◎嗅覚と目の検査でアルツハイマー病早期発見の可能性も

Alzheimer's Association 2014年07月14日 10時25分
From 共同通信PRワイヤー

◎嗅覚と目の検査でアルツハイマー病早期発見の可能性も

AsiaNet 57323
共同JBN 0772 (2014.7.14)

【コペンハーゲン(デンマーク)2014年7月13日PRN=共同JBN】
*アルツハイマー病の新しいバイオマーカーの結果がAlzheimer's Association International Conference(国際アルツハイマー病会議)2014で報告された

コペンハーゲンで開かれたAlzheimer's Association International Conference(登録商標)2014(AAIC 2014)で13日に報告された4つの研究試験の結果によると、においをかぎ分ける能力の低下は認知機能障害とアルツハイマー病の発症を示唆するものかもしれず、また目の検査でアルツハイマー病に関連するベータアミロイド・タンパク質の脳内蓄積を示せるかもしれない。

このうち2つの研究では、においをかぎ分ける能力の低下は脳細胞機能の喪失、アルツハイマー病への進行と著しい関係があった。ほかの2つの研究では、目の中で検出されたベータアミロイドのレベルが(a)脳内のベータアミロイドの負荷量と著しい相互関連があり、(b)研究者たちは研究中にアルツハイマー病の人を正確に特定することができた。

ベータアミロイド・タンパク質はアルツハイマー病の特徴である粘着質の脳「プラーク」に見られる主な物質である。記憶喪失など認知問題の典型的なアルツハイマー病の症状より何年も前に脳内に蓄積されることが知られている。

Alzheimer's Association(アルツハイマー病協会)のヘザー・スナイダー医学・科学事業担当理事は「世界的なアルツハイマー病の広がりに直面して、アルツハイマー病のずっと早い段階でこの病気のリスクを発見する簡単で侵襲性の少ない診断検査が緊急に必要とされている。アルツハイマー病研究者たちは病気の初期段階での治療、予防試験に動いているので、この点は特に真実である」と語っている。

スナイダー氏はさらに「新たな治療法が利用可能になると、早期治療介入と予防のために早期発見が不可欠なので、大変有望な分野であるアルツハイマー病のバイオマーカーについてのより多くの研究が必要になる。いまのところ、AAICで報告された4研究は、アルツハイマー病の治療、予防の臨床試験の研究対象患者を選び、研究状況での早期発見方法の可能性を探る方向を目指している」と述べている。

Alzheimer's Associationとアルツハイマー病共同体のサポートを受けて、米国は2012年に初の「アルツハイマー病に対処する国家計画」を策定した。この計画には、2013年の「認知症サミット」でG8が採択した、2025年までにアルツハイマー病を予防し、効果的に治療するという重要目標が含まれている。2015会計年度のアルツハイマー病研究に対する2億ドルの追加支出を含め、この計画の強力な実行、適切な資金提供を通じてのみ、われわれはこの目標を達成できる。詳しい情報はwww.alz.orgへ。

臨床的には現在、アルツハイマー病を発見できるのは発症の後期段階で脳の著しい損傷がすでに生じてからにすぎない。アルツハイマー病のバイオマーカーはより早い段階で発見できる。例えば、脳PET画像をベータアミロイド・タンパク質と結合する特殊化学物質と併用すれば、プラークとしてのタンパク質の脳内蓄積は症状の出現より何年も前に明らかにできる。こうしたスキャンは経費がかかり、どこでも利用できるものではない。アミロイドも、背中下部の(脊椎の)2つの骨の間に針を刺して脳、脊髄の周囲の液体サンプルを取り出す腰椎穿刺を通じて脳脊髄液中で発見することができる。

▽認知機能が正常な高齢者における嗅覚機能悪化に伴うより大きな神経変性
においを正しくかぎ分ける能力の低下は認知機能障害の前兆、アルツハイマー病の初期臨床特性であるという証拠が増えている。この病気は脳細胞を殺すことで始まり、これには嗅覚にとって重要な細胞が含まれることが多い。

ハーバード大学医学部、ハーバード大学公共保健学部採用希望者のマシュー・E・グロードン博士 と同僚は、マサチューセッツ総合病院でハーバード大学脳老化研究グループが募集した215人の臨床的に正常な高齢者を対象に、嗅覚、記憶力、脳細胞機能喪失のバイオマーカー、アミロイド蓄積の間の関連を調査した。研究者たちは40項目のペンシルベニア大学かぎわけテスト(UPSIT)と包括的な認知機能テストを行った。また側頭葉内深くにある2つの脳構造(記憶にとって重要な嗅内皮質と海馬)のサイズと脳内のアミロイド蓄積を測定した。

