新型イヤホン「Nothing Ear/Ear (a)」レビュー:音質やANCが向上、気になる点も

David Carnoy (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2024年04月23日 07時30分

 Nothingから発売された最新のノイズキャンセリングイヤホン「Nothing Ear」(149ドル、日本では税込2万2800円)は、前モデルから何も変わっていない。少なくとも、一見しただけだと、そういう印象を受ける。実際に、前モデルから一歩後退したと思ったとしても、許されるだろう。今回発表されたNothing Earは、「Nothing Ear (2)」の後継モデルではあるものの、製品名のどこにも「3」という数字が見当たらない。また、製品の世代を示すAppleのような命名規則も採用されていない。Nothing Earというシンプルな名前が付けられており、見た目もEar (2)と同じだ。しかし、内部には変更がいくつか加えられており、特に音質やノイズキャンセリング、バッテリー持続時間が本格的に改善されている。ただし、レビューの際にいくつか小さな問題にも遭遇したため、評価を少し下げることとなった。

Nothing Ear
Nothing Ear
提供:David Carnoy/CNET
  1. これまでと変わらぬ目を引くデザイン
  2. 音質は向上
  3. ノイズキャンセリングと音声通話性能
  4. 結論

これまでと変わらぬ目を引くデザイン

 Nothingを聞いたことがない人のために説明しておくと、同社は、OnePlusの共同創設者であるCarl Pei氏によって2021年に創設された。スマートフォンやイヤホンといった同社の製品は、当初からデザインを重視しており、一部が透明な外観やそのほかの滑らかなアクセントを特徴とする。そのため、当初は(少なくともデザインに関しては)競合製品とは一線を画しており、多くのメディアで取り上げられた。パフォーマンスに関しては、イヤホンは価格(99ドル、日本では税込1万2650円)に見合った性能を備えていたが、特別な要素はおそらく何もなかった。

 今回発売された149ドル(日本では税込2万2800円)のモデルは、ノイズアイソレーションイヤーチップを採用しており(同社は「Ear (stick)」と呼ばれるより低価格なオープン型イヤホンも販売している)、デザインは前モデルと変わらない。付属のケースも前モデルと同じで、ワイヤレス充電をサポートし、IP55レベルの防水防塵性能を備える。

 新たに登場した下位モデル「Nothing Ear (a)」(99ドル、日本では税込1万4800円)は、ホワイトとブラックのほか、新色のイエローで展開される。ドライバーは異なり、充電ケースも小さめだが(防水性能はEarよりも低いIPX2で、ワイヤレス充電には非対応だ)、それ以外の機能はEarに非常によく似ている。

 これは、ステムを備えたすべてのノイズキャンセリングイヤホンについて言えることかもしれないが、NothingのイヤホンはAppleの「AirPods Pro」シリーズと同じような作りで、「AirPods」のようなピンチコントロールも備えている。ピンチコントロールは筆者のお気に入りで、EarでもEar (a)でも問題なく動作する。また、限定的ではあるものの、モバイルアプリでカスタマイズオプションもいくつか利用できる。

 Nothing Earは筆者の耳によくフィットし、比較的軽量である。とは言え、大きな問題にも遭遇した。付属のどのイヤーチップを使っても、耳をしっかりと密閉させることができなかった。対応するNothingのアプリでイヤーチップのフィットテストを実行できるが、一番大きなチップを装着しても、どちらの耳もフィットテストに合格しなかった。イヤーチップが楕円形なので、筆者の耳には合わないのだ(筆者の場合、「AirPods Pro(第2世代)」で一番大きなチップを装着してやっと耳を密閉できるといった状態だ。AppleがXLサイズのチップを同梱してくれるとよいのだが、少なくともAppleのイヤーチップ装着状態テストには合格できる)。

 耳をしっかりと密閉できないことは、音質よりもノイズキャンセリングのパフォーマンスに影響したが、音質とノイズキャンセリングの両方を最適化するには、手持ちの大きめなチップに付け替えなければならなかった。おそらく、読者の多くは付属のイヤーチップで耳をしっかりと密閉させられるはずだ。しかし、筆者がこの問題を指摘しているのは、密閉性が低いと、特にアダプティブノイズキャンセリング設定では、パフォーマンスに影響が及ぶ可能性があるからだ。

 EarとEar (a)はいずれも、イヤホンを耳から外すと音楽が一時停止する耳の検出センサー(左右のイヤホンは独立して使用できる)と、イヤホンを2台のデバイスと同時にペアリングできるマルチポイントBluetoothペアリング機能を備えている。

音質は向上

 使用しているBluetooth 5.3オーディオチップセットの種類は明かされていないが、Nothingは新型Earの新しい11mmドライバーを宣伝している(前モデルは11.6mmドライバーを搭載していた)。振動板には、硬くて歪みの少ないセラミックが使用されており、よりクリアなサウンドを実現する。さらに、同社は、「Ear (2)で見られたデュアルチャンバーを採用し、2つの通気孔を追加することで、それぞれのイヤホン内の空気の流れを10%改善した。これにより、歪みが少なくなり、全体的によりリッチでクリアなサウンドが実現する」と述べている。

 これらのドライバーは、Earと新しい下位モデルEar (a)の大きな違いの1つである。Ear (a)の11mmドライバーは、素材の品質がやや劣るものの、Earと同じように通気孔が追加されている。EarとEar (a)の音質に大きな違いはないが、フラッグシップモデルのEarの方がわずかながらよりクリーンで正確なサウンドで、トーンバランスも若干異なる。

