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中央大学理工学部の竹内健教授のグループがIoTのリアルタイムデータ処理に向けた高速フラッシュストレージを開発

中央大学 2016年05月17日 08時05分
From Digital PR Platform


中央大学理工学部の竹内健教授のグループはこのたび、IoTのリアルタイムデータ処理に向けた、高速フラッシュストレージ技術を開発した。アプリケーションに応じて動的に誤り訂正回路を最適化することで、フラッシュストレージの弱点であった、データの長期間保持能力と高速データ処理性能のトレードオフを解決。記憶したデータを失わずに長期間保持できる高い信頼性と、最大で3倍のデータ処理スピートを達成した。


 本研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業であるエネルギー・環境新技術先導プログラム「IoT時代のCPSに必要な極低消費電力データセントリック・コンピューティング技術」において実施されたもの。
 研究成果は、5月15日から18日にフランスで開催された「IEEE International Memory Workshop」で発表された(論文名:Application Optimized Adaptive ECC with Advanced LDPCs to Resolve Trade-off among Reliability, Performance, and Cost of Solid-State Drives)。

【背 景】
 モノのインターネット (Internet of Things: IoT ※注1)では数兆個ものセンサ(トリリオンセンサー)により、多種多様なデータが収集され、データセンタで処理されるようになる。こうして集められたデータをクラウドデータセンタで瞬時に処理し、処理した結果を即座に機器を制御するアクチュエータ等にフィードバックすることで、セキュリティ、製造、医療、災害予測、自動運転、電力網、交通網など実世界の処理を低電力かつ高速、高効率に行えるようになる。
 IoTの応用としては、安全・安心分野、製造業・インダストリ4.0、インターネットサービス、最適医療・予防医療サービス、ピンポイント気象・災害予報、交通サービスなどが考えられる。このようなリアルタイム性の高いIoTのサービスを実現する上では、データを蓄えるストレージ(記憶装置)の高速処理化が必須になっている。
 こうした高速化の要求を受け、ストレージの記憶媒体は従来のHDDから高速なフラッシュメモリ(※注2)を使ったソリッド・ステート・ドライブ(SSD ※注3)に移行してきている。ところが、フラッシュメモリは書き換えを繰り返すにつれて、メモリセルの信頼性が劣化し、メモリの不良率が高まるという問題があった。メモリのエラーは誤り訂正回路(ECC)によって訂正されるので救済が可能だが、多数の不良を救済できる強力なECCを採用すると、逆にECCを処理(デコード)するための時間が長くなり、最終的にはストレージの性能(処理速度)が劣化してしまう、という問題があった。

【研究内容と成果】
 今回の研究では、アプリケーションや書き換え回数に応じて動的にECCを最適化することで、フラッシュストレージの弱点であった、データの長期間保持能力と高速データ処理性能のトレードオフを解決した。提案するストレージ・SSDではアプリケーションや書き換え回数に応じて動的にECCを最適化するAOA-ECC(Application Optimized Adaptive ECC)をSSDコントローラーに搭載している(図1、2)。
 このAOA-ECCにECCデコードを短時間で行うQuick-LDPCを採用することで、ストレージへの読み出しが頻繁に行われるが書き換え回数は比較的少ないアプリケーションでは、データ処理スピードを2~3倍高速化することに成功した(図3、4)。また、書き込みが頻繁に行われるアプリケーションでは、ECCの処理時間がシステム性能へ与える影響は小さいが、書き換えによってメモリの不良が多数発生することから、強力な誤り訂正能力を有するEP-LDPC w/o Upper/Lower cellsを採用。その結果、従来の強力なECC(Soft Decoding LDPC)を採用したSSDと同等の記憶したデータを失わずに長期間保持できる高い信頼性と、従来システムの1.5倍も高速にデータを処理できる性能を両立した。

【今後の展開】
 IoTの時代には、ビッグデータを処理するコンピュータも従来のCPUを中心としたプロセッシング・セントリック型から、メモリやストレージを中心としたデータ・セントリック型へ移行する。米国企業を中心に開発が進んだCPUに対し、日本で発明された半導体メモリはフラッシュメモリの開発も世界を牽引している。本研究グループでは、今般の研究成果を今後さらに発展させることで、データ・セントリック時代のコンピュータを世界に先駆けて開発し、今後発展が期待されるIoTのさまざまなサービスに貢献していく。

【図解説】
(図1)従来のストレージ(a)と提案するストレージ(b)
 提案するストレージには、アプリケーションや書き換え回数に応じて、動的に誤り訂正回路(ECC)を最適化するAOA-ECC(Application Optimized Adaptive ECC)をコントローラーに搭載している。
(図2)アプリケーションや書き換え回数に応じて動的にECCを変化させる、AOA-ECCのアルゴリズム
(図3)提案技術(青線)と従来技術(黒線)の性能比較の例
 提案するストレージでは、書き換え回数(Erase count)が増加するにつれてECC(誤り訂正回路)が動的に変化し、高性能と高信頼性を両立させる。
(図4)さまざまなアプリケーションでの提案技術(左)と従来技術(右)の性能比較
 1.5~3倍程度の性能向上が得られた。特に読み出しが頻繁に行われる用途で本技術は有効。

【用語解説】
(注1)IoT
 Internet of Things、モノのインターネット。社会の至る所にセンサーが張り巡らされ、人間だけでなく、機器同士、機器と人間の間でインターネットを通じて様々なデータが相互にやり取りされること。
(注2)フラッシュメモリ
 データの一括消去を特徴とする半導体記憶装置。電気的にデータの読み書きが可能で、電源を切ってもデータが消えない。
(注3)ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)
 記憶媒体としてフラッシュメモリを用いるドライブ装置で、ハードディスクの代替としてスマートフォン、パソコンやデータセンタのストレージなどとして広く利用されている。機械的に駆動する部品がないため、高速の読み書きが可能で、消費電力も少なく衝撃にも強い。このため、頻繁にアクセスされるプログラムやデータを保存する用途で、現在幅広く使われている。

▼本件に関する問い合わせ先
<研究に関すること>
 竹内 健(タケウチ ケン)
 中央大学理工学部 教授(電気電子情報通信工学科)
 TEL: 03-3817-7374
 E-mail: takeuchi@takeuchi-lab.org
<広報に関すること>
 加藤 裕幹(カトウ ユウキ)
 中央大学 研究支援室
 TEL: 03-3817-1603
 FAX: 03-3817-1677
 E-mail: k-shien@tamajs.chuo-u.ac.jp

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