< MS&ADグループ 企業が語るいきものがたり Part12 > 「投資が変える企業の生物多様性」シンポジウム開催

MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社 2019年03月07日 15時26分
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MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス(取締役社長 グループCEO: 柄澤 康喜)は、2019年2月19日に、 ESG投資の高まりを受けて投資家から注目を集めている「自然資本リスク」に関して、生物多様性をテーマとした「投資が変える企業の生物多様性」シンポジウムを開催しました。MS&ADグループでは、企業が生物多様性の取組みを推進するための情報提供の機会として2007年から、「企業が語るいきものがたり」を毎年開催しています。12回目となる今回は、基調講演に加えて、「サステナブル・ツーリズム」、「ポスト2020目標」、「サプライチェーンリスク」について3つの分科会で議論を深めました。

開会にあたり、MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス 取締役 副社長執行役員 藤井史朗が登壇し、「MS&ADグループは、今年度からスタートした中期経営計画『Vision 2021』において、SDGsを道標として2030年にむけて『レジリエントでサステナブルな社会』を目指すこととしました。社会をとりまく多様なリスクを見つけ、その対応策や解決策をステークホルダーの皆さまにご提供するなかで、社会との共通価値を創造していくことがビジネスの基本、当社グループの価値創造ストーリーであると考えています。本日のシンポジウムで、ビジネスを通じて社会的課題を解決していくべく、生物多様性保全において企業が果たすべき役割について、皆さんと一緒に考える機会となれば幸いです」と挨拶しました。


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MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス 取締役 副社長執行役員 藤井史朗


第一部: 基調講演
基調講演では、環境省 自然環境局 自然環境計画課 生物多様性戦略推進室長/生物多様性主流化室長 中澤圭一氏、一般社団法人SusCon 代表理事 粟野美佳子氏、MS&ADインターリスク総研株式会社 産学官公民金連携・特命共創プロデューサー 原口真が登壇し、それぞれの観点から企業が生物多様性の保全に貢献することの重要性について語りました。

初めに、環境省 中澤氏が「CBD-COP14およびIPBES評価報告書を受け、企業に期待すること」と題して講演。エネルギーや製造業等の分野における「生物多様性の主流化(※1)」および2020年以降の新たな世界目標の検討プロセスの概要を解説しました。また、IPBES (※2)が発表した「土地劣化と再生に関するテーマ別評価報告書」では、生態系由来の物品の過剰消費が全世界の土地劣化を促進していること、さらに世界的規模で「生産現場と消費現場の乖離」によって、自然資源の利用者・受益者の多くが土地劣化の影響を直接受けないため、世界的な行動に繋がっていないことなどが指摘されていると述べました。一方で、IPBESが発表した「生物多様性及び生態系サービスに関する地域・準地域別評価報告書」では、我が国が属するアジア・オセアニア地域において、企業活動がこれまで通り継続する場合、2050年までにサンゴの最大90%が激しく劣化する予測等があるとの報告がなされたと述べました。


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環境省 中澤圭一氏



※1 生物多様性に配慮した社会経済を実現し、生物多様性の損失を抑制するために、生物多様性の保全と持続可能な利用を、日常生活を含むさまざまな社会経済活動の中に組み込むこと
※2 生物多様性と生態系サービスに関する研究と政策提言を行う政府間組織。生態系サービスとは、人類が生態系から得ている利益。淡水・食料・燃料などの供給サービス、気候・大気成分・生物数などの調整サービス、精神的充足やレクリエーション機会の提供などの文化的サービス、酸素の生成・土壌形成・栄養や水の循環などの基盤サービスがある

続いて、SusCon 粟野氏が「ESG投資における生物多様性~ソフトコモディティに見る世界の問題意識」と題して講演。ESG投資をめぐる機関投資家の意識変化や、事業継続を左右する環境リスクに対する経営者の危機意識などに言及し、生物多様性を軸とした世界的な動向について述べました。また、ダイベストメント(※3)やエンゲージメントを通じてESG投資が生物多様性とどう繋がるか、ノルウェー政府年金基金等の先進事例から解説しました。最後に、「ESG投資は、アセットオーナーやアセットマネジャー、企業、そしてNGO、各自がプレーヤー」であり、それぞれが問題意識を持つことが不可欠であると強調しました。

最後に、 MS&ADインターリスク総研 原口が「分科会に向けての論点整理~生物多様性の移行リスクと物理リスク~」と題して講演。「生物多様性に関しては出来ることを頑張るというのではなく、すでに企業のビジネスリスクになっている」と指摘し、20世紀型の経営により生態系破壊などの「物理リスク」が増大した過去を踏まえ、生物多様性の損失をゼロにする社会への移行が重要であると述べました。こうしたなかで企業は、規制や評判などの「移行リスク」が顕在化しないようにするためにCSVストーリーを構築することがビジネス機会を生むと述べました。


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一般社団法人SusCon 粟野美佳子氏(左)、 MS&ADインターリスク総研 原口真(右)