AAIC 2014でグロードン博士は、この研究対象者グループで小さな海馬と薄い嗅内皮質は低いかぎ分け能力、低い記憶力と関連していたと報告した。また科学者たちは、研究参加者のうち脳内アミロイドのレベルが高いサブグループでは、嗅内皮質が薄いことで示されているように多くの脳細胞死が(年齢、性、推定認知的予備力を含む変数調整後で)嗅覚機能の低下と著しい関連があることを発見した。

グロードン博士は「われわれの研究は、アルツハイマー病のリスクがある臨床的に正常な高齢者に対してはにおいかぎ分け検査に意味があることを示唆している。例えば、より経費のかかる検査、侵襲的な検査として何が適切な候補かを決めるのに有用であることが証明されるかもしれない。われわれの研究結果は有望だが、その意味は慎重に解釈すべきだ。これらの結果は特定時点のスナップショットを反映している。何回も研究が行われれば、アルツハイマー病の早期発見のための嗅覚検査の有用性について、もっとよいアイディアが得られるだろう」と語っている。

ハーバード大学脳老化研究は全米老化研究所とAlzheimer's Associationから資金提供を受けている。

▽軽度認知障害からアルツハイマー病への移行に関連するにおいかぎ分け能力低下
コロンビア大学医療センターのダバンゲレ・デバナンド精神科教授(神経学、セルギエフスキ・センター)と同僚は平均年齢80.7歳のニューヨーク市民1037人の認知症のない高齢者の多人種サンプル(白人34%、アフリカ系米国人30%、ヒスパニック36%)を調査し、3回(2004-2006年、2006-2008年、2008-2010年)にわたりさまざまなやり方で評価した。UPSITは2004年から2006年までの間に英語とスペイン語で行われた。フォローアップ期間中に109人が認知症(うち101人がアルツハイマー病)になり、270人が死亡した。

AAIC 2014でデバナンド教授は、追跡調査された757人の中に、UPSITで低い嗅覚識別スコアを示した被験者が、人口動態、認識、機能測定、言語の管理能力、アポリポタンパクE遺伝子型について調整した後、認知症とアルツハイマー病への移行と大いに関係があったと報告した。UPSITで計算されてそれぞれの点数が低かった被験者については、アルツハイマー病にかかるリスクが10%増加した。さらにUPSITスコアが低い基準値だが、言語記憶の測定値でないものは、基準値の認識機能障害のない被験者の認識低下に大きな関連性があった。

デバナンド教授は「われわれが被験対象にした人々の中では、嗅覚認識障害が認知症やアルツハイマー病への移行と認識力が保たれている被験者内に認知低下との関係があった。テストは英語とスペイン語で実施された」と語った。同教授はさらに「もしより大規模な研究でこのような結果を再現するならば、嗅覚認識研究など相対的に費用のかからないテストが、非常に早期の段階で認知症やアルツハイマー病のリスク増大について問題点を判別することができる可能性があり、より広く認知低下のリスク増のある人々を判定するのに有用になる」と語った。

▽ベータアミロイドに対する目の検査は、脳内レベルと相関関係があり、アルツハイマー病にかかった人を判定する
最近の研究は、アルツハイマー病にかかった人の網膜にベータアミロイドプラーク(斑)を識別した。これは脳内に見いだすプラークと相似しており、早期発見の単純かつ非侵襲的方法になる可能性を示唆している。

AAIC 2014でオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)のショーン・フロスト氏とその同僚は、クルクミン(香辛料ウコンの有効成分)を含む独自のサプリメントを摂取したボランティアの予備的な研究結果を報告した。それは高い親和性を持ってベータアミロイドと結合し、NeuroVision Imaging, LLCの新しいシステムとretinal amyloid imaging(RAI、網膜アミロイド画像化)と呼ばれる技術を使って、目の中のアミロイドプラークを検出することができる。ボランティアはまた、網膜と脳内アミロイド蓄積を関係付ける脳内アミロイドPET画像診断を受けた。

AAIC 2014に向けて科学者が用意した文書は、この研究で総数200人の被験者のうち40人の研究結果を提供している。すべての研究は年内に完了する見込みである。

予備的研究の結果によると、網膜で見つかったアミロイド水準はPET画像検査で示された脳内アミロイド水準とかなりの相関関係があった。網膜アミロイドのテストはまた、それぞれ100%と80.6%の感度でアルツハイマーおよび非アルツハイマー対象者を差別化した。

さらに、当初の被験者集団に対する長期的研究は、3.5カ月の期間中に網膜アミロイドが平均3.5%増加したことを示し、治療に呼応するモニタリング手段として有望な技術であることを実証した。

