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光合成生物の酸化ストレスを減らす影の立役者 ~光合成の効率を調整するタンパク質、カルレドキシンを発見 -- 大阪大学

大阪大学 2016年06月15日 08時05分
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大阪大学蛋白質研究所栗栖源嗣教授による、自然科学系分野のタンパク質、X線結晶解析、構造生物学、色素体機能・光合成に関する研究成果。(大阪大学の最新の研究情報はこちらから: リンク )


<研究成果のポイント>
●光合成の効率を調整する新しいタンパク質を発見しカルレドキシンと名付け、その構造と調整の仕組みを解明
●これまで光合成機能において、カルシウム濃度依存的に酸化ストレスを軽減する仕組みは不明だった
●今後、光合成の人工的な最適化や光合成機能の強化につながる可能性

<概要>
 大阪大学蛋白質研究所の栗栖源嗣教授らの研究グループは、ドイツ・ミュンスター大学のマイケル・ヒップラー教授らとの共同研究により、光合成の効率を調整するタンパク質を新たに発見し、その構造解析と、構造に基づいた機能解析に成功した。
 光合成反応は、地球上の全ての生命体を支える重要な反応である。植物や藻類は、生育地での光環境の変化にあわせて光合成機能を最適化させ、有害な酸素化合物による酸化ストレスを減らす対策を個別に発達させてきた。しかし、生育環境の多様性に対応してその仕組みは複雑で多岐にわたり、全容は解明されていない。
 カルシウムは光合成の酸素発生過程における必須の元素であり、強光適応に重要な役割を果たすことが分かっている。
 今回、栗栖教授らが発見したタンパク質は『カルレドキシン』と名付けられ、葉緑体内でカルシウムイオンの濃度に依存して抗酸化反応※1を進めることで光合成の効率を調整していることが判った(図1)。タンパク質の構造解析と機能解析から、カルシウムイオンを結合した時だけ活性を示す構造的な理由を突き止めた(図2)。
 今後、光合成の環境適応機構を詳細に解析することで制御タンパク質の改変指針を得る事が出来れば、光合成の人工的な最適化や将来的な光合成機能の強化につながる可能性がある。

 本研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」に、6月14日(火)18時(日本時間)に公開された。

<研究の背景>
 光合成反応は、地球上の全ての生命体を支える重要な反応で、生成する酸素や取り込む二酸化炭素の量が地球環境を決定づけているといっても過言ではない。しかし、酸化ストレスにより発生する有害な酸素化合物(活性酸素種:ROS※2)は、生育地での急激な光環境の変化や強い光照射で発生してしまう。多様で変化に富んだ地球上の光環境に対応するため、光合成生物は生育する場所に合わせて光合成機能を最適化させ、酸化ストレスを減らすよう光環境適応機構を発達させてきたが、その詳細なメカニズムは不明であった。
 栗栖教授らの共同研究グループでは、強光適応に重要な役割を果たすカルシウムイオンの濃度と酸化還元※3状態とを一つのタンパク質が検知して、抗酸化反応に寄与することを解明した。このタンパク質は、緑藻の葉緑体中に見いだされ、カルレドキシンと名付けた。カルレドキシンは、強過ぎる光が降り注ぐストレス環境下で、抗酸化蛋白質(ペルオキシレドキシン)と一緒に抗酸化反応を進めることが分かった。
 また、カルシウムイオンを結合し、カルシウムイオンを結合した時だけ酸化還元活性を発揮することを突き止めた。カルシウム結合状態の立体構造を高分解能で決定し、分子内でカルシウム結合の情報(図2:オレンジ色と紫色に緑色のカルシウムイオンが結合)と酸化還元の情報(図2:青色)がつながり、抗酸化蛋白質(ペルオキシレドキシン)(図2:灰色)との分子間相互作用に適した形をとることが判った。以上のことから、カルレドキシンがカルシウム濃度と酸化還元状態の二つのシグナルを伝える交差点で信号機の働きをして、光合成の効率を調整する新しい蛋白質であることを明らかにした。

<本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)>
 時々刻々と変化する光環境に適応するため、光合成生物は様々な環境適応機構を持っている。本研究成果のように、光合成の環境適応機構を詳細に解析することで制御タンパク質の改変指針を得ることが出来れば、光合成の人工的な最適化や将来的な光合成機能の強化につながる可能性がある。

<特記事項>
本研究成果は、2016年6月14日(火)18時(日本時間)に英国科学誌「Nature Communications」(オンライン)に掲載された。
タイトル:“Calredoxin represents a novel type of calcium-dependent sensor-responder connected to redox regulation in the chloroplast”
著者名:Ana Karina Hochmal*、 Karen Zinzius*、 Ratana Charoenwattanasatien*、 Pillipp Gabelein、 Risa Mutoh, Hideaki Tanaka, Stefan Schulze, Gai Liu, Martin Scholz, Andre Nordhuses, Jan Niklas Offenborn、 Dimitris Petroutsos、 Giovanni Finazzi、 Christian Fufezan、 Kaiyao Huang、 Genji Kurisu and Michael Hippler
*印のついた3名は同等の寄与がある著者。

 なお、本研究は、JST戦略的創造研究推進事業CREST研究の一環として行われ、大阪大学から国際共同研究促進プログラムの支援を受け、ルール大学ボーフムのトーマス・ハッペ教授の協力を得て行われた。また、マイケル・ヒップラー教授は大阪大学蛋白質研究所の共同利用・共同研究拠点の支援を受けて来日し、共同研究を遂行した。タンパク質の立体構造は、大型放射光施設SPring-8に大阪大学が設置しているビームラインBL-44XUを用いることで得られたものである。

<用語説明>
※1 抗酸化反応
ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシドアニオン、過酸化水素などを含む酸化物質の作用を除去する反応を言う。スーパーオキシドジスムターゼ、ペルオキダーゼ、カタラーゼ、ペルオキシレドキシンなどの酵素が還元消去する。

※2 活性酸素種(ROS)
分子状酸素が還元され、反応性の高い励起分子種となったものの総称。スーパーオキシドラジカル、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルなどが知られている。

※3 酸化還元
二つの物質間に電子の授受が起こる反応を言い、片方が酸化(電子を奪われる)されると還元(電子を受け取る)される成分も必ず存在するため、両者をまとめて酸化還元とよぶ。

▼本件に関する問い合わせ先
 大阪大学 蛋白質研究所
 教授 栗栖 源嗣(くりす げんじ)
 TEL: 06-6879-8604 
 FAX: 06-6879-8606
 E-mail: gkurisu◎protein.osaka-u.ac.jp
 (メールアドレスの「◎」は「@(半角アットマーク)」に置き換えてください)

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