米国環境NGO RAN声明:「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害」〜東京五輪開幕まで1年〜 (2019/7/24)

抜け穴のある調達基準と機能不全の通報制度を 「東京五輪のレガシー」としないために

環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日24日、東京五輪開幕まで1年となることを受けて、「問題のある木材も利用可能とした調達基準と、それを許している通報制度を『東京五輪のレガシー』とすべきではない」とし、以下の声明を発表しました。


 東京五輪開幕まで、あと1年と迫ってきました。 

 東京五輪会場の建設用の木材調達について、私たちNGOはインドネシアやマレーシアでの熱帯林破壊から人権侵害まで、様々な問題を指摘してきました。その結果、東京2020大会の「持続可能性に配慮した木材の調達基準」は今年1月に改訂されました。しかしその基準は、問題ある企業からの高リスクの木材をサプライヤー企業が利用し続けることが可能となっており、大きな抜け穴を残したままです。開幕まで1年となった今月においても、競技会場の建設現場で熱帯材が使い続けられていることが確認されています(注1)。

 加えて、木材調達基準の遵守状況を確認する「通報受付窓口」の体制も脆弱です。例えば、NGOの調査で、森林減少を引き起こす農地等への転換に由来する木材である「転換材」が建設事業に利用されていたことが明らかになりました。RANなどNGOは「転換材は持続可能でない」とし、昨年11月末に「調達方針の不遵守」として、東京2020組織委員会、および各施設を管轄する日本スポーツ振興センター(JSC)と東京都に複数回にわたって通報を行いました。しかし、いまだに説明責任は果たされていません。ある通報では、本来のプロセスを逸脱して、通報者である私たちNGOからの情報収集は行なわず、サプライヤー企業の情報にのみ基づいた不公平な判断を行なって、処理開始の案件としませんでした。別の件では、8ヵ月に渡り処理開始の判断がないままの状況にあり、通報の処理体制でも問題が顕在化しています(注2)。

 問題のある木材も利用可能とした調達基準、そして、それを許している通報制度を「東京五輪のレガシー」とすべきではありません。持続可能性の観点からどのような問題や課題があったのかを明らかにした上、引き継ぐべきレガシーを考えるべきです。

 国連の持続可能な開発目標(SDGs)では、ターゲット15.2で2020年までに森林減少を阻止することが明確に示されています。そのためには、森林減少の大きな要因である農園開発や産業植林のための土地転換を食い止めることが必須です。
 RANは、東京五輪開催までの1年、今後も調達対象となるパーム油や紙パルプ製品についても二度と森林減少を引き起こさないよう、「ノーモア森林破壊、ノーモア人権侵害」の実現に向けて活動を進めていきます。


*7月18日(米国時間)、国際オリンピック委員会へ「東京2020大会の通報制度への深刻な懸念(Subject: Serious Concers regarding Tokyo 2020 Grievance Meganisms)」文書を電子メールで送付し、東京五輪の通報制度が国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」の原則(31. 非司法的苦情処理メカニズムのための実効性の要件)に反していることを指摘しました(コミュニケーション不足:透明性、予測可能性、説明責任。手順を逸脱したサプライヤーの情報に基づく不公平な判断:正当性、公平性)。
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*動画「守られなかった約束: 東京五輪がインドネシアの森林減少に加担」
撮影地:インドネシア 東カリマンタン州、撮影日:2019年3月
解説:オランウータン専門家 ハルディ・バクチャントロ氏(Centre for Orangutan Protection 代表)
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注1)マレーシア サラワク州産の合板(タ・アン社製)が代々木競技場で確認(7月15日)
注2)「熱帯材合板: 東京五輪木材調達基準違反に関する通報」概要&一覧」
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