処理を実現する次世代の画像処理エンジンを開発中。セキュリティや生体認証、センシングなど、幅広い分野への事業展開を目指す。取り組みの詳細について事業開発センター イメージング企画推進部 松原直也部長に聞いた。

カシオ計算機 事業開発センター イメージング企画推進部長の松原直也氏
カシオ計算機 事業開発センター イメージング企画推進部長の松原直也氏

開発中のモジュールには、デジタルカメラで培ったどのような技術が応用されているのですか?

松原氏

 カシオでは1995年の「QV-10」以降、デジタルカメラをビジュアルコミュニケーションツールとして捉え、開発してきました。そうしたこともあって、かなりユニークな画像処理技術を持っています。言うならば、写真を記憶に近づけるための画像処理技術で、美顔や美白もそのひとつです。

 たとえば人間の目は優秀なので、明暗差の大きいシーンも明るく記憶していますが、これを写真で実現するには高度な画像処理が必要です。美顔や美白処理も同様に、目の精彩感を残しつつ肌をなめらかにするために高度な処理をしています。

 実はこの美顔、美白処理の技術は、すでにソフトウェアモジュールとして、スマートフォンメーカーへ提供しています。さらに、こうした高度な画像処理をAIのために応用することを進めています。エンドポイントでAIが認識しやすい画像処理やAIの推論実行を行う、ハードウェアモジュールの開発です。デジタルカメラで培った省電力技術や高速処理技術も応用し、クラウドを使用しないエンドポイントAIを実現するイメージングモジュールの提供を目指しています。

QV事業が作り上げた文化(市場)と技術
QV事業が作り上げた文化(市場)と技術

クラウドを利用しない、エンドポイントAIのメリットを教えてください。

松原氏

 クラウドに画像を送信するためにはデータの圧縮が必要となりますが、端末側ならRAWデータのまま処理できます。たとえば逆光の写真の暗い部分を明るく加工した場合、圧縮されたデータからとRAWデータからでは読み取れる情報量が違います。エンドポイントAIであれば豊富な情報量のまま認証が可能となります。またエンドポイントAIは高速なのはもちろん、大規模なシステムも必要ありません。

イメージングモジュールは今後、どのようなところへ提供されるのですか?

松原氏

 セキュリティ機器や生体認証を用いた決済機器、画像センシングによる点検用の機器など、様々な機器への応用が考えられると思います。これまでコンシューマー製品をやってきたので法人向けの事業は不慣れな部分もありますが、パートナーとともに、事業化を進めていきたいと思います。

スマートネジ事業「G-SHOCK」の技術を搭載したIoTネジで
社会インフラを支える

 2019年の中期経営計画で発表された新規事業とは別に、G-SHOCKとネジという非常にユニークな「共創」も進められている。それが「緩まないねじ」を手がけるNejiLawと取り組む「smart Neji」の開発だ。G-SHOCKで培った耐衝撃性、防水性、低消費電力といった技術を、社会インフラを支えるIoTネジに応用する。開発本部 時計開発統轄部 推進企画室 西尾豊一室長にプロジェクトの概要を聞いた。

カシオ計算機 開発本部 時計開発統轄部 推進企画室長の西尾豊一氏
カシオ計算機 開発本部 時計開発統轄部 推進企画室長の西尾豊一氏

プロジェクトの発端はどのようなものだったのでしょうか?

西尾氏

 NejiLawは特殊なネジ構造によって緩まないネジを発明された会社で、以前から、IoTネジの開発を構想されていました。実現のためには電子的な回路を組み込む必要がありますが、一般的なものではネジに要求される耐久性に応えられません。そこで先方がG-SHOCKの耐衝撃性や防水構造、低消費電力に着目され、声をかけていただいたのがきっかけになります。

smart Nejiの開発目的や狙いを教えてください。

西尾氏

 インフラの老朽化によるさまざまな事故がニュースを賑わせていますが、こうした事故を未然に検知できないかということが前提としてあります。特に日本では、道路橋などのインフラが今後続々と耐用年数と言われる50年を超えてくる。一方で、その多くの維持管理を担う地方自治体には深刻な人手不足という課題もあります。もしあらゆる構造物の接合部に使われているネジに、情報収集、共有機能を持たせることができれば、遠隔でのヘルスモニタリングが可能になり、これらの課題を解決できる。それがこのプロジェクトの狙いです。

smart Nejiはどのような機能を持っているのでしょうか?

西尾氏

 まずは個々のネジにIDを持たせて識別できるようにし、場所と取り付け状況を管理します。またセンサーで接合部のネジにかかる応力や振動、周辺の温度などを計測し、そのデータをネットワークを通じて収集。AIなどを用いて分析することで、建造物の健全性を判断することができます。加速度センサーだけだと、たとえば地震の際、揺れが収まった後は、加速度センサーの値が0に戻ってしまい、地震によってどういう変化が起きたのかが分かりませんが、応力の変化を見ることで、建造物に残った影響を量ることができます。またこのネジを使うことで、締め忘れなど、人的ミスも防ぐことができます。カシオは、時計の開発で培った、センサーや無線通信、さらにそれらを制御するシステムまでを低消費電力で駆動する技術を、G-SHOCKの開発で培った防水性や堅牢性と合わせて提供します。

応用範囲が広そうですが、どのような展開を考えていますか?

西尾氏

 交通インフラや鉄塔、住宅から、航空宇宙分野、船舶や鉄道、ロボットまで、ネジはいろんなところに使われていますから、あらゆる構造物が対象になります。そういう意味では、非常に大きな事業へ発展する可能性があると思っています。今年中のフィールドテストを予定しておりますので、製品化にご期待ください。

「smart Neji」のイメージ。ヘッド部分にカシオのG-SHOCKの技術が組み込まれる
「smart Neji」のイメージ。ヘッド部分にカシオのG-SHOCKの技術が組み込まれる

関連記事

提供:カシオ計算機株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2020年6月30日

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]