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インフルエンザウイルスを防御する細胞の蓄積場所を特定 あらゆるインフルエンザウイルス株に効くワクチン開発への第一歩 -- 近畿大学

近畿大学 2016年11月10日 08時05分
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近畿大学医学部(大阪府大阪狭山市)免疫学教室 講師の高村史記らの研究グループは、世界で初めて、インフルエンザウイルス感染防御免疫を担うCD8陽性記憶T細胞の蓄積場所を特定した。本研究成果は、免疫学分野のトップジャーナルである「Journal of Experimental Medicine」に、平成28年(2016年)11月4日(金)22:00(日本時間)に掲載された。


【本件のポイント】
●世界初、インフルエンザウイルス感染防御免疫を担うCD8陽性記憶T細胞の蓄積場所を特定
●CD8陽性記憶T細胞は、過去にウイルス感染により傷害を受けた組織内に長期間滞在することで、二次感染に備える
●本研究をもとに、あらゆるインフルエンザウイルス株に有効なワクチンの開発が期待される

【研究の概要】
 近畿大学医学部免疫学教室(主任教授 宮澤正顯)の講師である高村史記らのグループは、近畿大学薬学部、近畿大学アンチエイジングセンター、大阪大谷大学、千葉大学、米国エモリー大学医学部、米国キーストンシンポジアとの共同研究により、複数のインフルエンザウイルス株に反応し、かつ感染防御免疫に有効なCD8陽性記憶T細胞集団の蓄積場所を世界で初めて特定し、その蓄積機構の一端を解明した。これによって、あらゆるインフルエンザウイルス株に有効なワクチンの開発に貢献することが期待される。
 CD8陽性T細胞はウイルスに感染した細胞を体内で直接破壊するため、ウイルス排除に最も重要な役割を果たしている。これまでに、ウイルスを排除した後もT細胞の一部が記憶T細胞として感染局所に滞在し、再感染に対する防御免疫の最前線を担うことは知られていたが、肺の場合、それがどの部位に蓄積されるのかは明らかになっていなかった。高村らの研究グループは、マウスを使った実験によってその蓄積場所を解明した。

【研究の背景と今後の展開】
 現在のインフルエンザワクチンは変異しやすいウイルス表面タンパク質を標的とするため、特定の型のウイルスにしか効果を示さない。また、ウイルス侵入門戸である呼吸器粘膜における免疫応答誘導効果が期待できないため、感染そのものを阻止することは不可能である。一方、CD8陽性T細胞は、変異の少ないウイルスタンパク質を標的としてウイルス感染細胞を直接破壊できるため、CD8陽性T細胞を感染局所に配備することができれば、あらゆる型のインフルエンザウイルス感染を迅速に終息させることができる。肺におけるCD8陽性T細胞集団の集積部位を特定した高村らの研究成果は、効果の高い新たなインフルエンザワクチン開発への第一歩といえる。

【論文掲載誌】
■雑誌名: 「Journal of Experimental Medicine」(リンク
      免疫学分野のトップジャーナル、インパクトファクター11.240

■論文名: Specific niches for lung-resident memory CD8+ T cells at the site of tissue regeneration enable CD69-independent maintenance.
     (インフルエンザウイルス感染防御免疫を担うCD8陽性記憶T細胞の蓄積場所を特定)

■著 者:
  近畿大学医学部…高村史記、博多義之、本園千尋、升本知子、藤澤真琴、
           近石友美、宮澤正顯(アンチエイジングセンター兼任)
  近畿大学薬学部…八木秀樹(現所属:国立医療福祉大学薬学部)、米田洵子、
           伊東惇、梅村実希、休齋亜美
  エモリー大学医学部…Sean R. McMaster 、Jacob E. Kohlmeier
  大阪大谷大学薬学部…戸村道夫
  千葉大学大学院医学系研究科…中山俊憲
  キーストンシンポジア…David L. Woodland
  コレスポンディングオーサー…高村史記

【研究詳細】
 インフルエンザウイルス特異的T細胞は、あらゆるウイルス株に共通するウイルス内部タンパク質を標的とすることで、幅広い交差反応性を示すことが知られている。中でも、CD8陽性T細胞は、感染細胞を直接破壊することでウイルス排除に最も重要な役割を果たしている。最初に感染したウイルスの排除後、T細胞の一部は記憶細胞へと分化し、リンパ節などに長期間維持されるが、ウイルスの再侵入によってリンパ節の記憶細胞が活性化される間に、再感染が進行してしまう。近年、侵入門戸に近い感染局所に長期間維持され、再感染に対する防御免疫の最前線を担う「滞在型記憶T細胞」の存在が明らかとなった。滞在型のCD8陽性記憶T細胞を侵入門戸に効果的に誘導・維持させることができれば、複数の株に対して有効で防御効果の高いインフルエンザウイルスワクチンの開発につながると期待される。
 高村らは、ウイルス感染マウスの肺に存在する滞在型のCD8陽性記憶T細胞が、感染によって生じた肺組織の傷害を修復するために形成された細胞集塊に局在していること、即ち二次感染において最も危険な「傷口」を防御していることを突き止め、この集塊を「修復関連記憶貯蔵部位」(Repair-associated memory depot: RAMD)と命名した。また、RAMDに滞在型のCD8陽性記憶T細胞が維持されるには、ウイルス抗原が局所に残存することが必要であることも発見した。今後、RAMD形成機構、及び局所における滞在型CD8陽性記憶T細胞分化誘導機構の詳細を解明することで、幅広い交差反応性の防御免疫を付与するワクチンの開発を具体化することができると期待される。

【用語説明】
■CD8陽性T細胞 …ウイルスタンパク質を合成しているなど、反応可能な抗原を提示する細胞を認識した際、活性化し、認識した細胞を破壊するT細胞集団。

■記憶T細胞 …T細胞は活性化・増殖し抗原を排除した後、9割は死滅するが、約1割が記憶T細胞として長期生存し、最初に認識した抗原により素早く且つ強力に反応できるように備えている。

■ウイルス特異的T細胞 …ウイルス抗原を作り、提示している細胞(感染細胞など)を識別し、反応するT細胞と呼ばれるリンパ球の集団で、CD8陽性T細胞とCD4陽性T細胞の、機能の異なる二つの亜集団を含む。

■交差反応性…ある特定の細胞集団が複数の異なるウイルス株に反応性を示すこと。異なるウイルス株間で共通するタンパク質を標的とすることで可能となる。

▼本件に関する問い合わせ先
 近畿大学 広報部
 TEL: 06-4307-3007
 FAX: 06-6727-5288

【リリース発信元】 大学プレスセンター リンク

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