フロスト氏は「われわれはこの技術が現在利用されている脳内PET画像検査、MRI画像検査、臨床試験を補完しうる初期画面としての可能性を見ている。もしわれわれの当初研究結果が正しいことを今後の研究が示してくれるならば、それは個人に対する通常の眼検査の一環として提供できる可能性がある。われわれが得た画像の高解像度レベルはまた、治療への発展と対応につながる可能性のある手段として、個人の網膜斑を正確にモニターすることができるだろう」と語った。

この試験はCSIRO、エディスコーワン大学、McCusker Alzheimer's Research Foundation(マッカスカー・アルツハイマー研究財団)、カリフォルニアのNeuroVision Imaging社の協力関係で実施された。プロジェクトはAustralian Imaging and Biomarkers Lifestyle Study of Aging(AIBL、オーストラリアにおける加齢に関する画像処理およびバイオマーカー・ライフスタイル研究)の一環である。

▽目の水晶体で検知されたアミロイドは、脳内で検知されたアミロイド水準と強い相関関係がある
AAIC 2014でCognoptix, Inc.のポール・D・ハートゥング社長兼最高経営責任者(修士号取得)と同僚は、アミロイドとレーザースキャナーと結びつけた局所適用軟膏を使って、水晶体のベータアミロイドを検知する新しい蛍光リガンド眼球スキャニング(FLES)システムによる研究結果を報告した。

研究者たちは軽度の症例や20歳にマッチした健康的なボラティアを含めて、おそらくアルツハイマー病にかかった20人を調べた。そのすべての被験者のアルツハイマーの状況は観察者に伏せられた。軟膏は測定の1日前に、被験者の下部マブタ(眼瞼)の中に適用された。レーザースキャニングが特定の蛍光処方の存在によって目の中のベータアミロイドを検出した。脳内アミロイドPETスキャニングは、脳内のアミロイドプラーク密度を推定するためすべての被験者で実施された。

蛍光画像処理から得られた結果を利用して、研究者は高い感度(85%)と特定性(95%)による健康管理からアルツハイマー病にかかった人を差別化することができた。さらに目の水晶体テストに基づくアミロイド水準は、PET脳内画像処理を通じて得られた結果と大いに関連性があった。研究陣によると、重大な有害事象は報告されなかった。

米フェニックスにあるBanner Alzheimer's Instituteのピエール・N・タリオット所長(医博)は「アルツハイマー病の早期診断と管理には、迅速かつ信頼でき、低コストかつ容易に利用できるテストが決定的に必要である」と語った。

ハートゥング社長はさら「小規模のフェーズ2フィージビリティー・スタディーの結果は、われわれの当初結果を立証するものであり、高い感度と特定性でアルツハイマー病の臨床診断の発見を再現するFLESシステムの能力を証明する。このシステムはアルツハイマー病の早期発見とモニタリング技術として有望なことを示している」と語った。

▽Alzheimer's Association International Conference(AAIC)について
Alzheimer's Association International Conference(AAIC)はこの種の会議では世界最大で、世界中の研究者が集まってアルツハイマー病と関連の認知症を中心に報告、討議を行っている。Alzheimer's Associationの研究プロジェクトの一環としてAAICは、認知症についての新たな知識の創出し、生命に関する共同コミュニティーを育成する触媒の役割を果たしている。研究の進展を主導して進める科学者たちは、アルツハイマー病と関連する疾患の原因、診断、治療、防止に関する最新のデータを報告、話し合うためこの会議に参集する。

▽Alzheimer's Associationについて
Alzheimer's Associationはアルツハイマー病のケア、サポート、研究の世界で有力なボランティアの健康組織である。その使命は研究の前進を通じてアルツハイマー病を根絶し、すべての患者にケア、サポートを提供、強化し、脳の健康促進を通じて認知症のリスクを減らすことである。同協会のビジョンはアルツハイマー病のない世界の実現である。詳しい情報はウェブサイト(www.alz.org)を参照、または電話(800-272-3900)で。

ソース:Alzheimer's Association

▽問い合わせ先
Alzheimer's Association(R)
media line: +1.312.335.4078,
media@alz.org,
AAIC 2014 press room, July 13-17:
+45-32-47-28-18

参考資料
Matthew E. Growdon, Harvard Medical School, et al. Olfactory identification and Alzheimer's disease biomarkers in clinically normal elderly. (Funders: U.S. National Institute on Aging, Alzheimer's Association)

Davangere Devanand, Columbia University, et al. Olfactory identification deficits predict the transition from MCI to AD in a multi-ethnic community sample. (Funders: U.S. National Institute on Aging)

Shaun Frost, CSIRO, et al. Retinal amyloid fluorescence imaging predicts cerebral amyloid burden and Alzheimer's disease. (Funders: Janssen Research & Development, LLC; NeuroVision Imaging, LLC)

Paul D Hartung, Cognoptix Inc., et al. Detection of ligand bound to beta amyloid in the lenses of human eyes. (Funder: Cognoptix, Inc.)

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