「オファリング」は中堅・中小企業向けにも有効なのか?

ノークリサーチは各種調査レポートの分析結果を元に、昨今注目を集める「オファリング」が中堅・中小企業向けにも有効か?を考察/検証した結果を発表した。

<大企業とは異なる中堅・中小企業の実態に即した「オファリング」が必要>
■『5つの変化を構成要素とするIT活用提案の新しいスタイル』が「オファリング」の本質/実体
■オファリングを構成する要素の半分以上は中堅・中小市場では既に当たり前のニーズ項目
■「共創関係」ではIT企業間の連携/協業も重要、「社会視点」は省エネ対策が今後の注目点

PRESS RELEASE(報道関係者各位) 2024年4月22日

「オファリング」は中堅・中小企業向けにも有効なのか?

調査設計/分析/執筆: 岩上由高


ノークリサーチ(本社〒160-0022東京都新宿区新宿2-13-10武蔵野ビル5階23号室 代表:伊嶋謙ニ TEL:03-5361-7880URL:http//www.norkresearch.co.jp)は各種調査レポートの分析結果を元に、昨今注目を集める「オファリング」が中堅・中小企業向けにも有効か?を考察/検証した結果を発表した。


<大企業とは異なる中堅・中小企業の実態に即した「オファリング」が必要>
■『5つの変化を構成要素とするIT活用提案の新しいスタイル』が「オファリング」の本質/実体
■オファリングを構成する要素の半分以上は中堅・中小市場では既に当たり前のニーズ項目
■「共創関係」ではIT企業間の連携/協業も重要、「社会視点」は省エネ対策が今後の注目点


■『5つの変化を構成要素とするIT活用提案の新しいスタイル』が「オファリング」の本質/実体
昨今、「オファリング」と呼ばれるIT活用提案が注目を集めている。しかし、ユーザ企業のみならずIT企業からも「今までと何が違うのか」「抽象的で分かりにくい」といった声が少なくない。そこで、IT企業各社が提唱する内容をノークリサーチで整理/統合したものが下図である。大半の「オファリング」は下図に示した5つの変化(⇒で記載した項目)を要素として包含している。
従来のシステム開発では、独自開発システムまたはカスタマイズを施したパッケージを個別に構築したITインフラ上で動かし、開発と運用/保守のフェーズも明確に分かれていた。ところが現在はセルフカスタマイズ機能を備えたパッケージも珍しくなく、手作業が残りやすい業務もRPAやノーコード/ローコード開発ツールでカバーできるようになった(要素1)。ITインフラではクラウドサービスが普及し、仮想化/コンテナ技術の成熟によって個々のユーザ企業が独立性を保ちつつ、クラウドの利点を享受できる(要素2)。さらにデータに基づく臨機応変な対応力が求められる昨今のビジネス環境を踏まえて、継続的な開発を行うDevOps/MLOps/AIOpsやCI/CDといった取り組みも進んでいる(要素3)。
こうした要素1~要素3は技術面の変化と捉えることができる。一方、IT活用の成否が経営に大きく影響するようになり、ユーザ企業とIT企業の関係性においても委託/受託(または請負)ではなく、互いに理解を深めて成果を共有する共創型を目指す動きが始まっている(要素4)。さらに、ESGやSDGsに対する関心の高まりから、大企業を中心に社会的責任を果たすためのIT活用(廃棄物や温室効果ガスの削減対策など)も重要な検討事項となっている(要素5)。要素4~5はビジネス面の変化と言える。 要素1~3(技術面)がなければ、要素4~5(ビジネス面)は実現が難しい。逆に人材不足や国際情勢などに起因する要素4~5によって、要素1~3の重要性が更に高まっている。このように互いに影響する技術面とビジネス面の変化を踏まえた新しいIT活用提案のスタイルが「オファリング」の本質/実体と言える。次頁以降では、こうした「オファリング」が中堅・中小企業向けにも有効なのか?を考察/検証していく。