※3 すでに投資している金融資産を引き揚げること


第二部: 分科会1 「サステナブル・ツーリズムで実現する地域振興」
「サステナブル・ツーリズムで実現する地域振興」をテーマとした分科会1では、地方創生やインバウンド需要の高まりからツーリズムが注目されているなかで、地域固有の自然資本を活かし、地域の活性化を促すサステナブルなツーリズムをどう実現するのか、生物多様性の保全と地域振興を両立させる道について議論しました。株式会社レスポンスアビリティ 代表取締役 足立直樹氏をコーディネーターとして、パネリスト4名によるプレゼンテーションをもとにそれぞれの取組みについて語って頂きました。


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レスポンスアビリティ 足立直樹氏

環境省 国立公園利用推進室 加藤雅寛氏は、国立公園を核としたサステナブル・ツーリズムで地域振興を実現する「国立公園満喫プロジェクト」について紹介。2020年までに訪日外国人の国立公園利用者数を1,000万人に倍増させる目標を掲げる一方で、国立公園の魅力を再発見してもらい国内需要も伸ばしながら、プロジェクトを通して、しっかりと保全と活用の好循環を生み出していきたいと狙いを話しました。国立公園ならではの価値を明確にすることで、利用者と公園及びその地域関係者で共有する意識が芽生え、優れた自然を守りながら、持続可能な地域活性化を図ることができるのではないかと話しました。

株式会社JTB総合研究所 主席研究員 熊田順一氏は、「持続可能な観光と生物多様性」について世界的な観光産業の動向を交えて解説。また、ツーリズムとSDGsを組合せ、アクションプランの中に観光を位置付けるといった動きがグローバルで広まっており、Pacific Asia Travel Association(太平洋アジア観光協会)による、観光における「飲み放題」「食べ放題」のあり方を考え直そうという「食料ロス問題に対する調査」などを紹介しました。また、生物多様性を活かす観光業界の課題や貢献に触れ、今後日本で官民が連携し「サスティナブルツーリズム」のあり方と方向性について議論を進め、具体的なアクションにつなげていくべきとの展望を語りました。


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環境省 加藤雅寛氏(左)、 JTB総合研究所 熊田順一氏(右)



山形県飯豊町 特別政策室 室長 高橋弘之氏は、「日本で最も美しい村」連合に加盟している飯豊町のサステナブルな取組みについて紹介。地域資源の域内循環を作り、自立する社会を推進する「サステナブル・タウン」への取組みとして、町内畜産事業者から家畜排せつ物等を調達し、バイオガス発電を行うプロジェクトや、山形県産木材を75%以上活用かつ地元工務店が施工にあたる「飯豊型エコハウス」について説明。これらを通じてSDGsへ貢献していくとともに、エコツーリズムの展開を推進していくと話しました。

一般社団法人ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構 本橋春彦氏は、欧米で普及している旅のスタイルである、「その土地を歩きながら、その土地ならではの食を楽しみ、歴史や文化を知る旅=ガストロノミーツーリズム」に、日本が世界に誇る「温泉」をプラスした「ONSEN・ガストロノミーツーリズム」を紹介。観光資源の乏しい、または未開発の地域でも始めることができるという利点があり、2018年は全国の温泉地で24回にわたりイベントが開催され、5,190名が参加。外国人観光客へも「ONSEN」としてアピールし、日本ならでの温泉地を中心にした地域活性化を目指すと強調しました。


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山形県飯豊町 高橋弘之氏(左)、 ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構 本橋春彦氏(右)

パネルディスカッションでは、サステナブル・ツーリズムの発展の可能性と克服すべき課題について話し合いました。山形県飯豊町 高橋氏は、長野県南木曽町 妻籠宿の事例を挙げ、地域が一体となり景観の保全に取組む必要があるが、まだ地域によってその取組み姿勢にはばらつきがある。観光による経済効果だけでなく、自分たちの地域に何が必要か考えて、観光産業を推進していくべきと述べました。最後に、コーディネーターの足立氏は、皆が持続的に観光を楽しむためにも、生物多様性の保全などに組織的に取組んでいかなければならない段階に入っていると締めくくりました。


第二部: 分科会2 「ポスト2020に向けた 企業×行政ダイアログ」
「ポスト2020に向けた 企業×行政ダイアログ」をテーマとした分科会2は、環境省と参加者で議論を深めることを目的に、参加者それぞれの取組みや考えを共有しながら話し合いを促進する「タラノア対話(※4)」の形式で実施しました。パネリストは環境省 中澤氏と富士ゼロックス株式会社 環境経営グループ長 宮本育昌氏、コーディネーターはMS&ADインターリスク総研 原口が務め、製造業、流通・小売、不動産、金融、NGOなど幅広い分野の参加者と活発な議論が行われました。

今回の分科会では、2010年に名古屋で開催された「生物多様性条約 第10回締約国会議」(CBD-COP10)で日本の提案に基づき掲げられた「愛知目標」の到達点を軸に、タラノア対話を展開しました。「愛知目標」では、2020年までの戦略目標とあわせて、2050年までに「自然と共生する世界」を実現することを長期目標として設定しています。

