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最新研究で判明した「皮膚テーピング」の仕組みと効果

文京学院大学 2016年03月30日 15時30分
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文京学院大学 オピニオンレター Vol.10

提言者:福井 勉 (保健医療技術学部教授 専門:運動器疾患の理学療法・動作分析の臨床応用 )
文京学院大学保健医療技術学部学部長、文京学院大学スポーツマネジメント研究所所長、理学療法士、医学博士。昭和大学藤が丘リハビリテーション病院主任、昭和大学保健医療技術学部助教授などを歴任。主な研究テーマは、皮膚・筋膜の運動方向性、スポーツ外傷の発生要因。著書は『皮膚テーピング~皮膚運動学の臨床応用~』(運動と医学の出版社)などの他、昨年4月には『「皮膚をゆるめる」と痛みは取れる (ひざ、腰、首、股関節の痛みに効く!革命的テーピング術)』(マキノ出版)を上梓。


■プロスポーツ界も注目の新療法

長年、多くの人が悩まされている症状である体の痛みやコリ。厚生労働省が発表した「平成25年 国民生活基礎調査」※では、男女ともに自覚症状を訴える割合が多い症状として「肩こり」と「腰痛」を挙げています。体の痛み・不具合の改善には、これまではストレッチや温熱療法など患部への様々なアプローチが検討されてきましたが、近年は皮膚の動き方の法則を取り入れた理学療法「皮膚テーピング」の効果が明らかになってきました。

「皮膚テーピング」は一般的なテーピングと異なり、関節や靭帯、筋肉への働きかけでなく、体の表面を覆う皮膚へ直接働きかけ、体の可動域拡大や痛みの改善等の効果をもたらします。一般的なリハビリではもちろん、プロスポーツ選手の体をメンテナンスする現場でも採用実績があります。

私が「皮膚テーピング」の研究を始めたきっかけは、腕が上がりにくい患者さんのリハビリでした。腕の上げ下げで肩にできるシワが大きいことに気付き、シワがなくなるように皮膚を軽く引っ張ったところ腕が上がりやすくなったのです。この経験から皮膚の動きに興味を持ち、皮膚の移動をコントロールすることで、痛みや不具合を緩和・改善できるのではと考えるようになりました。本オピニオンレターでは皮膚が移動する構造や、臨床で明らかになってきた皮膚と体の痛みの関係性のほか、「皮膚テーピング」が持つ可能性についてご紹介します。


■皮膚が移動するメカニズム

私たちが普段体を動かすときは、色々な骨や関節を動かしています。それに伴って筋肉が動き、表面を覆う皮膚も一定の法則で移動しています。皮膚の動き方は複雑で、「皮膚そのものが移動する」と聞いてもなかなかイメージがわきにくいかもしれません。太ももの皮膚の例でご説明しましょう。太ももの正面側と裏側に同じ高さで印をつけた状態で太ももを上げると、最初は同じ高さにあった印の位置がずれます。皮膚が正面側では膝方向(下方向)に、裏側ではお尻方向(上方向)にずれているのです。

このような皮膚の動きを全身で調べてみると、「体を動かしたときに、シワができるような部位、つまり皮膚が余るところから皮膚が突っ張る部位、つまり足りなくなるところへ移動する」という大原則が分かりました。例えば、腕を上げたときに突っ張りやすい、わきの下周辺の皮膚をゆるめれば腕が上がりやすくなるのです。また、皮膚の動きに関して4つの規則性があることも判明しました。

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(1)場所によって動きの大・小がある(太ももなど表面積が大きい部分は大きく、指先など小さい部分は小さい)
(2)動かしにくい場所周辺の皮膚は、動きが小さい
(3)高齢者よりも若い人の方が動く
(4)皮膚の動きをサポートすれば、関節や筋肉の動きも改善する
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つまり、部位と症状に応じて適切な皮膚の動きをサポートすれば、体の動きの改善が可能なのです。