 「iPhone 14 Pro」と「Google Pixel 7 Pro」でEarをテストしたところ、音質はおおむね気に入った。アプリでは、イコライザー設定でサウンドを微調整したり、聴力テストを行ってパーソナルサウンドプロファイルを作成したりできる(筆者はパーソナルサウンドプロファイルを使用して、イコライザーもいじった)。さらに、「低音の強化」設定もある。

Nothing Ear
提供:Nothing/Screenshot by CNET

 サウンドは大きく大胆で、適度な深みと開放感もある。AirPods Pro(第2世代)と比較すると、Earのサウンドは少し暖かみがあり、低音は大きいものの解像度はやや劣る。一部の楽曲、特に低音が強調された楽曲では、AirPods Pro(第2世代)よりもEarのサウンドの方が筆者の好みだったが、ほかの楽曲では、AirPods Pro(第2世代)のサウンドの方が好みだった。中音域(歌声はこの音域)は、AirPods Pro(第2世代)の方がより前に出ていて、わずかながらより自然に聞こえた。また、バランスも少し優れているように感じた。

 オーディオコーデックに関しては、AAC、SBC、LHDC 5.0、LDACが利用できる。ハイレゾ楽曲を提供する音楽ストリーミングサービスの「Qobuz」を使用して、Pixel 7 ProでLDAC再生をテストしてみたところ、iPhoneでAACコーデックを使用して聞いたときと比べて、音質がわずかに向上したが、差はわずかだった。

 要するに、Earの音質は非常に素晴らしいとは言えないかもしれないが、この価格帯のイヤホンとしては、かなり好印象だ。Ear (a)よりも高価なEarを購入する価値があるのかどうかは微妙なところだが、筆者の耳には、Earの音質の方が10%程度優れているように聞こえた。

ノイズキャンセリングと音声通話性能

 ニューヨークの路上や地下鉄で時間をかけてEarをテストしたところ、ノイズキャンセリングはかなり優秀だと感じたが、Boseの「QuietComfort」や、ソニーの「WF-1000XM5」、AirPods Pro(第2世代)といった、より高価な最高峰のノイズキャンセリングイヤホンと同じレベルにはない。

 Nothingによると、ノイズキャンセリングは、EarもEar (a)もEar (2)に比べて、「最大1.8倍強力なノイズ除去を提供」し、最大45dBのノイズキャンセリングが可能であるという。アクティブノイズキャンセリング(ANC)の設定は、「高」「中」「低」から選択可能で、アダプティブノイズキャンセリング設定もある。Nothingの説明によると、「高」は「飛行機や地下鉄」、「中」は「街中やカフェ」、「低」は「オフィスや屋内」での使用に最適だという。屋内にいるときを除けば、筆者は主に「強」を使用していた。周囲の音を聞くことができるトランスペアレンシーモードもある。AirPods Pro(第2世代)の外部音取り込みモードには劣るものの、かなり自然に聞こえる。

ニューヨークの路上でイヤホンをテストする筆者
ニューヨークの路上でイヤホンをテストする筆者
提供:David Carnoy/CNET

 音楽を聴いているときに遭遇した問題がある。それは、ノイズキャンセリングの設定を「高」から変更すると、音質が少し悪化してしまうことだ。設定を変えるごとに、サウンドがわずかに変化してしまうのだが、こんなことはあってはならない。この問題は、Ear (a)を使用しているときにも発生した。

 音声通話に関しても、極めて優れているわけではないが、かなり良好である。通話相手は、ニューヨークの騒がしい通りでも、筆者の声をよく聞き取れたと話していた。バックグラウンドノイズはかなりの量が除去されていたが、交通量が多くなったときは、筆者の声が震えて聞こえたという。また、Earとの接続はおおむね安定していたが、通りの特定の場所で音楽を聴いているときに、何度か音声の遅延や音飛び(基本的に電波干渉が原因だ)が発生した(ニューヨーク市でのテストは、ヘッドホンやイヤホンにとって過酷である)。

 バッテリー持続時間は良好だが、傑出しているわけではない。ノイズキャンセリングを使用した場合、適度な音量で最大5.2時間(ANCがオフだと8.5時間)の再生が可能だ。一方、Ear (a)のバッテリー持続時間は、ノイズキャンセリングをオンにした状態で最大5.5時間(ANCがオフだと9.5時間)となっている。

結論

 筆者の耳をしっかりと密閉できるイヤーチップが付属しないイヤホンをレビューするのは難しい。耳を密閉できないというのは、効果的なノイズキャンセリングに深刻な影響を及ぼす根本的な問題だからだ。ただし、幸いなことに、筆者はほかのイヤーチップを多数使用することができるので、それでテストを行うことができる。ほとんどの人は付属のイヤーチップで問題なくノイズを遮断できると思うが、そうではない人もいると思う。

 イヤーチップを除けば、筆者は以前からNothingのイヤホンのデザインを気に入っており、デザインこそが、同社のイヤホンを同価格帯のほかの製品と差別化する要素だと感じている。今回発売された最新モデルで、同社はパフォーマンスに関しては正しい方向に進んでおり、ほとんどの点で非常に好感の持てるイヤホンに仕上げている。しかし、小さな問題がいくつかあるせいで、真の一流とは言えない。パフォーマンスに関して言えば、「OnePlus Buds Pro 2」のようなイヤホンの方がわずかに優れていると思う。おそらく、こうした問題のいくつかは、今後のファームウェアアップグレードで解決されるだろう。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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