低軌道衛星MIMO技術を活用した衛星センシングプラットフォームの軌道上実証への挑戦 ~全世界あらゆるものが繋がる超広域省電力センシング環境の実現に向けて~


 日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(本社:東京都調布市、理事長:山川 宏、以下 「JAXA」)が2024年度に打上げ予定の革新的衛星技術実証4号機※1により、「衛星MIMO※2技術を活用した920MHz帯衛星IoTプラットフォームの軌道上実証」を実施いたします。
 本実証テーマは、地上通信網が整備されていない海洋や山間部等でのIoTデバイス活用やセンシングサービスなど、世界中であらゆるものが繋がる世界を実現する、超広域省電力センシングサービスの鍵となる、「低軌道衛星MIMO技術」および「衛星センシング技術」について軌道上で実証します。

1.背景
 NTTは、社会課題の解決につながる革新的な光ネットワーク・インフラの構築等の社会インフラ創出をめざした協力協定を2019年8月にJAXAと締結しました。以降、NTTの「IOWN※3構想実現に資する光・無線ネットワーク技術」とJAXAの「宇宙機のシステム構築技術」との掛け合わせにより、「地上と宇宙をシームレスにつなぐ超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラの実現」等に向けた共同研究※4に取り組んでいます。
 また当社では、宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想の発表※5やスペースコンパス社の設立※6など、宇宙事業への参入をめざして準備を加速させております。宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想のひとつである宇宙センシングは、衛星で取得した高精細で大容量な観測情報の利活用や、地上のあらゆる場所で取得したセンサデータの収集を担う、超広域衛星センシングプラットフォーム※7の実現をめざしています。この実現には、低軌道衛星から地上基地局へ伝送する無線信号の周波数利用効率を向上し伝送容量を改善する「低軌道衛星MIMO技術」と、無線局免許不要で多様な地上用LPWA※8無線端末の収容を可能とする「衛星センシング技術」の実現が不可欠です。このため、革新的衛星技術実証3号機で実施予定であった実証テーマ技術※9※10を一部高度化し、革新的衛星技術実証4号機で実証します。

2.実証テーマの概要
 本実証テーマでは、超広域衛星センシングプラットフォームの実現に向けた要素技術について、小型実証衛星への搭載性を勘案したスケールモデルを用いて低軌道衛星軌道上で技術実証に取り組みます。
 

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図 1 技術実証イメージ

 まずは、革新的衛星実証3号機で実証予定であった技術について確実に実証を実施します。具体的には、「低軌道衛星MIMO技術」では、①時間周波数非同期干渉補償技術、②通信路モデル化(通信容量推定)技術により、2x2MIMOにおいて、SISO※11伝送に比べてピーク値で2倍、平均で1.5倍以上の伝送容量改善を達成できることを実証します。また「衛星センシング技術」では、③衛星ブラインドビーム制御技術、④マルチプロトコル一括受信技術により、同一時刻・同一周波数に到来する2端末以上のLPWA端末の信号を分離・復調できることを実証します。
 今回の実証では上記に加え、将来の実用化も見据え、以下に示す新たな技術実証や調査について、JAXAと調整し取り組む予定です。

⑤制御キャリアレスMIMO復調技術の実証
 これまでに提案してきた低軌道衛星MIMO復調では、干渉や周波数変動を補償するため、データキャリアとは別に搭載アンテナ数と同数の制御キャリアを設けていました。今回の提案では、周波数利用効率の更なる向上と低廉な装置実用化をめざして、データキャリアのみでMIMO復調を実現する、制御キャリアレス復調技術の研究に取り組みます。

⑥LPWA端末起動技術の実証
 LPWA端末の数年単位の長期運用実現に向けては端末省電力動作の技術実証が必要となります。そのため、衛星から地上のLPWA端末に向けて送信した信号により端末を都度起動させる技術が有効です。今回の提案では、衛星から送信する起動信号のキャリア周波数を時間的に変化させて送信することで、低軌道衛星が地上LPWA端末の上空を通過するタイミングで確実に起動させ通信確度を向上させる技術の研究に取り組みます。

⑦920MHz帯/860MHz帯上空干渉波※12調査
 LPWA端末が利用できる周波数は欧米・アジアでは920MHz帯ですが、欧州など860MHz帯が使用されている地域も多いです。今回の提案では920MHz帯に加えて、新たに860Mz帯の上空干渉電力の累積確率分布の調査を行います。調査結果を踏まえて、グローバルな衛星IoTシステム構築に向けた回線品質推定技術の研究に取り組みます。

3.今後の展望
 本技術を実証・確立することで、将来には海上ブイを用いた面的な海洋気象観測による気象予測精度の更なる向上や河川監視による水害事前検知など、地上通信網が整備されていない海洋や山間部等でのIoTデバイス活用やセンシングサービスの提供を可能とします。これにより、NTTグループのめざす宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想のひとつである宇宙センシングとして、超広域衛星センシングプラットフォームを推進し、持続可能な社会に求められるインフラ実現に貢献していきます。

<用語解説>
※1
JAXA革新的衛星技術実証4号機に関する報道発表  (外部サイト)
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※2
MIMO(マイモ:multiple-input multiple-output)
無線通信において、送信機と受信機の双方が複数のアンテナで通信を行い、伝送容量を向上させるための技術
※3
IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)
スマートな世界を実現する、最先端の光関連技術および情報処理技術を活用した未来のコミュニケーション基盤
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※4
NTTとJAXA、地上と宇宙をシームレスにつなぐ超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラの実現に向けた共同研究を開始
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※5
NTTとスカパーJSAT、持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙事業のための業務提携契約を締結
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※6
NTTとスカパーJSAT、株式会社 Space Compassの設立で合意 ~持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙統合コンピューティング・ネットワーク事業をめざして~
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※7
NTT技術ジャーナル 特集 宇宙統合コンピューティング・ネットワーク
「衛星センシングプラットフォーム」
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※8
LPWA(Low Power Wide Area)
無線通信において、低消費電力、低ビットレート、広域カバレッジを特徴とするデータ通信
※9
「低軌道衛星-地上間の20Gbps超通信と超広域なIoTデータ収集」実現に向けた技術実証案が革新的衛星技術実証テーマとして採択 ~世界初の低軌道衛星MIMO技術等の軌道上実証~
リンク
※10
JAXA 革新的衛星技術実証3号機について (外部サイト)
リンク
※11
SISO(サイソ:single-input single-output)
無線通信において、送信機と受信機の双方が単一のアンテナで通信を行う技術
※12
上空干渉波
地上IoT端末と地上基地局との間の通信等で利用されている電波の衛星軌道上への到来波

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