■オファリングを構成する要素の半分以上は中堅・中小市場では既に当たり前のニーズ項目
中堅・中小企業を対象とした調査結果を紐解くと、前頁で述べたオファリングの構成要素の幾つかについては既に中堅・中小企業においてもニーズ項目として表れていることが確認できる。以下のグラフは
「2024年版 サーバ&エンドポイントにおけるITインフラ導入/運用の実態と展望レポート」 (※1)
「2023年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」(※2)
の中から、オファリングの構成要素1~3に関連するニーズ項目を年商別に集計したものだ。(要素2は※1の設問S2-4「サーバ活用における方針」、要素1と3は※2の設問P0「業務アプリケーションの導入/更新に関する全体的な方針」の選択肢から抜粋)
「オファリングの要素1:独自開発⇒標準活用」に該当するニーズ項目は「個別カスタマイズが不要なアプリケーションを優先する」(グラフの青帯)だ。同項目の回答割合は大企業に近い傾向を示す中堅上位企業層よりも、中小企業層や中堅下位&中位企業層が高い値を示している。これらの企業層では小規模企業層と比べて業務要件が高度/複雑である一方、業務アプリケーションを個別カスタマイズして維持する費用が大きな負担となりやすい。そのため、中堅・中小向けERPは既にセルフカスタマイズ機能を備えたものも多い。つまり、要素1は中堅・中小企業では既に以前から起きている変化と言える。
「オファリングの要素2:個別配備⇒共同利用」に該当するのが「クラウドへの移行を積極的に進めていく」(グラフの橙帯)である。
小規模企業はサーバ導入率が低いために同項目の値も低いが、それ以外の年商帯は30%超の高い値を示している。クラウドの形態(IaaS/PaaS/SaaS)や業務システムの種別によって状況は異なるが、大企業と比べて既存システムの足かせが少ない分、中堅・中小企業はクラウド活用を進めやすい面もある。
また、「オファリングの要素3:単発的⇒継続的」に該当するのが「購入ではなく、サブスクリプション型の費用体系を選ぶ」(グラフの灰帯)である。初期費用の捻出が難しく、システム要件を整理/確定する人材も不足しがちな中堅・中小企業にはサブスク体系が魅力的に映る。グラフでも大企業に近い傾向の中堅上位企業層よりも中堅下位&中位企業層の方が高い値を示していることがわかる。ただし、サブスク体系とは単なる初期費用の按分ではなく、ユーザ企業側は「継続的な改善」を期待している点に注意が必要だ。例えば、中堅・中小企業では業務手順が規定されておらず流動的であることも多い。そこで、文書やPC操作のデータを自動的に取得/分析して業務手順を最適化するサイクルをMLOps/AIOpsとして回せば、逆に大企業より大きな成果を得られる可能性も秘めている。このように中堅・中小向けには要素3にデータ活用の観点を加味することも有効な差別化ポイントとなる。 このようにオファリングの要素1~3は中堅・中小市場では既に当たり前のニーズ項目となっている。現に「様々な製品/サービスの組み合わせで個別要件を満たす業務クラウドサービス」としてはリコーの「スクラム アセット/パッケージ」や富士フイルムビジネスイノベーションの「Bridge DX Library」 などが既に存在する。 オファリングを中堅・中小向けに展開する際は、まずこの点を押さえた上で、要素3で触れたような差別化ポイントを加えることが大切だ。次頁では要素4~5について述べる。

