米国環境NGO RANプレスリリース:米シティグループ、パーム油大手インドフードへの融資を停止〜3メガは取引継続〜 (2019/6/18)

アブラヤシ農園での労働問題を巡って〜3メガは取引継続、みずほが最大の資金提供者〜

サンフランシスコ発ーー環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、米シティグループがインドネシアの食品・パーム油大手インドフード・サクセス・マクムール(以下インドフード)への資金提供を停止したことを受けて、17日(現地時間)、メガバンク3行がインドフードへの資金提供を継続していることを改めて批判しました。今年3月、インドフードは世界最大のパーム油認証制度「持続可能なパーム油のための円卓会議」(RSPO)から会員資格を停止され(注1)、同社に資金提供するメガバンクも含んだ金融機関の対応に注目が集まっていました。

インドフードの子会社であるパーム油生産企業2社(注2)は、インドフードが所有するアブラヤシ農園で確認された20件以上のRSPO基準違反と10件のインドネシア労働法違反に対処するため、是正措置計画の提出をRSPOに求められていました。しかし、子会社2社は勧告に従わなかったため、RSPO認証は3月に停止されました。今回のシティグループによる1億4000万ドルに及ぶリボルビングローン(注3)の停止は、インドフードにとって欧米の金融機関で2番目に大きな資金提供者を失うことを意味しています。

RAN 責任ある金融シニア・キャンペーナー ハナ・ハイネケンは「シティグループが同社の方針を実行して、インドフードへの融資を停止したことを歓迎します。インドフードは国内法、認証機関の基準、国際的な事業規範を長い間にわたって軽視してきました。今回のシティグループの決定は、インドフードへの投融資を継続しているメガバンクや日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に対して『インドフードへの投融資は無責任である』ことを示す強烈な警告となるはずです」と強調しました。

インドフードは、時価総額で40億米ドルのインドネシア最大の食品企業です。インドネシアにおけるアブラヤシ農園を担保にした土地抵当権も二番目に大きく(注4)、同国の大財閥 サリム・グループの中核企業です。RSPOによる調査は、RAN、国際労働権フォーラム(ILRF)、インドネシアの労働権擁護団体OPPUKの3団体が2016年10月に行った苦情申し立て(注5)がきっかけとなって実施されました。3団体、ならびにRSPOとその監査機関による調査で、児童労働、無給労働、不安定雇用、性差別、有害物質使用下での労働状況が確認されました。

OPPUKの専務理事ヘルウィン・ナスシオン氏(Herwin Nasution)は「インドフードはRSPOの警告を無視し、組織的な労働搾取が行われ続けることを許してきました。実際、インドフードがRSPOを脱退して以降、独立系労働組合への脅しや攻撃の事例が増加しています」と指摘しました。

日本のメガバンクのみずほフィナンシャルグループ(みずほ)、三井住友フィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループは、インドネシアのマンディリ銀行、セントラルアジア銀行に次いで、インドフードへの最も大きな資金提供者です。中でも、みずほは同社へ約5億米ドルの資金提供が可能で、これはメガバンクで最大です。パーム油セクターについて、インドネシアの銀行は方針を持っていませんが、メガバンク3行は最近同セクターに特化した方針を採用し、違法行為への資金提供についても禁止することを明記しています(注6)。オランダのラボバンクとイギリスのスタンダードチャータード銀行はより厳密な方針のもと、顧客企業にRSPO会員になることも要求していますが、インドフードのパーム油事業への融資を最近引き揚げた上げた以外は、両行ともインドフードとの取引を継続しています(注7)。インドフードの最大の機関投資家にはディメンショナル・ファンド・アドバイザーズ、ブラックロック、バンガード、GPIFが含まれ、「責任ある投資家」の主張とは異なります。

今年4月、責任投資原則(PRI)に関わっている機関投資家56機関、合計運用資産総額7.9兆米ドルがRSPOへの支持を表明し、銀行を含むパーム油バリューチェーン全体の全ての企業に対して、公表する形で「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止方針」(NDPE: No Deforestation, No Peat and No Exploitation)の採用と実施を求めました(注8)。メガバンクの方針にはNDPE方針が記載されておらず、インドフードの方針もNDPE方針の基準には達していません。

過去2年間で、インドフード及びその親会社であるファーストパシフィックは、インドフードのパーム油事業の問題のために15社の取引先を失いました。その15社には日本の製油会社の不二製油、ネスレ、ムシムマス、カーギル、ハーシー、ケロッグ、ゼネラル・ミルズ、ユニリーバ、マース等(注9)が含まれます。しかし、合弁事業パートナーのペプシコやフランチャイズパートナーのヤム・ブランズを含む多くの企業は、いまだにインドフードと取引を継続しており、同社の人権侵害との関わりも維持されたままです。

RAN、ILRF、OPPUKはインドフードに対し、労働違反に対処することと、包括的な「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)方針」をサリムグループ全体と、全ての外部のサプライヤーにも採用することを求め続けます。

*インドフードと、アブラヤシ農園子会社のインドフード・アグリ・リソーシズは、シティグループによる資金停止について意見を述べる機会を提供されましたが、コメントはしませんでした。


*英文のプレスリリースはこちら「Citigroup Cancels Financing of Indonesian Food Giant Indofood Over Palm Oil Labor Abuses」
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注1)RSPO, “RSPO Secretariat’s statement on complaints panel decision regarding PT Salim Ivomas Pratama TBK”, 2019年3月1日www.rspo.org/news-and-events/news/rspo-secretariats-statement-on-complaints-panel-decision-regarding-pt-salim-ivomas-pratama-tbk

注2)サリム・イボマス・プラタマ(SIMP)と、その子会社ロンドン・スマトラ(ロンサム)

注3)インドフード財務諸表(2019年3月31日版)リンク

注4)TuKインドネシア、Tycoons in the Indonesian Palm Oil 2018、18〜19ページ、リンク

注5)3団体による苦情申し立ての進捗(現在は終了)
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注6)各銀行の方針
三井住友フィナンシャルグループ:リンク、みずほフィナンシャルグループ:リンク、三菱UFJフィナンシャル・グループ:リンク

注7)FD(オランダ経済紙へット・フィナンシエル・ ダフブラット)、「Rabobank verbreekt banden met omstreden palmolieproducent」、2019年6月15日
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注8)PRI, "Fifty-six investors sign statement on sustainable palm oil", 3 April 2019
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注9)RAN、「インドフードと取引をやめた企業は?(Who has dropped Indofood?)」表、2019年2月
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