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横浜市立大学が糖尿病の治療薬メトホルミンを用いた大腸腫瘍の画期的予防法を開発 -- 世界初報告 大腸ポリープ切除後のがん発症予防の可能性

横浜市立大学 2016年03月07日 08時05分
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横浜市立大学 肝胆膵消化器病学の中島淳教授、日暮琢磨助教らの研究グループは、横浜市立大学附属病院、その他関連病院との共同研究により、糖尿病や多嚢胞性卵巣症候群などの治療で用いられる薬剤メトホルミンを内服すると、大腸ポリープ切除除去後の新規ポリープ発生が抑制されることを世界で初めて報告した。本研究成果は、英国科学専門誌『Lancet Oncology』(日本時間3月3日午前8時30分オンライン)に掲載された。


 がん撲滅への究極の対策は予防である。薬剤を用いて疾病を予防するという概念は「化学予防(※1)」と呼ばれ、既に心筋梗塞や脳梗塞の予防としてアスピリンなどの抗血小板薬などが臨床応用されているが、大腸がんについては、アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬などの鎮痛薬に大腸腫瘍の予防効果は認めるものの副作用があり、予防法として確立していなかった。

 化学予防薬に必要な条件として、
1.副作用が少ないこと
2.作用機序が明らかなこと
3.服用しやすいこと
4.安価なこと
 が挙げられ、メトホルミンはこの条件を全て満たす薬剤であり、本研究成果による意義は非常に大きく、今後薬剤を用いて大腸がんを予防する(化学予防)方法の確立と、本疾患の克服が期待される。

【研究の概要と成果】
 糖尿病の治療薬のひとつであるメトホルミンは非常に歴史のある薬だが、近年、糖尿病患者において、服用者は非服用者と比較してがんの発生が低いという報告が複数あり、特に大腸がんに関しては、予防効果を示唆する報告が多数出ている。
 中島教授らのグループは、以前よりこのメトホルミンに注目して、大腸発がんモデルマウスに投与すると大腸腫瘍が抑制されること、ヒトの直腸に存在する前がん病変のマーカーが減ることを報告しており、海外からも高い評価を受けている。
 これらの知見をもとに、大腸ポリープを内視鏡切除しポリープが無い状態になった患者を対象にメトホルミン250mgもしくはプラセボ(※2)を無作為に割り付け、合計151名の患者を対象に試験(※3)を実施し、1年後の内視鏡検査において、大腸前がん病変である腺腫の新規発生/再発率はメトホルミン群では32%であったのに対して、プラセボ群では52%であり、メトホルミン服用によりポリープの再発が40%も低下するという結果を得た(図1)。
 この研究結果より、メトホルミンが大腸がんの化学予防薬として有用である可能性が示された。この知見は世界初の報告であり、非常に注目されている。また、試験期間中にメトホルミン服用で重篤な副作用を認めた患者はいなかった。

【研究の目的と研究成果の意義】
 大腸がんは、国立がん研究センターのがん情報サービス「2015年のがん統計予測」の部位別がん罹患数予測で男女合計第1位、部位別がん死亡数予測で男女合計第2位と増加傾向で、対策が求められている。便潜血による健診や、内視鏡検査によるポリープ切除は大腸がんの死亡率を下げることが報告されているが、ポリープ切除後の再発や、がんの発症などが問題となっていた。
 特定の栄養素や薬剤を用いて疾病を予防するという概念は「化学予防」と呼ばれ、既に心筋梗塞や脳梗塞の予防としてアスピリンなどの抗血小板薬などが臨床応用されているが、大腸がんについてはアスピリンや非ステロイド性抗炎症薬は大腸腫瘍の予防効果は認められるものの、消化管出血や心血管疾患のリスクを上げてしまうことがわかり、予防法として確立していない。
 化学予防薬に必要な条件として、1.副作用が少ないこと、2.作用機序が明らかなこと、3.服用しやすいこと、4.安価なこと、が挙げられる。メトホルミンはこの条件を全て満たす薬剤であり、我が国のみならず先進各国で増加傾向の大腸がんの予防に向け、本試験の意義はかなり大きいと思われる。
 また、特定の疾患に有効な治療薬から、別の疾患に有効な新たな薬効をみつけだすことを「ドラッグリポジショニング」といい、欧米では製薬会社や国が組織的に開発を進めている。新薬の開発には莫大な費用と時間がかかるが、既存薬はヒトの体内動態も明らかで安全性も確認されており、作用をあらためて調べ直し、ほかの疾患治療薬として実用化できれば開発コストの削減にもつながるといったメリットがある。

【今後の展開】
大腸腺腫/がんを切除した患者はその後にも腺腫やがんが発生する可能性が高いことが報告されており、そのような患者を対象に予防薬の内服をすることにより、内視鏡の負担や将来の疾病リスクを減らすことができる可能性がある。
本研究期間は1年間であり、試験中にメトホルミン服用した患者もプラセボを服用した患者どちらにも大腸がんの発生はなかった。大腸がんの発生まで本当に抑制するかはもう少し長期間の経過観察と更なる検討が必要である。中島教授ら研究グループは長期間の試験を現在計画しており、今後の追加の結果報告が期待される。

【注 釈】
(※1)化学予防
 生活習慣を改善するという方法ではなく、医薬品の投与によってがんを予防するという方法。大腸がんに対する化学予防法として標準化されたものはこれまで存在しない。
(※2)プラセボ
 偽薬のことで、内服している患者、処方している医師も実薬と区別がつかない。プラセボを用いて行われる無作為対照試験は、最も質の高い(精度の高い)研究のデザインになる。患者をランダムに2つの群に振り分けることを無作為割り付けという。誰もどちらの群になるか予想できない。治療法の公平な比較を行うことができる。
(※3)本試験は横浜市立大学および関連病院の倫理委員会の承認を受け実施した。

【論文について】
 メトホルミンによる大腸ポリープ切除後の非糖尿病性患者の異時性大腸腺腫/ポリープに対する化学予防試験:多施設第3相無作為対象試験
 Higurashi T, Hosono K, Takahashi H, Komiya Y, Umezawa S, Sakai E, Uchiyama T, Taniguchi L, Hata Y, Uchiyama S, Hattori A, Nagase H, Kessoku T, Arimoto J, Matsuhashi N, Inayama Y, Yamanaka S, Taguri M, Nakajima A.
 Metformin chemoprevention trial for metachronous colorectal adenoma/polyps in non-diabetic, post-polypectomy subjects: a multi-centre phase 3 randomised controlled trial. Lancet Oncol 2016

▼本資料の内容に関する問い合わせ先
 ・横浜市立大学 肝胆膵消化器病学 教授 中島淳
 E-mail: nakajima-tky※umin.ac.jp(送信の際に、※を@に変更ください。)
 ・横浜市立大学附属病院 内視鏡センター 助教 日暮(ひぐらし)琢磨
 E-mail :  takuma_h※yokohama-cu.ac.jp(送信の際に、※を@に変更ください。)
 Tel: 045-787-2640

▼取材対応窓口、資料請求など
 公立大学法人横浜市立大学 先端研究推進課
 TEL: 045-787-2510

≪横浜市立大学先端医科学研究センター≫
 横浜市の中期計画に基づき、「がん」や「生活習慣病」などの疾患克服に向けて取り組んでいる大学の研究施設。基礎的研究を推進し、さらにその成果を少しでも早く診療の場や市民の方々に還元する「橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)」体制の構築を目指している。現在、同大の持つ技術シーズを活用した最先端の医科学研究を行う22件の研究開発プロジェクトを推進し、研究成果を市民等の皆様へ還元することを目指している。
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