非対称データ通信を効率的に収容可能な空間分割多重光ネットワーク技術を実証


報道発表概要
 国立大学法人香川大学(本部:香川県高松市、学長:筧 善行、以下 香川大学)、日本電気株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 執行役員社長 兼 CEO:森田 隆之、以下 NEC)、サンテック株式会社(本社:愛知県小牧市、代表取締役社長:鄭 元鎬、以下 サンテック)、古河電気工業株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:小林 敬一、以下 古河電工)は、非対称データ通信を効率的に収容可能な、マルチコアファイバ[1]に基づく空間分割多重光ネットワーク[2]技術の実証に成功しました。本成果は、2023年3月5日から3月9日にかけて米国サンディエゴにて開催される光ファイバ通信国際会議(Optical Fiber Communication Conference)にて発表する予定です。
 なお、本研究開発は、国立研究開発法人情報通信研究機構(本部:東京都小金井市、理事長:徳田 英幸、以下 NICT)の「Beyond 5G研究開発促進事業」に係る基幹課題「Beyond 5G超大容量無線通信を支える空間多重光ネットワーク・ノード技術の研究開発」(代表研究者:香川大学)の委託研究に基づいて実施されました。

背景
 現在、第5世代(5G)無線通信サービス[3]の導入が進められていますが、すでに国内外でその次の世代(Beyond 5G)の無線通信サービス[4]に向けた研究開発が推進されています。将来のBeyond 5G移動無線通信サービスは、5Gの特長である「高速・大容量」、「低遅延」、「多数端末との接続」のさらなる高度化が期待され、これを支える光ネットワーク[5]には、ペタビット毎秒[6](Pb/s)級光リンク容量が必要となると考えられています。一方、現在の光ネットワークでは、上り通信と下り通信のデータ量が非対称であっても、上り下りで同じ帯域の光信号が割り当てられ、データ量が少ない方向の光信号の容量が無駄になっています。Beyond 5G時代には、クラウドコンピューティングの増加等により、上り通信と下り通信のデータ量の非対称性が一層拡大することが予想され、このような非対称データ通信を無駄なく収容可能な光ネットワークの実現が求められています。

技術の内容
 今回実証した技術は、次の4つの技術、(1) 1芯マルチコアファイバを用いて非対称データ通信を効率よく転送可能な空間分割多重光ノード構成技術(担当:香川大学)、(2) 1芯マルチコアファイバ内の任意のコアを任意の方向に伝搬する光信号を増幅する技術(担当:NEC)、(3) 入力マルチコアファイバ内の任意のコアを任意の出力マルチコアファイバに切り替え可能なコア選択スイッチ技術(担当:サンテック)、(4) 装置内接続用マルチコアファイバ設計・配線・接続技術(担当:古河電工)から構成されます。これらの技術より、マルチコアファイバを用いて非対称データ通信を効率よく転送したり、光のまま増幅したりすることが可能になり、将来のBeyond 5G無線通信サービスを支える、経済性と転送性能に優れた超大容量光ネットワークの実現が期待されます。



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図1 非対称データ通信を効率的に収容可能な空間分割多重光ネットワークの実験構成



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図2 コア選択スイッチ



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図3 マルチコアファイバ

用語の解説
[1]マルチコアファイバ:
現在、使用されている光ファイバは、髪の毛ほどの太さのガラス繊維の中にコアと呼ばれる光の通り道が1本だけ配置されています。マルチコアファイバは1本の光ファイバの中に複数本のコアが配置されており、光ファイバ1本当たりの伝送容量の大幅な増加が期待されています。

[2]空間分割多重光ネットワーク:
現在の光ネットワークは波長分割多重技術を用いて、波長単位で経路の設定が行われています。空間多重光ネットワークでは空間分割多重技術に基づき、波長よりも大束なコア単位で経路設定を行います。空間分割多重技術と従来の波長分割多重技術を組み合わせることで、空間多重光ネットワークは超大容量の光ネットワークを経済的に実現可能と期待されています。

[3]第5世代無線通信サービス:
移動無線通信サービスは、およそ10年ごとに通信速度の向上と世代交代が進み、現在導入が進められている第5世代無線通信サービス(5G)は「高速・大容量」に加え、「低遅延」、「多数端末との接続」という特徴を持っています。高臨場感のある映像の伝送、自動運転サポートや遠隔医療など、様々なサービス、産業を革新すると期待されています。

[4]Beyond 5G無線通信サービス:
第5世代無線通信サービス(5G)の特長(高速・大容量、低遅延、多数端末との接続)のさらなる高度化に加えて、空・海・宇宙への利用領域の拡張、超低消費電力、超高信頼などの特徴を備えることが想定されています。第6世代(6G)とも呼ばれます。

[5]光ネットワーク:
光信号の行き先を選択する多数の光ノードを、光信号の伝送路である光ファイバを用いて網目状に接続した通信ネットワーク。

[6]ペタビット毎秒:
ペタ(記号P)は単位の前に付けられる接頭語の一つであり、10の15乗を表します。1ペタビット毎秒(Pb/s)は、1秒当たり、10の15乗ビットのディジタル信号を送信することを意味します。

講演論文
題名:Single Multicore-Fiber Bidirectional Spatial Channel Network Based on Spatial Cross-Connect and Multicore EDFA Efficiently Accommodating Asymmetric Traffic

著者:Kyosuke Nakada(1), Hitoshi Takeshita(2), Yuki Kuno(3), Yusuke Matsuno(4), Itsuki Urashima(1), Yusuke Shimomura(2), Yuji Hotta(3), Tsubasa Sasaki(4), Yudai Uchida(1), Kohei Hosokawa(2), Ryohei Otowa(3), Rika Tahara(1), Emmanuel Le Taillandier de Gabory(2), Yasuki Sakurai(3), Ryuichi Sugizaki(4), and Masahiko Jinno(1)

所属:(1)Kagawa University, (2)NEC Corporation, (3)Santec corporation, (4)Furukawa Electric Co., Ltd.

講演番号:M4G.7

講演日時:Monday, March 6, 2023

講演国際会議:Optical Fiber Communication Conference (OFC) 2023

参考
(委託研究ウェブサイト)
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 >PHUJINプロジェクト


(NICT ウェブサイト)
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 >「Beyond 5G研究開発促進事業」に係る令和3年度新規委託研究の公募(第1回)を開始
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 >「Beyond 5G研究開発促進事業」に係る令和3年度新規委託研究の公募(第1回)における基幹課題についての結果

本件に関する問い合わせ先
国立大学法人香川大学
創造工学部 電子・情報工学領域 教授 神野 正彦
Tel: 087-864-2242
E-mail: jinno.masahiko@kagawa-u.ac.jp
創造工学部 庶務係 大森 恵子
Tel: 087-864-2101
E-mail: omori.keiko@kagawa-u.ac.jp

日本電気株式会社
コーポレートコミュニケーション部 野本
E-mail: press@news.jp.nec.com

サンテック株式会社
業務部経営戦略グループ
Tel: 0568-79-3535(代表)
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古河電気工業株式会社
広報部 村越
お問い合わせフォーム:
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