生活保護受給者の選択権を奪う、生活保護受給者への後発薬(ジェネリック)使用の法制度化について

世界の医療団(認定NPO法人) 特定非営利活動法人 メドゥサン・デュ・モンド ジャポン 2017年12月27日 11時28分
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ハウジングファースト東京プロジェクト医師
ゆうりんクリニック院長 西岡誠 医師

■ほとんど無意味な生活保護受給者へのジェネリック義務付け
マスメディアの伝えるところによると、増え続ける国民医療費を抑制するため、厚生労働省は、生活保護受給者へはジェネリック医薬品の使用を原則とする方針を固めました。ジェネリック医薬品とは、特許の切れた先発薬と同成分の薬剤で、費用のかかる臨床試験をしないぶん、安価に購入できるのが特徴です。ではこのジェネリック医薬品を義務付ければ、国民医療費を抑制できるのでしょうか?結論から言うと、厚労省の方針はほとんど無意味です。

■外来処方薬がターゲット
厚労省の方針は、外来で処方される薬剤をターゲットにしています。もちろん入院中にも薬剤を使用しますが、同じ成分の薬剤で、生保受給者用のジェネリックと、非受給者用の先発品とを同時に採用することは、在庫管理などの面で現実的ではありません。

■スケールの小さな話
厚労省の統計によると、平成27年度の医療扶助費は約1.78兆円です。このうち外来薬剤費は約171億円と医療扶助全体の約1%程度に過ぎません。またジェネリック医薬品メーカーの資料によれば、ジェネリックの存在しない薬剤が55.9%(金額ベース)もあり、薬剤費171億のうち95.6億円は先発品に使われ、ジェネリックで節約することができません。結局、171億円から95.6億円を引いた残りの75.4億円を、如何にジェネリックで圧縮出来るのか。そういうスケールの話を厚労省はしているのです。

■スコップで雪をかく愚かさ
生保受給者にジェネリック医薬品使用を原則とするのは、ひとえに国民医療費の抑制のためでした。ところが平成27年度の国民医療費は約42.4兆円と巨額な上、医療費は兆円千億円の単位で増えています。75.4億円をどう節約するかなどという話は、国民医療費の趨勢を左右するものではありません。今回の厚労省の方針は、一本のスコップで雪かきするようなものです。どれだけ一生懸命雪をかいても、降り積もる雪はスコップ一本ではどうにもならないのです。

■なぜ生活保護受給者だけ?
本当に医療費を抑制したいなら、国民全員にジェネリックを義務付ければ良いのです。その方が確実に医療費を抑えられます。そうしないのは先発品メーカー(と献金を受けている政治家)を慮ってのことでしょう。一方、医療費削減の「大義」のもと、シェアを拡大したいジェネリック医薬品メーカー(と献金を受けている政治家)への配慮も必要です。厚労省としても努力してる姿は見せないといけない。そんな三者の落とし所が、生保受給者へのジェネリック義務付けだったのではないでしょうか?折からの生保バッシングの中、生保受給者相手なら文句は出ないだろうと高を括っている。全くの茶番です。

■生保受給者だけを狙い撃つことの害悪
特定階層に薬剤アクセスを制限することは、かなりセンシティブな問題です。しかも先に述べたように、医療費削減の効果は極めて怪しい。これでは厚生労働省自ら、政策の有効性は関係ない、税金で生きる生活保護受給者には安価な薬で十分だと、メッセージを送っているようなものです。それがどれだけ受給者を傷つけ、差別にお墨付きを与えることになるのか、よく考えて欲しいと思います。目腐れ金に釣られ、国民の間に分断を作ってしまえば、その害悪は計り知れません。

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