スポーツテック最前線

プロスポーツ選手が監修した戦術ボードアプリ「Coachbase」

 スポーツはテクノロジの力によってどうイノベーションしていくのか。この連載では、スポーツトレーナーの視点から、海外を中心とした最先端の知見と事例を紹介する。今回は「スポーツ×トレーニング動画」をテーマに、有名プロスポーツ選手が監修したスポーツの練習・作戦メニューを動画で見ることができる戦術ボードアプリ「Coachbase」を紹介しよう。


急成長する戦術ボードアプリ

 スポーツの試合中に、選手が作る円陣の中でコーチが作戦ボードを広げているのを見たことはあるだろうか。選手のポジショニングや動きを作戦ボードで伝えるのは意外と難しく、線を書き直したり、マグネットを移動させたりしているうちに混乱してしまいがちだ。

 Coachbaseは、チームスポーツの現場で活躍するコーチの悩みをもとに生まれた戦術ボードアプリだ。スマートフォンやタブレットに表示された選手やボールのアイコンをアニメーションさせることができ、ハーフタイムやタイムアウトなど限られた時間の中でも効果的に選手に作戦を落とし込むことができる。香港出身のキース・ラムジャン氏が2013年に創業したコーチベースは、順調にユーザー数を伸ばし世界30カ国以上で15万ダウンロードを記録している。

Coachbaseの次なるロードマップ

 そんなCoachbaseが、ユーザーの声をもとにアップデートされ「Coachbase Practice Planner」としてリリースされた。同アプリでは、有名プロスポーツ選手考案・監修の練習メニューを動画で視聴したり、コーチベースの作戦ボード上で練習メニューの様子をアニメーションで確認したりできる。

 9月にリリースされた同アプリでは、バスケットボールの有名選手が監修した練習メニューを中心に提供を開始している。今回のリリースにあたって創業者のラムジャン氏にインタビューすることができた。氏によると、同アプリの強みは2つだ。

 1つは、使用するチームのスキルや年齢に応じて練習メニューの難易度や種目を調節するアルゴリズムが搭載されていること。これにより、コーチがいちいち数値などを調節するために手間取って練習が中断されるのを防いでくれる。もう1つは、Coachbaseアプリから受け継いだ作戦ボードだ。限られた練習時間の中でより効率をあげるためのノウハウを生かすことができる。

 現在、練習メニューの監修は2人のコーチングのスペシャリストがしている。1人目はNBAの2015年MVPに輝いたステファン・カリーの育ての親、デル・カリーで、自ら動画に出演してコーチングをしてくれる。世界中でベストセラーになった「21世紀のバスケットボールプラクティス」の著者、ブライアン・マコーミックもコーチング動画の監修をしている。

デル・カリー自ら指導

 今後は、CoachBaseが規模を拡大しているスペイン、セルビア、ドイツを中心にビジネスを展開していくという。有名コーチとのパートナーシップを進めている最中だといい、練習メニューのライブラリを増やしていくことが2015年のロードマップだという。

 アジアにおいても日本、台湾、中国、韓国を中心にトレーニングコーチと提携しているという。練習メニューを紹介する動画コンテンツが豊富になれば、ビジネスのエリアを拡大することも見込んでいるそうだ。

コーチベースの課題

 9月にリリースされたばかりのCoachbaseだが、まだまだ練習メニューが少なく、Coachbaseの戦術ボード部分と同期された動画も多くない。年内はキュレーションされたCoachbaseのパートナーが作成する動画だけでクオリティを担保すべきかもしれない。ただ、それ以降はユーザー同士で戦術動画をシェアするプラットホームなどを用意して、動画数を増やしたり、コミュニティのエンゲージメントを上げたりするための施策が必要になるだろう。

 ご意見・ご質問はTwitter(@hirokibacardi)まで。

渡邊拓貴(わたなべ ひろき)

カリフォルニア州立大、早稲田大学でアスレチックトレーニングを学ぶ。ロンドン五輪では馬術競技選手のトレーナーとして帯同。現在アメリカで起業し、アスリート向けのトレーニングプラットフォームを開発中。

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