冒頭、コーディネーターの原口は、「日本人には理解しやすい『自然との共生』という概念も、『自然は克服するもの』と考える欧米諸国にとっては違和感があったようだ」と、各国の文化的な考えの違いにも言及。議論は土地利用のあり方に発展し、欧米的な考え方として保護すべき土地を分離する「ゾーニング」と、昔からの日本の里山のように人々の生活と自然が「融合」する環境が比較されました。市場メカニズムによる土地開発で自然が侵食されている現状では「ゾーニング」の必要性は現実的に大きいものの、目指すべき理想的な状態は「融合」との意見が多く、自然体験が減ることにより自然を大切にする意識が育ちにくくなる「負の連鎖」についても懸念の声が上がりました。また、都市部の緑地について、絶対量は少ないものの、自然と生活者の接点としての潜在力に話題が広がりました。


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※4 タラノア対話は、2018年の「気候変動枠組条約 第24回締約国会議」(COP24)で用いられた対話プロセスです。「(1)我々はどこにいるのか?(Where are we?)」、「(2)どこへ到達したいのか?(Where do we want to go?)」、「(3)どうやって到達するのか?(How do we get there?)」という3つの問いに答えるかたちで、参加者がストーリーを語り、お互いの経験やアイディアを共有する形式。



企業の情報開示に関する議論のなかでは、「サプライチェーンにおいて『気候変動』・『人権』・『生物多様性』の3つの観点から調達しているが、 『生物多様性』は他と比べて具体的なイメージが少なく、取組みにくい」との意見が出され、生物多様性の実現を示すための「分かりやすい指標」の必要性が指摘されました。また、外部からの監視機能については、「投資家」・「NGO」・「顧客」のどれが最も効果が大きいかとの質問に、大多数の参加者がBtoC、BtoBともに「顧客」と回答しました。一方で、顧客側の過度なニーズで自然資源に悪影響を及ぼすケースについて、「どこかで需給バランスに歯止めをかけなければならないとも思うが、業界全体で対応すると独占禁止法の問題もある」との悩みも聞かれ、NGOが主体となってプラットフォームをつくり業界各社が加盟することでソフトローとして機能している海外事例などが共有されました。


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富士ゼロックス 宮本育昌氏

環境省 中澤氏からは、「IPBESの報告でも生産現場と消費現場の距離が遠いという課題が挙げられているが、今はもう特定の地域の中だけで色々なものを完全に賄っていくというのは無理な話で、その遠い距離をうまくつなげて共生圏を作っていくことが重要。環境省としても企業の知見から学んでいきたい」と意気込みを語りました。


第二部: 分科会3 「サプライチェーンリスクとESG投資」
「サプライチェーンリスクとESG投資」をテーマとした分科会3では、ESG投資でも重視されているテーマの一つである森林破壊について、サプライチェーンに潜む森林破壊リスクにどう向き合っているか、現場での取組みも含め先進的企業と投資家の双方から最新の動向が紹介されました。

不二製油グループ本社株式会社 CSR・リスクマネジメントグループ 山田瑶氏は、食品素材メーカーとしてのESG経営の取組みについて紹介。「持続可能な不二製油グループの成長」と「持続可能な社会の実現」を同じベクトルで実践することを目指しており、サステナブルな調達活動をESG経営における重点領域として捉えていると強調。特に、パーム油に関しては、「責任あるパーム油調達方針」を策定し、この方針のもと、サプライチェーン改善活動としてトレーサビリティの追及や、グリーバンスメカニズム(苦情処理メカニズム)を策定・公表し、具体的なサステナブル調達の仕組みについて説明しました。

花王株式会社 ESG活動推進部 金子洋平氏は、製品価値を高める自然資本の持続可能な調達に関する取組みを紹介。原材料に関する基本方針に触れ、サプライチェーンの強化にどう取り組むか説明しました。シャンプーやオムツなどに使われるパームや木材の調達については、「持続可能なパーム油・パーム核油」「持続可能な紙・パルプ」の調達ガイドラインを策定し、具体的な目標を設定。また、CDPサプライチェーンプログラム(※5)の会員企業としての取組みを通じて、サプライヤーとの協働を強化していると話しました。

株式会社りそな銀行 アセットマネジメント部 責任投資グループ 松原稔氏は、機関投資家の立場から見たサプライチェーンリスクとESG投資について説明。ESGの運用方針を明確にした上で、パーム油のサプライチェーンに関わる投資先企業を訪問し、それにはらむ環境・人権リスクを説明、「持続可能なパーム油」に対する取組み状況を確認していると述べました。一連のプロセスと先進的な取組み事例をエンゲージメントレポートで紹介、企業との対話を通じて責任ある投資を実践していると強調しました。

パネルディスカッションでは、SusCon 粟野氏をコーディネーターとして、パネリスト3名と意見を交わし、粟野氏は「長期的目線に立った情報開示が企業の20年後、30年後の姿を描くことに繋がっていく」と強調しました。


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不二製油グループ本社 山田瑶氏(左)、 花王 金子洋平氏(中央)、 りそな銀行 松原稔氏(右)




※5 会員企業がサプライヤーに対して、気候変動や水などの環境リスクに関する質問表を送付して、情報開示を求めること



<本件に関するお問い合わせ先>
MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社 広報担当
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