logo

京都産業大学神山天文台 世界初!「ぼやけた星間線」の原因となる分子の観測に成功

京都産業大学 2016年06月17日 11時00分
From 共同通信PRワイヤー

2016年6月17日

京都産業大学 リンク

京都産業大学神山天文台の濱野 哲史研究員のグループは、神山天文台が開発した観測装置「WINERED(近赤外線高分散分光器)」を使い、世界で初めて、ぼやけた星間線(DIB)の原因となる分子の観測に成功。

100年以上前に発見された『ぼやけた星間線(Diffuse Interstellar Band、以下、DIB)』は、星間空間に存在する複雑な分子が引き起こす光の吸収ではないかと考えられながら、その原因となる分子の正体は未だ十分には明らかになっていません(図1)。
現在までに500本以上のDIBが発見され、現在でも様々な波長において新しい種類のDIBが発見され続けていますが、昨年度になってようやく同定されたフラーレン・イオン(C60+)の4本を除けば、全てが未同定になっています(図2)。そのため、DIBの正体解明は、天文学100年来の最大の課題のひとつとなっています。

星間空間には様々な環境が存在しますが、DIBを形成する分子(以下、DIBキャリア)が宇宙空間にどのように分布しているのかについては、これまでほとんどのDIB研究が可視光線波長域で行われてきた為に、比較的濃いガスを見通した観測が困難なため、十分な理解は得られていませんでした。DIBキャリアがどういった環境に豊富に存在するかという情報は、DIBキャリアを特定するために貴重なカギとなりますが、星間空間でも比較的ガスの濃い環境では、DIBキャリアの分布についてほとんどわかっていません。

今回、京都産業大学 神山天文台の濱野研究員をはじめとする研究グループは、同天文台の口径1.3m荒木望遠鏡に設置された『近赤外線高分散分光器WINERED※』を用いて、はくちょう座にある「はくちょう座OB2星団」と呼ばれるガスに埋もれた星の集団において、DIBキャリアが環境によって欠乏したり、逆に豊富に存在したりしている様子を、初めて赤外線波長域での観測から明らかにしました。
この「はくちょう座OB2星団」は比較的若い星の集団であり、周囲の濃いガスに埋もれています。また、この星団と地球との間には、それらのガスとは別に薄い星間ガスが存在していると考えられています(図3)。
通常、可視光線での観測は、上記の薄い星間ガス(図3の(1))を通して星を観測することはできても、これらの星団を取り巻く濃いガス(図3の(2)および(3))を通して恒星を観測することは困難でした。そのため、様々なDIBキャリアが、これらのガスのどの部分に豊富に存在しているのかについては、あまり理解されていませんでした。
今回、WINEREDを用いることによって、より透過能力の高い赤外線において星団の星々を観測することができ、星団をとりまくガス雲のより内部まで、DIBキャリアの分布を明らかにしました。

濱野研究員は、WINEREDによって観測されたほとんどのDIBキャリアが手前の薄いガス雲((1))には存在しているが、はくちょう座OB2星団をとりまくガス((2))の中では一部のDIBキャリアは欠乏しており、更に、特に濃い部分((3))ではほとんどのDIBキャリアが欠乏してしまっていることを明らかにしました。紫外線強度やガス密度など、星間環境によって影響を受けやすく欠乏しやすいDIBキャリアや、逆に影響を受けにくいDIBキャリアが存在していることがわかりました。

DIBキャリアとなる分子がどのような環境に豊富にあるのかなど、濃いガスを見通して様々な環境におけるDIBキャリアの存在量を明らかにすることが、将来のDIB同定に繋がると期待されています。そのため、ガスを透過する能力が高い赤外線波長の光は、DIBキャリアの空間分布を研究する上で非常に重要です。
また、赤外線波長域には、昨年に同定されたC60+など様々なDIBキャリア候補分子の電離イオンが吸収線をつくると予想されており、新たなDIBの発見という観点からも重要な波長域といえます。今回の研究結果は、赤外線波長域でのDIB探査の重要性を示した貴重な成果であり、同研究グループでは、2015年にDIBキャリアとして初めて同定されたC60+についても、その空間分布(および環境依存性)を明らかにするための観測を神山天文台で進めています。

なお、この成果は米国天文学会の論文雑誌『The Astrophysical Journal , Volume 821, Issue 1, article id. 42, 12 pp. (2016)「4月10日号」』に掲載されました。

※WINERED(近赤外線高分散分光器):京都産業大学神山天文台の研究プロジェクト「赤外線高分散分光ラボ(LiH)」が、東京大学大学院や関連企業との協働によって開発した世界トップレベルの感度を誇る近赤外線高分散分光器(波長範囲0.9から1.3μm、波長分解能30,000の観測モードで、現在運用中)。


[画像ファイル参照]
図1:「ぼやけた星間線」の観測は、通常の恒星を背景の光として、恒星から地球までの間に存在するガス(星間物質)が光を吸収する痕跡を検出します。
(出典:リンク

図2:神山天文台WINEREDで観測した「ぼやけた星間線」DIBの代表例(フラーレンの陽イオンによる吸収と2015年に初めて同定されたもの)。通常の恒星スペクトルに見られる吸収線はもっと幅広く、また原子状の星間ガスによる吸収線はもっと細い形をしています。

図3:はくちょう座OB2星団と観測者(地球)との関係。星団中の星が発する光は、途中の様々な環境のガスを通過して観測者に届きます。

図4:星の手前に分布する「ガスの量」に対する3本のDIBの強度。一般的な薄い星間ガスではガス量に比例してDIB強度が大きくなるのに対し、はくちょう座OB2星団ではDIBによってガス量に対して欠乏あるいは増加するなど多様な振る舞いを見せています。



本プレスリリースは発表元企業よりご投稿いただいた情報を掲載しております。
お問い合わせにつきましては発表元企業までお願いいたします。