■「皮膚テーピング」のイロハ

一般的にテーピングを使う場面で思い浮かぶのは、スポーツや格闘技などで選手が肩、ひざ、指などにテーピングをする姿かもしれません。彼らが行っているものはスポーツテーピングと呼ばれるもので、ケガの予防や応急処置、再発防止、パフォーマンス向上等が目的です。ねんざや脱臼、靭帯損傷といったケガの多くは、関節が正常に動く範囲を超えたときに起こります。スポーツテーピングは関節の可動域を制限し、ケガの悪化や再発を防ぐ効果があります。また、筋肉やその周辺の筋膜が損傷する肉離れにも、傷めた筋肉に沿って貼ることで補強したり、圧迫して巻くことで筋肉が伸張する際の痛みを抑え、症状悪化を防ぎます。このように一般的なテーピングの目的や効果は、関節の可動域を制限したり、関節や筋肉、靭帯を補強したり、あるいは靭帯など軟部組織の負荷軽減が挙げられます。

しかし、「皮膚テーピング」は従来のアプローチが異なり、患部周辺の皮膚を軽くなでるように動かしてテープを張って、痛みや不具合を改善させます。目的もスポーツテーピングとは少し違い、関節可動域の制限含め以下の6つが挙げられます。

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(1)関節可動域の拡大/制限
(2)筋活動の保通/抑制
(3)姿勢のコントロール
(4)歩行など動作のコントロール
(5)関節の安定化
(6)痛みの改善
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過去に運動でケガをした経験や、体の使い方にクセがある場合、体の特定部位に負担がかかり、次第に痛みとなって現れます。加えて、加齢の影響も見逃せません。痛みは、関節が曲がりにくい/曲がり過ぎる、筋肉の弱体化や酷使、体のバランスの崩れが原因であることが少なくありません。「皮膚テーピング」は、体の動きに対する皮膚の動き方の特徴を利用し、痛みの原因が間接の曲がりにくさにある場合は曲がりやすく、筋肉の力不足の場合には筋肉の力を出しやすくしたり、バランスを整えたりするのです。


■「皮膚テーピング」活用の可能性

皮膚運動学や「皮膚テーピング」の研究を進める中、講演会や講習会で話をする機会を多くいただきます。国内では年に30回以上の講習会を開催しておりますが、日本にとどまらず昨年はイギリスで、今年はスイス、オーストラリアでの開催が決まっています。また、昨年に引き続き今年もイギリス向けにウェビナーでの講習会開催を予定しています。特に最近は、プロスポーツの現場で選手たちをケアするトレーナーの方々へお話する機会が増えてきました。「皮膚テーピング」を実践する場が徐々に広がりを見せており、様々なスポーツの現場においてテスト段階で試用されています。例えば、トップアスリートの水泳選手でクロールのバタ足で下がる足の動きを上の位置で維持するため、練習でお尻(臀部)にテープを貼ることで臀部の上の位置を持続させるといった活用がされています。また、野球選手がなりやすい肩がゆるくなる「野球肩」の症状に対しては、ゆるくなった関節部分をテープでとめることで対応できます。

また、皮膚運動学や「皮膚テーピング」は、ビジネスの現場でも注目を集め始めています。肌に直接触れるアンダーウェアの機能に応用するといった研究が進められている段階です。

「皮膚テーピング」は患者さんへの治療法としてはもちろんのこと、スポーツやビジネスの現場でもその効果に期待が寄せられています。臨床や研究はまだまだ進めている途中段階ですが、実践の場とコミュニケーションをとりながら皮膚の動きや「皮膚テーピング」の活用・応用方法を今後さらに発展させていければと考えています。


■健康寿命延長を目指して

近年は健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を指す、健康寿命に関心が高まっています。同じ80歳でも、寝たきりの人もいれば、自分の足で精力的に活動できる人で健康寿命は異なり、寝たきりにはならずとも、痛みがあれば日常生活は何らかの制限が生じます。「皮膚テーピング」で痛みや不具合を改善すれば、体はもちろん心も健康に過ごせる可能性が高くなるのです。

これまでは皮膚を体の運動に活かすという発想はあまり見られず、皮膚にはまだまだ判明していないことがあります。皮膚構造のさらなる解明とともに、「皮膚テーピング」はもっと工夫でき、幅広い部位へアプローチが可能なのではと考えています。痛みに悩む一人でも多くの方のお役に立てるよう、今後もますます研究を進めていきたいと思います。


 【出典】
  ※ 「平成25年 国民生活基礎調査」
    III 世帯員の健康状況
    リンク

 【参照】
  福井勉(2015)『「皮膚をゆるめる」と痛みは取れる (ひざ、腰、首、股関節の痛みに効く!革命的テーピング術)』マキノ出版


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