横浜市立大学の高見澤聡教授が、合金特有の形状記憶効果を有機結晶で発現

横浜市立大学 2015年12月02日 08時05分
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横浜市立大学の高見澤聡教授が、形状記憶合金特有の形状記憶効果を有機結晶で発現することに成功した。熱によって形状回復力を増す形状記憶合金の物理特性を持つ有機形状記憶材料の開発が可能となり、温度変化による形状回復性を必要とする構造材料、機械部品、生体適合性の高い医療材料への応用が期待される。本研究成果は、英国王室化学会の『Chemical Science』(平成27年11月19日付)にオンライン掲載された。


【研究の背景】
 形状記憶効果(注1)を発現する材料として形状記憶高分子と形状記憶合金が知られている。合金の形状記憶効果は高分子材料の形状記憶効果とは全く異なる物理特性である。
 形状記憶合金は高い実用性が知られ、配管継ぎ手、衛星アンテナ、温度で開閉する調整弁、カテーテルや人工歯根(インプラント)等にすでに利用されているが、金属材料の欠点を克服し材料特性に多様性を産み出す新たな形状記憶材料が求められているのも事実である。
 形状記憶高分子は物質拡張性に優れ、高い物質多様性を持つが、熱により固体が軟化する過程で発現する形状回復力が致命的に弱く、これまで応用の際の障害となってきた。
 有機材料で合金様の形状記憶効果を発現できれば、化学合成的手法により物質・機能拡張性の高い柔軟性・軽量性・生体適合性等の特性を持つ合金代替材料の開発が可能となる。
 しかし、合金での形状記憶効果の発見から60年以上経ったにもかかわらず、これまでに合金の形状記憶効果を示す有機材料は知られておらず、その様な特性を発現する材料開発の指針は全く示されていなかった。

【研究の概要と成果】
 有機超弾性(注2)を発現する結晶相への温度誘起相転移機構を設計した分子性有機結晶を新規合成し、合金の形状記憶効果の発現に成功した。これは有機物でも合金様の形状記憶効果を発現できることを示した初めての例となる。加熱による温度上昇に伴い形状回復力が強くなるのが合金の形状記憶効果の特長であり、形状記憶高分子とは真逆の特性である。
 今回の成果は、力強い形状回復力を発現する有機形状記憶材料の創出に必要となる新原理を明瞭に示し、形状記憶合金の有機物代替研究の礎となる。また、温度上昇に伴い形状回復力が増大する熱機械特性は、次代の有機弾性材料開発に対しても新たな指針を与えうるものとなる。

【研究内容の詳細】
 テトラ-n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレートの分子性イオン結晶(1)を合成し、合金様の形状記憶効果の発現を実験的に確認した。約123℃に相転移温度(As)を持つ本有機結晶は、高温相で有機超弾性体に転移する。転移温度以下の温度領域で機械的負荷によって永久歪を持つ双晶変態を生じさせ、加熱により相転移温度を越えると超弾性により形状回復する(図2(a))。また、形状回復力である逆変態応力は加熱により増加する(図2(b)の1:赤線)。これは、温度によって弾性が増大する有機弾性材料を可能とする熱特性である。塑性変態および擬弾性変態に必要な降伏応力を形状記憶合金(図2(b):青線)および形状記憶高分子(図2(b):緑線)と比較すると、本有機結晶は形状記憶高分子より軟らかく変形し、加熱によって大きな形状回復力を発現するのがわかりる。転移温度近傍で形状回復力は鋭く立ち上がるため、変形に要する仕事に対して100倍以上の仕事を狭い温度上昇幅で出力できる(図2(b)の1:赤線)。これは熱サイクル機械の動力として望ましい特性である。転移温度からわずか10 ℃の加熱で発揮される1 MPaの形状回復力は、断面積1 cm2(成人の指ぐらいの太さ)の結晶が10 kgの錘を重力に逆らって持ち上げる力に相当する。そこで、0.18 cm2の断面積を持つ長さ3.8 cmの結晶を用いて重量挙げのデモンストレーションを行い、結晶の自重(0.6 g)に対して約170倍の質量である100 gの分銅を持ち上げるのを確認した(図2(c))。

【今後の展開】
 温度誘起相転移の導入により有機超弾性材料においても合金の形状記憶効果を発現できるのが明らかになった。有機超弾性材料は合金の物理的特性を持ち、また有機材料の物質的特性を持つため、両者の長所を併せ持つ実用性の高い有機形状記憶材料の開発につながるものと期待できる。

【本研究成果に関する動画】
 リンク

【用語解説】
(注1)形状記憶効果:
 機械的負荷により塑性変形した固体が、熱によって形状回復する物理特性。本研究で主題となっている形状記憶合金で知られる形状記憶効果は、超弾性を発現する固相への温度誘起相転移により形状回復する特性。
(注2)有機超弾性:
 有機物固体の超弾性現象。2014年に初めての報告がなされた。
※参考情報: リンク
 応力誘起マルテンサイト変態によって変形した固体が、除荷後に自発的に形状回復する物理特性。超弾性は1932年の金−カドミウム合金での報告が端緒とされる。有機超弾性の発見がなされるまでは特殊な合金でみられる特異な物理現象と考えられてきた。

【支 援】
 本研究は民間助成金(スズキ財団、池谷科学技術振興財団、日立金属・材料科学財団)の支援を受けて行われた。

▼本件に関する問い合わせ先
 公立大学法人横浜市立大学 研究推進課長 竹内 紀充
 Tel: 045-787-2019
 E-mail: sangaku@yokohama-cu.ac.jp

【リリース発信元】 大学プレスセンター リンク

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