■「共創関係」ではIT企業間の連携/協業も重要、「社会視点」は省エネ対策が今後の注目点
既に当たり前である要素1~3と異なり、要素4~5は中堅・中小企業にとってまだ馴染みが薄い領域だ。以下の2つのグラフは
「2023年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」
の中から、オファリングの構成要素4~5に関連するニーズ項目を年商別に集計したものだ。(設問P0「業務アプリケーションの導入/更新に関する全体的な方針」の選択肢から抜粋)
「オファリングの要素4:委託/受託⇒共創関係」は5つの要素の中でも特に抽象的であり、大企業向けのオファリングにおいても定まった定義が確立していない。上段グラフが示すように、中堅・中小市場ではユーザ企業とIT企業がビジネスの成果を共有する体系(上段グラフの橙帯)は実現が難しいため、まずは中堅企業層(年商50~500億円)向けに従量課金体系を通じて双方のリスク/負担を軽減する提案を進めるのが第一歩と考えられる(上段グラフの青帯)。さらに、「共創」の相手はユーザ企業とは限らない。上段グラフの灰帯が示すように、中堅企業層のユーザ企業はIT企業側がAPI連携で他社と連携/協業できているか?も重視している。 つまり、中堅・中小向けのオファリングでは、要素1~3で実現されるシステム構築手段をIT企業側が他社との「共創」を通じて最大限に活かしているか?が問われることになるわけだ。
その一方、「オファリングの要素5:企業視点⇒社会視点」に関連するニーズ項目はいずれも20%未満の低い値に留まっている。
人材不足や円安によるコスト上昇などの影響に加えて、上場企業が少ない中堅・中小企業にとってはESGやSDGsの優先度は低くなりがちだ。そうした中で、比較的回答割合の高い項目が「省エネ対策の実現や認定取得にも役立つかを重視する」(下段グラフの橙帯)である。既に大企業で進んでいるTCFD(Taskforce on Climate-related Financial Disclosure)の義務化などが今後取引先の中堅・中小企業にも波及すれば、中小企業版SBTなどが必須の取り組みとなる流れも考えられる。したがって、要素5は現時点での優先度は低いが、将来的には短期間のうちに強い「要請」(冒頭の図の左側矢印)として作用する可能性もある。 ここではごく一部の分析結果を紹介したのみだが、このように中堅・中小企業向けに「オファリング」を提供する際には大企業との違いを把握し、中堅・中小企業の実情を踏まえた差別化ポイントを加えることが必要となってくる。

■ご好評いただいている既存の調査レポートなど

「2023年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」
ERP、会計、販売、人給、生産、ワークフロー、Web会議、CRM、BI、クラウドストレージといった10分野のシェアと評価に加えて、法制度対応やデータ分析/生成AIの動向を網羅
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「2024年版 サーバ&エンドポイントにおけるITインフラ導入/運用の実態と展望レポート」
サーバはクラウドファーストの加速とオンプレ回帰のどちらに進むのか?PCでWindows 11移行を加速させるための施策とは?
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「2023年版 中堅・中小企業のIT支出と業務システム購入先の実態レポート」
IT支出が活発な企業層や支出額の内訳は変わってきている、有効回答件数1300社のユーザ調査を集計/分析し、ベンダや販社/SIerが今後注力すべき顧客セグメントやIT商材は何か?を明らかにする必携レポート
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「2023年版 中堅・中小企業におけるRPAおよびノーコード/ローコード開発ツールの活用実態レポート」
今後はレイトマジョリティへの訴求が焦点。課題/ニーズの変化を捉え、市場拡大を阻む障壁を打開するためには何をすべきか?
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「2023年版 中堅・中小企業のDXおよびITソリューション選定の実態レポート」
50項目に渡る具体的なDX/ITソリューションの導入状況、ユーザ企業が抱える課題とニーズ、選ぶべき訴求手段を網羅した一冊
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「2023年版 中堅・中小企業のセキュリティ/運用管理/バックアップ利用実態と展望レポート」
ランサムウェアの危険性を訴えるだけでなく、今後のIT活用方針とマッチした「ポジティブな守りのIT対策提案」が求められている
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「2023年版 中堅・中小企業におけるネットワーク環境の実態と展望レポート」
今後不可欠となるネットワーク環境とセキュリティ対策を同時に考慮したITインフラ整備の提案ポイントを分析/提言
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『カスタムリサーチ』のご案内
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株式会社 ノークリサーチ 担当:岩上 由高
〒160-0022 東京都新宿区新宿2-13-10 武蔵野ビル5階23号室
TEL 03-5361-7880 FAX 03-5361-7881
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